経産省『伊藤レポート2.0』公表

経産省は、10月26日、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)」(通称『伊藤レポート2.0』)を公表しました。2014年に発表した「伊藤レポート」後に生じた動きを総括しつつ、無形資産投資やESG等を巡る論点を深掘りして議論し、今後の政策対応等を検討した成果と位置付け、その内容を以下のように要約しています。

「伊藤レポート2.0」の内容

本報告書では、まず第四次産業革命が企業の競争のあり方を大きく変化させ、競争力の源泉として無形資産に対する戦略投資の重要性が高まっていることを指摘しています。その上で、グローバル企業の投資額が増大していること、日本企業の研究開発投資の伸びが他国と比べて鈍化していること、人材投資の水準が低いことを示しています。
また、長期投資を巡る資本市場の変化として、パッシブ・インデックス投資への資金流入が増える中での課題やESGを巡る主要論点が体系的に示しています。特にESGについては投資家の間で長期リスク要因として見るコンセンサスが存在すること、投資収益への影響には見解に違いがあることが明らかになりました。

その上で日本企業のパフォーマンスに関する資本市場の評価をいくつかの指標で国際比較しています。「伊藤レポート」によって注目が集まったROEが改善する一方、欧米と比べて事業の収益性や資本政策に違いがあることを示しています。特に本研究会では企業価値を市場がどのように評価しているかを示す指標としてPBR(株価純資産倍率)に着目して国際比較を行いました。その結果、日本企業のPBRが長年にわたり1倍前後という(理論的には解散する方が価値が高い)水準で推移しており、業種・資産構成等ごとに欧米と比較しても極めて低い水準にあることが明らかになりました。

このような課題認識を踏まえ、本研究会では、企業が持続的な価値創造に向けた経営のあり方を見直し、そのビジネスモデルや戦略、ガバナンス等を投資家等と対話するための「ガイダンス(価値協創ガイダンス)」を提案しました。本報告書では、ガイダンスの各要素についての考え方や議論を整理し、その活用も含め以下の8項目の提言を行っています。

  1. 企業と投資家の共通言語としての「価値協創ガイダンス」策定
  2. 企業の統合的な情報開示と投資家との対話を促進するプラットフォームの設立
  3. 機関投資家の投資判断、スチュワードシップ活動におけるガイダンス活用の推進
  4. 開示・対話環境の整備
  5. 資本市場における非財務情報データベースの充実とアクセス向上取組
  6. 政策や企業戦略、投資判断の基礎となる無形資産等に関する調査・統計、研究の充実
  7. 企業価値を高める無形資産(人的資本、研究開発投資、IT・ソフトウェア投資等)への投資促進のためのインセンティブ設計
  8. 持続的な企業価値向上に向けた課題の継続的な検討

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