The Wall Street Journal: 「【社説】安倍首相が覆す「日本株式会社」 企業統治改革スタート」

「「日本は変化に抵抗することが多い。そうかと思うと一斉に変化を受け入れる。東京証券取引所は1日、上場企業の経営規範を定めた企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の適用を始めたが、これもその一例だ。企業の生産性向上とその価値の解放を目指す安倍晋三首相の取り組みが、「日本株式会社」の古い慣行を覆しつつある。

数十年にわたり、政官業の支配体制が少数株主の権利に対する要求を妨げてきた。日本企業は短期的利益を求める投資家の干渉を無視できたため、より良い戦略的決断を下すことができたとされる。経営者は、主に終身雇用の従業員の利益を守るために企業を個人的領土のように経営してきた。

高度成長期には、これは大した問題ではなかった。巨額の設備投資に経済的合理性があったためだ。しかし1990年代初めにバブルがはじけると、体制のもろさが露呈した。経営者たちは不採算事業を切り捨てることなく、その資産にしがみついた。そして日本経済は停滞した。

日本が最悪の「死に体」企業を一掃し、銀行システムを再生させるまでに10年以上かかった。だが企業が投資や賃金引き上げを行わずに現金をため込んだため、日本経済は回復しなかった。

安倍政権は、日本企業に再編や投資を強いる方法として企業統治指針を採用した。指針によると、取締役会は経営から独立した社外取締役の選任や透明性の向上を順守することが求められており、守らない場合には理由を説明する必要がある。

指針には法的強制力がないため、米国人には手ぬるく聞こえる。しかし、政府が道徳的勧告の手段として指針を使っていることもあり、実効性を持つ兆しが見える。日本では法律の条文よりも社会的な意味合いのほうが重要なことがしばしばあり、企業の一部が新たな指針に敬意を払っていることは良い兆候だ。

日本株式会社が実際に変わりつつあることを示す一つの例が、物言う投資家(アクティビスト)への対応だ。ブーン・ピケンズ氏は1989年、トヨタ系列の小糸製作所に改革を強要しようとして日本で嫌われ者となった。最近ではダン・ローブ氏率いるヘッジファンド、サード・ポイントが、少し開いたドアを押し広げようとしている。秘密主義で知られるロボットメーカーのファナックは5月、サード・ポイントに屈する形で配当性向を2倍に引き上げるとともに、機動的に自社株買いを実施すると決めた。ファナックをはじめとする企業は、改革を受け入れた後、株価が上昇している。、、、

われわれは数十年にわたり、公的債務をまかなう唯一の方法として経済成長を追求するよう日本政府に求めてきた。公的債務の対国内総生産(GDP)比は今や200%を超えている。安倍氏は成長こそが政権の戦略だと率直に表明している。日本株式会社の改革を阻む財務省官僚の抵抗を克服するために安倍氏がすべきことはまだあるが、企業統治の改善は注目に値するスタートだ。」

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