2021年4月7日に金融庁よりコーポレートガバナンス・コード改定案が公表され、パブリックコメントの受付が開始された。今回の改定案では「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマになっている。
日本CFA協会が集約した意見によると、今回の改訂点において取締役の機能強化(プライム市場上場企業に対し社外取締役 1/3 以上、スキルマトリクスの開示など)については賛成意見が多かったが、その一方不十分であるという意見、形式的になるという懸念も見られました。またサステナビリティの課題や、TCFD の開示の追加について圧倒的に多くの回答者が「良いと思う」を選択したが、一部やはり“不十分”という意見が見られ、特に日本以外からの回答では不十分であるという意見は半数近くに達した。本改訂の修正・追加部分は概ね市場関係者に好評価とはいえるものの、これで十分であるのか、プライム市場上場企業だけで良いのかについては、引き続き議論が必要である。
以下、日本 CFA 協会「コーポレートガバナンスコード、改定案へのコメント」より抜粋。
「 設題1「原則 4−8 では、プライム市場上場企業は 3 分の 1、その他の市場の上場企業においては現状通り 2 名の独立社外取締役を選任すべきであると修正が行われるがこの点について」:
全体では 64.6%が「良いと思う」であり、「良いと思わない」の内訳は、うち 68.2%が「1/3では不十分」、残りのうち 13.6%が「プライム市場だけでは不十分」であった。その他として「1/3 では不十分だが、人数要件を引き上げると社外取締役の質が低下する恐れがあるためやむをえない」といった意見が挙げられた。しかし外国からの回答だけでみると、「良いと思う」は 52.6%となり、「良いと思わない」が42%、その内訳は全て「1/3 では不十分」あるいは「プライム市場だけでは不十分」となっていた。
設題 2 「 補充原則 4−11①において、スキル・マトリクス等の開示が求められた点について」:
全体では「良いと思う」が 83.3%、「良いと思わない」は 11.1%であった。後者のうち 80%は「形式的になる恐れがある」と回答、その他として「事後では遅いので、指名委員会が候補者を検討するときにスキル(ニーズ)マトリクスを作成する必要性を積極的に議論するべきだ」という意見があった。国外だけでみても大きな違いはみられなかった。
設題3「補充原則 4−10①において、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会の構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきであると追加されたがこれについて」:
70.4%が「良いと思う」と答え、22.2%が「よくないと思う」と答えた。後者のうち 26.7%は「過半数だけでは不十分」と回答し、20%は「プライム市場だけでは不十分」と回答したが、約半数を占めるその他では、議長は独立している必要がある、あるいは報酬委員会と指名委員会は全員独立している必要がある、といった意見が複数みられた。なお、国外だけで見た場合は「良いと思う」は 63.1%で全体平均より若干少なかった。
設題4「補充原則 3-12 において、プライム市場上場企業は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである、と追加されたがこれについて」:
76.4%が「良いと思う」と回答、23.6%が「良いと思わない」と回答した。後者は「英語開示を必要とする書類の特定をすべき」が 50%、「プライム市場だけでは不十分」が、28.6%であった。その他の意見として、英語の質の問題で、かえって不正確な情報が伝達されないか不安を示す意見がみられた。
設題5の1では、「原則 2 の“考え方”に SDGs、TCFD、サステナビリティへの課題が挿入され、 補充原則 2−31、4−22 に記載が追加され、対話ガイドラインにも記載が追加された」ことについて:
85.4%が「良いと思う」と答えた。7.3%の「良くないと思う」と回答したうち、60%(3 名)は「不必要だと思う」と答えた。またその他として、なぜ TCFD しか引用されず、SASB や GRI については指摘がないのか、と言った意見があった。この問いについては国外からの回答では 1 件の「どちらでもない」を除き全員「良いと思う」と回答した。
設題6「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂の「はじめに」において、上場子会社においてガバナンス体制の整備の重要性や監査の信頼性確保、内部統制・リスク管理が指摘されていることについて」:
88.9%が「良いと思う」と答えた。7.4%(4 名)の「良いと思わない」と述べたうち 3 名はその理由として、そもそも親子上場に反対する意見であった。
設題7「補充原則 2-4①に、上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである、と記載され他ことに対する意見として:
65.5%が「良いと思う」と回答、25.5%が「良くないと思う」と回答した。後者のうち 37.5%は「女性という記載をあまり強調しすぎるべきではない」と回答した。また1名が「不十分である」と回答した。過半数を超えるその他の意見として、ダイバーシティの全ての要素が考慮されるべき、人的資源の問題として取り組むべきというものから、女性の取締役を義務付けられるべき、ジェンダーギャップ比率を含むべきといった、“ダイバーシティ”に対する複数の考え方や、「目標開示は一律的」という様々な意見がみられた。
設題8「補充原則 1−24 に、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきである」と記載されたことについて:
90.9%が「良いと思う」と答えた。「良いと思わない」と答えた 3 名はその理由として、「プラットフォームを利用する投資家があまりいない」、「導入するなら機関投資家だけではなくすべての株主を対象とすべき」という意見であった。
最後に、その他として次のような意見が寄せられた。今回のコードに含まれなかった部分に対する意見として、「有価証券報告書を議決権行使の資料とするためになんらかの記載が必要」、「持ち合い株解消についてもっと施策を講ずるべき」、「独立取締役のトレーニングについて触れられていない」、「CEO と議長は分離するべき」、「現在の企業と投資家の対話のみを対象とする枠組みで良いのか。証券会社との付き合い方にも言及することを検討するべきではないか」といったものもあった。一方コードそのものの記載について、「従前のコードよりさらに解釈の幅が広がった」と不安視するものや「主語が“企業”になっているが、“取締役会”とすれば要求の曖昧さが回避で
きるのでは」、「Should を must に置き換えペナルティも示すべき」といった意見もみられた。
一方コードそのものの記載について、「従前のコードよりさらに解釈の幅が広がった」と不安視するものや「主語が“企業”になっているが、“取締役会”とすれば要求の曖昧さが回避できるのでは」、「Should を must に置き換えペナルティも示すべき」といった意見もみられ
た。 またそもそも小さな企業であってもコーポレートガバナンスの問題は蔓延しているのに、 上場企業に対する要求として、コードの要件は弱すぎるのではないかという意見もあった。」