機関投資家の議決権行使が企業の取締役会構成に与える影響の分析

中央大学大学院/アイ・アール ジャパンの大橋貴司氏が日本経営財務研究学会で発表された『株主の議決権行使行動が企業の取締役会構成に与える影響~社外取締役選任議案における議決権行使結果をふまえた分析~』をご紹介します。

分析の成果を次のようにまとめられています。
『2013年6月総会において、取締役選任議案を上程した東証TOPIX500構成銘柄(監査役設置会社)のうち、社外取締役を選任していない企業および取締役任期が2年の企業を除く、301社615名の社外取締役を対象とし、社外取締役の独立性が議決権行使結果に与える影響についての分析を行う。』

『実証分析においては、社外取締役の独立性と議決権行使結果には正の関係があるとの考え方の基に、独立性、出席率、社外取締役比率、ROE、買収防衛策導入、外国人持ち株比率、事業法人持ち株比率の7つの仮説を立て、反対行使率と各ファクターの関係についての分析を行った。その結果、出席率、買収防衛策、外国人持ち株比率は、反対行使率に対し正の関係(反対行使率の上昇要因)となっており、独立性、社外取締役比率、ROE、事業法人持ち株比率は、反対行使率に対し負の関係(反対行使率の低下要因)であることが示された。これらの結果は、すべて仮説と整合的であることから、社外取締役の独立性と議決権行使結果には正の関係があることが明らかであるといえる。

しかしながら、社外取締役の独立性と議決権行使には正の関係があることが示されたものの、説明変数の中で反対行使率に最も大きな影響を与えている変数は取締役会への出席率であることから、現状では社外取締役選任においては取締役会の出席率の方が独立性よりも行使判断においては重視されていることになる。また、ROE の水準は、反対行使率に対し、ほとんど影響を与えていないことから、株主利益の最大化のためには、経営陣からの独立性を有する社外取締役の選任が必要と考えている投資家が、社外取締役選任においては、現状の業績動向については重視していないことも理解される。

また、今回の実証分析結果は、社外取締役の選任において、独立性の有無や業績動向などは考慮せず、出席率75%未満の社外取締役候補者には反対行使の推奨を行うISS の議決権行使の助言の議決権行使に与える影響力の高さを改めて裏付けるものとなっている。』

論文は下記サイトでダウンロードできます。
http://bit.ly/1dfaOzC

上記レポートでもISSの助言が議決権行使に与える影響力の高さが裏付けられています。BDTIでは11月25日(月)にISSの石田日本代表をお迎えしてセミナーを開催し、2014年以降の方針を伺います。IRご担当の方にはぜひご参加いただきたいセミナーです。お申し込みは下記サイトからお願いします。

http://bdti.or.jp/node/792 

 

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