アメリカ連邦量刑ガイドラインから学ぶ内部統制

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アメリカに連邦量刑ガイドラインというものがあります。犯罪の量刑基準を定めたガイドラインですが、8章は企業に対する罰金の考え方を定めています。その中で犯罪を防止・探知するための有効な措置を講じていた企業は、情状酌量されて、罰金が下がるという考え方が示されています。有効な措置とは何か、条件も定められており、内部統制システムを考えるときの参考になります。ここでは、その条件が記載された部分とそのコメンタリー(解説)をご紹介します。

ガイドライン8章B2.1.条(c)項
(b)項に掲げられた措置を講じるにあたって、犯罪行為のリスクを定期的に検証し、当該検証によって明らかになった犯罪行為のリスクを低減するため、(b)項に掲げられた措置を設計し、施行し、修正するための適切な措置をとらなければならない。

コメンタリー7
(c)項の条件を満たしていると言えるためには、企業は次のことをする必要がある。
(A)号 次の事項を踏まえ、犯罪発生リスクを定期的に評価すること
(ⅰ)犯罪の性質・重大さ
(ⅱ)業界特性による特定の犯罪の起こりやすさ
業界特性により、ある犯罪が起きるリスクが高いなら、その犯罪を防止・探知する合理的手段をとらなければならない。例えば、業界特性に応じ、営業職に価格裁量を持たせるなら、価格操作を防止・探知するための基準・手続を確立すべきである。商品説明の方法に幅がある商品を売るなら、詐欺を防止・探知するための基準・手続を確立すべきである。
(ⅲ)企業の歴史
それまでの企業の歴史を見れば、防止・探知すべき犯罪の類型がわかるだろう。
(B)号  (A)号の犯罪のうち、深刻さ、発生可能性において最も高いものを優先して、防止・探知のための (b)項に掲げられた措置を定期的にとること
(C)号  (A)号の犯罪のうち、深刻さ、発生可能性において最も高いものに即して、リスクを低減するための(b)項に掲げられた措置を修正すること
背景
ここでは、サーベインスオクスリー2002年法805条(a)(5)項に対応し、効果的なコンプライアンス及び倫理プログラムの条件を定めている。同項は、本ガイドラインが企業の犯罪を防止・処罰するのに十分なものとなるよう、ガイドラインや指針を発行・改訂する委員会を規律するものである。
本ガイドラインで定める措置は、企業が間接的に責任を負う犯罪を合理的に防止・探知することを目的としている。そのような措置を講じて犯罪を防止・探知しようという企業の事前努力は、ペナルティや執行猶予を決定する際に直接斟酌される。

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