日産とゴーン氏が行ったとされている、報酬を過少に記載した虚偽記載の「重要性」について、弥永真生教授のエッセイが出た(ビジネス法務3月号)。会計にも詳しい弥永教授らしく、有価証券報告書様式の記載上の注意にも触れた、詳細な議論がなされている。意外に思う人もいるだろうが、結論は「重要性あり」だ。ごくごく簡単に彼の3つの論拠をまとめてみた。
1 質的な重要性
重要性は量的にも質的にも成立する。西武鉄道事件では、財務情報でない(このため量的でもない)株式の保有状況につき重要性ありと判断された。法令は有価証券報告書の様式を定め、発行体に対し、例えばコーポレートガバナンスの状況を記載するよう求めるが、当該情報は量的情報ではなく投資判断を直接左右するものでもないのに、開示が求められている。
2 割合基準の不要性
金商法の「重要な事項」は広く解釈され、投資判断に著しい影響を与えるものとされている。売上や営業利益との対比で何パーセントといった基準で考えることは求められていない。
3 法令が定める金額水準
法令は発行体に対し、一人当たり1億円以上の役員報酬について開示を求める。重要性も1億円を基準に考えるのが穏当だろう。