*日本CFA協会からの意見書を追加しました(No. 13)。
法務省による公表は後1-2ヶ月以上かかるとのことでので、会社役員育成機構は、会社法制度に関する中間試案に対する意見書(パブリック・コメント)を出来るだけ多く集めて一箇所に掲載するよう努めたいと思っております。 ここで掲載されていない意見・コメントを提出した方は、info@bdti.or.jp にご送付頂ければ、掲載いたします 宜しくお願いいたします。
1.日本弁護士連合会 「会社法制の見直しに関する中間試案に対する意見」(平成24年1月24日)
日弁連によるとこの意見書は重要論点の5項目、(1)監査役設置会社における、有価証券報告書提出会社を範囲とする義務付けに賛成する。(2)監査・監督委員会設置会社制度の現在の案には反対であり、企業統治の水準が監査役会設置会社と同等以上になるような制度設計がなされる場合、賛成の余地がある。(3)社外取締役・社外監査役の要件については、要件の厳格化(重要な取引先関係者でないことを含む)に賛成し、1名以上の法律専門家の選任の義務付けを提案する。(4)多重代表訴訟の導入に賛成し、親会社株主の保護の観点から、親子会社に関する規律を見直すことについて前向きな検討を求める。(5) 子会社少数株主の保護について、親会社との利益相反取引により、子会社が不利益を受けた場合の親会社の責任について、明文化に賛成する、を中心にをとりまとめられました。
2.日本経済団体連合会 「会社法制の見直しに関する中間試案に対する意見」(平成24年1月24日)
主要論点に対する意見の概要(一部)は次のとおり。
社外取締役の選任の義務付け
経営への適正な監督の可否は、社外取締役であるか否かといった形式的な属性ではなく、個々人の資質や倫理観といった実質により決まる。社外取締役は、各社が有用であると判断し、適切な資質等を備えた人材が得られる場合に自主的に選任すべきものであり、一律の義務付けは、各社に適したガバナンス体制の構築を制約する。そのため、義務付けには反対である。
社外取締役等の要件の厳格化
社外取締役や社外監査役には、実質的に活躍し得る有為な人材を広く集める必要がある。それにもかかわらず、従来の社外取締役等の要件に加えて、親会社や取引先関係者等も認めないこととすれば、かえって実効的なガバナンスを阻害することになりかねない。そのため、社外取締役等の要件の厳格化に反対する。
監査・監督委員会設置会社制度の導入
現行の監査役会設置会社と委員会設置会社に加えて、中間試案で掲げられた監査・監督委員会設置会社(監査役、指名委員会および報酬委員会を置かず、社外取締役が中心となる監査・監督委員会が監査や監督機能を担う、新たな機関設計)が認められれば、企業にとっての選択肢が広がり、柔軟なガバナンス体制の構築につながる。そのため、この提案を支持する。制度の構築にあたっては、実務的な利用しやすさへの配慮が不可欠である。
3.Japan Society 「会社法制の見直しに関する中間試案に対する意見」(平成24年1月26日)
(意見書から一部抜粋)
我々は、この日本市場に対する否定的な認識が変わる事を望んでおり、日本企業への投資を魅力的なものにする為には、大幅な法改正が必要であると考えます。その点について、法務省の提案の多くは、正しい方向に踏み出すものであり、それゆえ、下記の通り、我々はこの意見書を提出するものであります。
1 社外取締役の選任の義務付け
提案意見:B案が、もっとも望ましい提案であると考えます。なぜならば、提案されている議案の中で、B案がもっとも多くの企業に社外取締役を確保させる事を義務づけており、その社外取締役の存在が、管理体制内において客観性をもたらすと考えているからです。しかしながら、このB案においても、社外取締役一名のみを求めるだけにとどまっている事、そして、その社外取締役の独立性について明確な記載がされていない事に懸念を抱きます。
2 監査・監督委員会設置会社制度
提案意見:東京証券取引所は、これらの改正が広範囲で実施される可能性が高く、そのような実施が、上場企業の社外取締役の採用を大幅に向上させるものであるという見解の下、支持を表明しています。
