ガバナンス改善に不可欠である役員研修をエンゲージメントで提案する方法

独立取締役が期待される役割を果たすためには、役員研修が最も必要なものである

2013年に政府自民党にコーポレートガバナンス・コードの導入を提唱した際、最も重要な課題の一つが役員と役員・役員候補者の研修の項目を含める事でした。日本企業の平均的な取締役会のメンバーになった経験がある人にとって研修の必要性は一目瞭然でしょう。なぜなら、日本では独立社外取締役の数が増えたとはいえ現状まだまだ取締役会の中で少数派であり、独立取締役が本来求められている役割を果たし、実効性のある取締役会とするためには、業務執行取締役と社外取締役がお互いの役割についての意見調整することが不可欠ですが、両者の議論がかみ合うための共通の土台となる役員としての基本的な知識やスキルが取締役に不足している場合が多いからです。(また、社外取締役の数が増えるに伴って、複数になった社外取締役間にも「役割・重点」などについて意見調整が必要になってきています。)

必要な知識や視点を共有していないと、最も重要な課題についての分析や議論さえもしないこともあります。例えば、個人的な経験から、技術畑出身でファイナンスが良く分からない人には、自社が2年以内に簡単に倒産する可能性があることを理解してもらうことは容易ではありません。残念ながら「ジェネラル・マネージャー」としてではなく、(頻繁にみられるケースですが)業務分野の縦割り構造の階段を上がってきた多くの日本人経営者は、ファイアンス、投資分析、戦略、株式市場、コーポレート・ガバナンスのベストプラクティスなどの「時代が要請する」レベルの知識を持ち合わせていません。豊富な現場経験と自分の組織のことは知っていても、殆どの人はMBA保持者ではなく、経営者や役員として持つべき基本的なスキルセットの多くが不足しています。彼らの知識は特定の分野に限られており、グローバル企業で期待されているレベルのものではありません。(上述は、英語が堪能だとか海外経験が豊富だという事を念頭に置いているわけではありません。これらを含めるとこの問題はさらに大きくなります。)