「日本の株式持ち合い比率」 (野村證券)

サマリー  11 年度末は算出開始以来の最低を更新 政策保有株式の売却の必要性はなお残存

3 年連続で低下した11 年度末の持ち合い比率、広義持ち合い比率
野村證券が算出した、上場会社(保険会社を除く)が保有する、他の上場会社株式の保有割合(時価ベース)を示す11 年度末の持ち合い比率は10 年度末の11.0%から0.1% ポイント低下して10.9%(速報値)となった。また、持ち合比率に保険会社が保有する上場会社の株式保有比率(時価ベース)を加えた広義持ち合い比率も、10 年度末の17.8%に比べ0.4%ポイント低下して17.4%(速報値)となった。持ち合い比率、広義持ち合い比率とも前年度比での低下は09 年度以降3 年連続である。

過去最低水準を更新したが、低下幅は10 年度に比べ鈍化
この結果、持ち合い比率、広義持ち合い比率とも、90 年度の算出開始以来の最低水準を2 年連続で更新した。持ち合い比率、広義持ち合い比率とも、低下幅は10 年度に比べて鈍化したが、これは、決して保有株式の圧縮が進み、売却の必要のある株式が減少したためではない。11 年度末に株価が上昇基調を辿ったものの、それ以前は株式市場の環境が良好とはいえなかった。このため、政策保有株式の圧縮を積極的に進めることができず、様子見の姿勢を続けた企業が少なくなかったことが理由と考えられる。

今後も持ち合い解消は続こうが、株式需給への影響は大きくない
株価が低迷した 11 年(暦年)中には、株式含み益の減少や評価損の計上を余儀なくされる懸念が生じていた企業も見られており、株価変動が企業財務に与える影響は引き続き残っている。また、投資家からも企業に対し保有株式を圧縮し、財務リスクの縮小を引き続き求められている。以上を考えると、12 年度以降も政策保有株式の圧縮は継続し、「株式持ち合い比率」も引き続き低下が進むと考えられる。また、株式市場の環境が好転するといわゆる「持ち合い解消売り」が膨らみ、株式需給を悪化させることを懸念する向きもある。しかし、我々は、一部の流動性に乏しい企業を別にすれば、それが株式需給全体に与えるインパクトは大きくないと見ている。持ち合い解消が盛んであった2000年代の前半から比べれば、その絶対量は少なくなっていることや、被売却企業の中で自社株買いを実施することにより、市場への放出を抑制しようとする動きも想定されるためである。

2012 年7 月2 日  

リサーチアナリスト
制度調査
西山 賢吾 シニアストラテジスト- NSC
kengo.nishiyama@nomura.com
+81 3 6703 1247

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