3 社外取締役及び社外監査役に関する規律
提案意見:より一層の独立性を確保できるA案が適切であると考えます。
4. 日本取締役協会(JACD) 「取締役会の監督機能の充実に向けた機関設計に関する提言~柔軟設計型委員会設置会社の導入に向けて~」 (平成23年11月30日)
[日本取締役協会のHPより]
(社)日本取締役協会・会社法制委員会(委員長:中鉢良治・ソニー株式会社 代表執行役 副会長)は、本日、法務省に対し、会社法制見直しに関する第1段階目の提言として、現行の委員会設置会社制度に関し、制度設計の柔軟化を可能とする改正を求める意見書を提出しました。
法改正(制度設計の弾力化)を求める理由は次の通りです。詳細は、意見書をご覧下さい
① 平成14年の法改正で導入された現行の委員会設置会社制度の普及は必ずしも進んでいないが、現在法制審議会・会社法制部会で会社法制見直しの議論がなされている中、現行委員会設置会社制度についての議論が必ずしも十分になされていないと見受けられること。
② 現行の委員会設置会社制度自体がやや硬直的な制度であること等も原因となって、既に委員会設置会社制度を採用している企業からも当該制度の利便性等に関する問題が指摘されていること。
会社法制委員会の意見の内容は次の通りです。
日本取締役協会・会社法制委員会と致しましては、わが国のコーポレート・ガバナンスの一層の向上を図ることを目的として、わが国においてもモニタリング・モデルに基づいた企業統治制度がより定着して行くことを確保すべく、現在議論されている会社法制見直しに伴い、現行の委員会設置会社制度はそのまま維持しつつも、新たに下記の柔軟設計型委員会設置会社制度を採用することを可能とする制度改正が行われるべきであると考えます。
記
① 取締役会の過半数が「独立取締役」で構成されていることを条件として、現行の委員会設置会社における、いわゆる必置三委員会(監査・指名・報酬)の設置義務を解除し、会社が必要と考える任意の委員会を設置することができるものとする(以下「柔軟設計型委員会設置会社」という。)。なお、柔軟設計型委員会設置会社制度を採用するためには、定款でその旨定めることを必要とするものとする。
② 各委員会の権能、構成員の要件及び決議要件等は、原則として、柔軟設計型委員会設置会社が定款又は定款所定の授権規定に基づく取締役会規則により任意に定めることができるものとする。但し、現行の委員会設置会社における監査・指名・報酬委員会のいずれかに相当する委員会が設置された場合には、それらの委員会の決定のみが終局的に柔軟設計型委員会設置会社を拘束するものとするためには、当該委員会の構成員の過半数が独立取締役でなければならないものとする。
③ 柔軟設計型委員会設置会社には、執行役を設置するものとし、監査役・監査役会を設置することはできないものとする。なお、柔軟設計型委員会設置会社における執行役の権限、選・解任手続、任期その他の枠組みについては、原則として現行の委員会設置会社制度における執行役と同様とする。
意見書: http://www.jacd.jp/news/law/111130_01report.pdf
5.経済同友会 「会社法制の見直しに関する中間試案への意見」(2012年1月30日)
「拙速的に規制強化した結果、非常に煩雑な手続きを企業全体に課すことになれば、適正なガバナンスを構築し、法令を遵守している大多数の企業の負担増となり、むしろ、日本経済が全体として国際競争力を失う可能性も高い」との意見を表明している。
社外取締役の選任の義務付け
「現行法の規律を見直さないものとする。何らかの公的ルールで社外取締役の選任を義務付けるのであれば、株式市場の上場規則で検討するのが妥当」
監査・監督委員会設置会社制度
「制度の設立自体に反対」中間的機関設計を設ける必要はない
社外取締役及び社外監査役に関する規律
現行法の規律を見直さない。「独立社外取締役を日本に根付かせ、真に機能させるためにも、しばらくは現在の要件下での企業の自主的取り組みを基本としつつ、同時並行的に独立社外取締役候補者となる人材の育成や「人材市場」の整備を積極的に進め、1名以上社外取締役がいる企業が、例えば7割~8割となった段階で、まずは上場規則での社外取締役の独立性の強化を検討すべきである。」
