JPX/TSEとコーポレートガバナンス報告書データフォーマット課題についての意見交換(ミーティング・サマリー)

去る7月25日にBDTI代表理事ニコラス・ベネシュとメトリカルエグゼクティブ・ディレクター、CGリサーチ部門共同ヘッド松本昭彦の2名で東京証券取引所を訪問した。コーポレートガバナンス報告書(以下CG報告書)のディスクロージャーに関する意見交換が目的で、ミーティングには上場部企画グループおよびシステム企画グループから課長ほか6名が出席した。意見交換の要旨を下記に示す。

  1. 1)冒頭、ベネシュより、「そもそもCG報告書は企業間のコーポレートガバナンスの比較が容易にできるようにするために、各企業に提出を求めるものとして始まった。しかし、現実にはそのようになっていない。BDTIでは幅広いユーザーのガバナンス分析を手助けするべく、CG報告書の元データであるXBRLをExcelまたはCSVファイル、そしてAI分析に適したデータベースのフォーマットへ変換するシステムを構築中だが、全てのXBRLデータが同じようにリスト順に変換されない。」などの問題点について質問した。上場部からの回答は、「XBRLデータは正しく変換されているが、記載欄の様式変更に伴って、新様式に対応したCG報告書とそうでないものとでデータ順が異なる場合がありうる。」(その後のメール回答・・・「①XBRLデータが会社によって順番が入れ替わることについて、基本的に、XBRLデータの順番が入れ替わることは想定されていません。記載欄の様式変更があった場合、その前後で項目数が変わりますので、その影響があるかもしれません。(直近では、12/17までに更新したものと、12/18以降に更新されたもので、データ項目が異なります。CG報告書データを販売しておりますので、ご利用を併せてご検討ください。(その場合、データの欠落や順番が入れ替わるといったことは生じないものと思われます。) 」)
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  2. 次に、ベネシュよりCG報告書記載方法の改善の一例をトヨタ自動車の例を挙げて提案した。「CG報告書の取締役へのインセンティブ付与に関する施策に関して、実施状況のXBRLデータではストックオプション制度の導入がTrueとなっているが、『2010年8月までストックオプションを付与していましたが、2011年以降は付与していません。』とも記載されている。このような場合には実際には現在はストックオプション制度を実施していないのだから、記載方法を変更するべきではないか。」また、「会社ごとにコーポレートガバナンス・コード原則の対応状況を示す記載は様々で統一されていないため、企業間の比較に手間がかかる。定まった記載ルールがないことでAIを利用して分析することをさらに困難にさせている。
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  3. したがって、『コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示』の記載項目について、各原則に関する実施状況は本来CG報告書において説明すべきで、(ファーストリテイリングの記載例のように)自社ウェブサイトを参照されたい旨の記載のみでは不十分と指摘すべき。自社サイトのコーポレートガバナンス・ガイドラインはCG報告書記載よりも詳細を示して補強するべきものである。」「コーポレートガバナンスに関する報告書の記載要領についても『~について記載する場合等が考えられます。』などやや強制力を弱める表現が散見される」などの指摘をした。
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  4. ベネシュと松本は「「開示項目」ごとにそれぞれ違うXBRLタグをつける事が何よりも大事である」という点を主張した。「現状では、「開示項目」(11項目の方針や説明など)について、各開示項目を個別の情報とするのではなく、全部をひっくるめて1つの情報として整理してしまっているが(全項目まとめてXBRLタグが1つのみ)、この提供形式を改めるべきである。 各項目にXBRLタグを付けることは容易であり、大きなコストもかからない。」(現在のXBRLタグの使い方は、とても異例で奇妙である。本来コンピューターがデータを分類・特定できるようにするためにXBRLタグがあるにもかかわらず、むしろ機械不可読になるように全く違うデータ項目を十把一絡げにするように使われている。)
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  5. 松本からは、「取締役の報酬関係の記載について、とりわけストックオプション(制限株含む)が各取締役にいくら配布されているのか不明。」「政策保有株式の記載について、十分に説明されている報告書は少ない。コピペされていると思われる記載例が多い。政策保有株式が増えているのか減っているのかを記載されていると良い。」「TDnet関係で言うと、決算短信の附則資料に『利益配分の方針』『中期的経営方針』が記載されている場合とされていない場合があり、記載されていない場合でもIRプレゼン資料に記載されている場合が少なくない。」などの指摘をした。東証上場部からは、「CG報告書単独でなく、有価証券報告書など金融庁のディスクロージャー方針とも連携してあたっていく」との回答があった。

今回のミーティングにおいて我々の質問に対して必ずしも全て十分な回答が得られたわけではなかったが、東証上場部から「このような意見交換の場を持つことは歓迎する。」との発言があったことから、今後も引き続き意見交換していきたい。

松本昭彦
METRICAL, Inc.

ニコラス ベネシュ
公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)

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