RIETI:「従業員のメンタルヘルスと労働時間-従業員パネルデータを用いた検証-

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「2000年以降、日本では精神疾患を患う人が増加傾向にあると言われており、昨今では、メンタルヘルスの不調は個人の問題だけでなく、経済的・社会的損失をもたらす問題として社会的に注目されるようになってきた。たとえば、厚生労働省の試算によれば、自殺やうつ病による経済的・社会的損失は2009年度だけで約2.7兆円に上ることが示されている。精神疾患の発症原因については、仕事や職場、とりわけ日本では労働時間の長さにあると指摘されることも少なくないが、メンタルヘルスと労働時間との関係を検証した国内外の研究は、疫学あるいは社会科学の分野のいずれにおいてもそれほど蓄積されていない。そこで、本稿では、労働時間との関係に注目しながら、同一個人を追跡調査した従業員の個票データを活用して、メンタルヘルスを毀損させる要因の特定化を試みる。

具体的に、本稿では、従業員を追跡したパネルデータを用いて、労働時間の長さとメンタルヘルスとの関係を検証する。先行研究では、労働者に固有の効果をコントロールしたり、労働者属性や職場環境などの詳細な情報をコントロールしたりしたものが少ないため、長時間労働がメンタルヘルスの毀損につながるのかどうか、必ずしも明確な知見が得られていない。そこで、パネルデータを活用することで、逆の因果性を考慮するとともに、仕事の特性や自律性、残業時間、不払い残業時間などの要因とメンタルヘルスの関係を明らかにする。

また、本稿では、従業員のメンタルヘルスを測る指標として、GHQ(General Health Questionnaire)という統一尺度を利用する。疫学分野の研究では、こうした統一尺度を用いることは通例となっているが、経済学分野の既存研究のほとんどが、「ストレスの有無」や「仕事への満足度」といった簡便な指標をメンタルヘルスの状態をあらわす変数として用いてきた。本稿の分析では、GHQというメンタルヘルス指標の統一尺度が労働時間や労働者属性、職場環境などの諸要因とどのような関係にあるかを明らかにする。

分析の結果、まず、メンタルヘルスの状態は同一労働者でも経年的にみると大きく変化することが確認された。次に、表に示した固定効果モデルの推計結果によると、労働時間の長さはメンタルヘルスを毀損する要因となりうること、特に、サービス残業という金銭対価のない労働時間が長くなると、メンタルヘルスを毀損する危険性が高くなることが明らかになった。・・・・」

RIETIのサイト:
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/14j020.html

ディスカッション・ペーパー:
http://bit.ly/1o9TTJn

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