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同章では金融機関・市場の改革について提言がなされている。
銀行におけるコーポレートガバナンスが、その社会性から非金融業より厳しく求められることに議論の余地はない。ただし独立社外取締役の任命についてその独立性の確保が非常に重要である。特に地方銀行において地方の有力者や役員の知人・友人が土地勘があるというだけで選任され、結果的に独立性が失われる可能性がある。その選任過程・理由について明確な開示・吟味が求められる。
また日本の金融・資本市場について「4年以内に世界の代表的市場としての評価を必ず確立」というスローガンが掲げられている。具体的に何を以てそれを確認するのか、すなわちKPI(Key Performance Indicators)を提示する必要がある。仮にKPIを設定するとして(または暗黙の了解で)取引量が最有力候補の一つとなることが予想されるが、それはコンピュータ・プログラムによる自動売買、つまりアルゴリズム取引もしくは高頻度取引(HFT, High Frequency Trading)を助長する土壌を整えることにもなる。HFTは現物資産価値の増減とは無関係に短期かつ市場心理に沿うモメンタム取引を大規模に行うことを可能にする。HFTによる企業の本源的価値と市場価値の大幅な乖離傾向は、金融市場が本来持つべき合理的な価格形成を阻害し、市場の不安定化をもたらす。不安定な市場は参加者の離反を招き、結果的に「世界の代表的市場としての評価」は得られなくなるだけでなく、証券取引所のガバナンス不全との指摘・問題視につながるだろう。
IFRSの適用企業拡大には基本的には賛成である。ただしIFRSが持つ問題点にも十分に留意する必要がある。IFRS及び一般的な会計基準は外部不経済を考慮に入れておらず、実態を十分に反映していない。例えば従業員研修は費用ではなく、資本投資として計上されるべきであり、企業の温室効果ガス排出、汚染、生態系破壊は費用として計上されるべきである。IFRSに対して外部性考慮のエンゲージメントを行う必要がある。