2017年6月に、以下の「進歩」(「GPIFは各国のコーポレートガバナンス・コード」について言及)を聞いた時は嬉しかったです。なぜなら、その時点で私がコーポレートガバナンス・コード(CGC)を提唱して2年以上が経っていたのに、当時のGPIFの「スチュワードシップ活動原則」又は「議決権行使原則」など何等かの方針メモで、日本のCGCの存在についてさえ言及されていなかったからです。ガバナンスプラクティスおよび他の国のCGCについても言及されていない状況でした。これはとても不思議なことでしたので、私はその一年以上前からこの点を或る提言書で指摘していました。日本政府に規制されているGPIFは、アセット・マネージャーに対してどうして日本のCGC原則について投資先企業が「順守、さもなければ開示」するよう、エンゲージメントおよび議決権行使を通じて促すようにお願いしないのか?と思いました。同じ日本だから、そうしなければおかしい、と普通は思いませんか?でもその時はCGCという概念自体について言及していなかったGPIFでしたので、「各国のコーポレートガバナンス・コード」の言及でも少しの進歩だと思いました。
CGC制定以来7年が経っている今でもまだ「各国のコーポレートガバナンス・コード」になっています。また、「どちらかというと、その『各国のコーポレートガバナンス・コード』の原則に順守してほしい」という含みではなく、「企業側の言い分を聞け」に重点を置いているかのような含みの「運用受託機関は、各国の コーポレートガバナンス・コード又はそれに準ずるものの各原則において、企業が「実施しない理由」を説明している項目について、企業の考えを十分にヒアリングすること。」という文言になっています。企業の考えの「ヒアリング」に重点を置いています。
この理由は何だと思いますか?厚生労働省と金融庁の縦割り行政の影響?舞台裏で産業界の反対?GPIFはコーポレートガバナンス体制およびプラクティスについて意見がないということ?それなら、なぜ「各国の」?「各国のCGCまたはそれに準ずるもの」というのは、とても幅広いコンセプトです。会社法がかなり違うインドおよびドイツやナイジェリアのCGCもしっかりと読んでほしいため?また、企業のによる「実施しない原則についての説明」は、本当に「各国の CGC又はそれに準ずるものの各原則」を網羅しなければならないということですか?それなら、企業も実に大変です。「各国」と「それに準ずるもの」と書くと、そのような原則は山ほどあります。「運用業者としてその中からベストプラクティスと思うものを選んでくだい」というポジティブな指示ととらえることが出来るが、それなら、そのベストプラクティスは玉虫色になるので、企業は混乱するのではないか。
この背景にな何があるでしょうか、是非とも教えいてください。
私がCGCを提唱した2013年には、議員宛にCGCとSCは「車の両輪」」として機能すると書きました。後に、この言葉は国の政策を説明するための一種のスローガンとして使われるようになったのはよかったと思いますが、今のままではその「車の両輪」はフルに活用されていない気がします。
ニコラス・ベネシュ
(個人としての投稿)
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GPIFのスチュワードシップ活動原則、議決権行使原則は「各国のコーポレートガバナンス・コード」について言及
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、6月1日に公表した「スチュワードシップ活動原則」と「議決権行使原則」[両方、2017年版]に下記のように各国のコーポレートガバナンス・コードに関する言及があることは注目に値します。
スチュワードシップ活動原則
○運用受託機関は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書、統合報告書等に記載の非 財務情報も十分に活用しエンゲージメントを行うこと。
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コード又はそれに準ずるものの各原 則において、企業が「実施しない理由」を説明している項目について、企業の考えを十分 にヒアリングすること。
議決権行使原則
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コードが企業に対して求めている事 項を踏まえて適切に議決権行使すること。同様のコード又はそれに準ずるものが無い場合 には各運用受託機関が投資先企業に求める水準に従って適切に議決権行使すること。
これらの記述は、 海外諸国の国民年金基金の活動原則やガイドライン(例えば Canadian Pension Plan)と肩を並べるにはまだ多くの課題がありますが、少なくとも、GPIFが自身の投資先企業のガバナンスに関する方針を打ち出したことは今後の進展に向け新たな一歩を踏み出したと言えるでしょう。