メトリカル:委員会設置は進んだか

この1年間で指名委員会・報酬委員会を設置する会社が増えてきました。透明性・客観性を深めていく上でも経営の継続性を考えても、これら委員会を設置することはコーポレートガバナンスの充実を図る上ではとても重要な課題です。東証の要請もあって、ここ最近では任意の諮問委員会を設置する会社が多く見られます。一方で、法的な指名委員会と報酬委員会を設置する「指名委員会等設置会社」の組織形態の採用は進んでいないのが現状です。

2年前からどれくらい委員会設置が進んだのかをメトリカルの調査対象約1,800社をベースにお示しします。下グラフの通り、2018年3月末と2020年4月末を比べると、法的な指名委員会と報酬委員会を設置する「指名委員会等設置会社」の数は65社/全1,796社から68社/全1,753社とわずかに3社の増加にとどまりました。指名委員会等設置会社への移行はいかにハードルが高いと上場会社の多くが考えているかを表しています。一方で、任意の(諮問)委員会として、指名委員会と報酬委員会の設置が進みました。任意の指名(諮問)委員会がある会社数は、2018年3月末の550社/指名委員会等設置会社を除く全1,731社(指名委員会等設置会社を除く会社に占める割合31.8%)から2020年4月末の949社/指名委員会等設置会社を除く全1,685社 (同56.3%)に増加しました。報酬委員会でも同様に、任意の報酬(諮問)委員会がある会社数は2018年3月末の609社/指名委員会等設置会社を除く全1,731社(指名委員会等設置会社を除く会社に占める割合35.2%)から2020年4月末の992社/指名委員会等設置会社を除く全1,685社(58.9%)に増加しました。

それぞれの委員会について、メンバー構成と委員長についてもう少し詳しく見ていきます。指名委員会設置会社の指名委員会では社外取締役が委員長に選任される会社が増加して、2018年3月末の45社/指名委員会等設置会社全65社(指名委員会等設置会社に占める割合69.2%)から2020年4月末の56社/指名委員会等設置会社全68社(同82.4%)に増加しました。また、指名委員会設置会社の報酬委員会でも社外取締役が委員長に選任される会社が増加して、2018年3月末の49社/指名委員会等設置会社全65社(75.4%)から2020年4月末の56社/指名委員会等設置会社全68社(82.4%)に上昇しました。増加した任意の(諮問)指名委員会でも、そのメンバー構成で、社外取締役が過半数を占める会社ならびに委員長を社外取締役が務める会社が2018年3月末では過半に届いていませんでしたが、2020年4月末では過半数超えに達しました。同様に、任意の(諮問)報酬委員会のメンバー構成でも社外取締役が過半数を占める会社ならびに委員長を社外取締役が務める会社が2018年3月末では過半に満たなかったのですが、2020年4月末では過半数超えに達しました。報酬委員会に比べて、指名委員会の進捗が遅れ気味な傾向は依然続いています。詳細は下表をご参照ください。

まだ上場企業全体としてみれば、任意の(諮問)委員会の設置が進んでいない会社も少なくないことから、今後も任意の(諮問)委員会という形態で設置が進んでいくものと予想されます。しかしながら、あくまで諮問委員会であることも考慮すると、その実効性は不透明です。指名委員会設置会社形態の会社の委員会であっても実際の運用は会社ごとに実効性に差があるものと推測されます。取締役会評価において、当該委員会についても評価され、改善が進むことを期待しています。取締役会評価の中で当該委員会の運用について何か開示されると良いと思います。開示情報を見る限りでは、現状は取締役会評価まで手が回っていないように感じられます。

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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
akimatsumoto@metrical.co.jp
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