意見書の本文ダウンロード:
http://bdti.or.jp/data_library#gallery-7d057feabbf9a3197023e92d628a3ec01a84c3704f1eed83d4889c0690273999
6.アジア・コーポレート・ガバナンス協会(Asian Corporate Governance Association:ACGA)「会社法制の見直しに関する中間試案」に関するACGAの提言(2012年1月30日)
(提言書から抜粋)
社外取締役の独立性について
(1)社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い
当協会は、初めて社外取締役の独立を確保するための会社法の改正を提案している提案A
を支持しますが、更に掘り下げるべきものと思料します。試案において、社外取締役の定
義を、親会社の取締役、役員若しくは従業員、及び/又は、会社の取締役、役員若しくは従
業員の親族を除外するように拡張するとしていることは理にかなっていますが、それでは、
関係会社又は主要な取引先がまだ対象とされていません。当協会としては、それらにっい
ても対象とすべきと考えます。
当協会としては、この機会を利用して、社外取締役制度は、例えばオリンパス株式会社を
取り巻く会計スキャンダルを防ぐことができなかったというような理由から不必要である
という日本のいくつかの組織による主張に反論いたします。当協会の見方では、オリンパ
スの不正、そして、大王製紙のような最近の他の事件は、まさに社外取締役の定義を厳格
にし、経営陣から本当に独立している社外取締役を任命することが何故重要であるかを示
したものと思われます。真に独立した社外取締役が、オリンパスの疑わしい買収や、取引
アドバイザーへの法外な支払いについて、オリンパスの社内の取締役及び経営陣に圧力を
かけるためにタイムリーな行動を起こしていたならば、同社は、現在陥っている問題を回
避していたかも知れません。当協会が、「日本白書」において書いたように、真に独立した
取締役の存在は、「経営陣の自己利益の追求や企業戦略の不十分な執行に対する重要な予防手段」を提供することになります。義務的な独立した社外取締役を置くことに反対するこ
とは、そもそも、経営陣は、自分達だけにアカウンタビリティを負えばいいと主張するこ
とに等しいものです。そうした理念では、信頼できる企業統治制度を作り出すことは不可
能です。
(2)社外取締役等の要件が満たされるべき対象期間の限定
意見募集では、株式会社(又はその子会社)の業務執行取締役若しくは執行役員又は支配
人その他の使用人が、同一の会社に社外取締役又は社外監査役に就任する前に、10年間の「クーリングオフ期間」を設けることを提案しています。当協会は、社外取締役又は社外
監査役は、株式会社と一切の従前の関係があってはならないという現在の要件は、キャリ
アの開始時期に、会社の比較的低い地位にあった者が、数十年後に社外取締役に就任する
ことを禁じることになる等、極端で非生産的な結果につながり得ることにっいて完全に同
意します。他方、人為的な期間の制限を設定することも、誤った結果をもたらす可能性が
あります。生涯を、あるいは相当な期間、会社のために働いた幹部が、10年後に会社に対
する絶対的な忠誠心を失っているでしょうか?恐らく失うことはないでしょう。特に、典
型的な日本企業のような人間関係が密接な組織では忠誠心は失われないでしょう。
当協会は、均衡を取る方法は、社外取締役や社外監査役が、会社及びその現在の経営陣と
「重大な」関係を持たないことを要件とすることであると考えます。すなわち、形式(す
なわち、人為的な期間の制限)よりも、関係の実体に着目すべきです。
社外取締役の最低人数について
1.社外取締役の選任の義務付け
当協会は、金融商品取引法第24条第1項の規定により年次の有価証券報告書を提出しなけ
ればならない会社に、1名以上の社外取締役の選任を義務付けるとするB案を支持します。
当協会は、B案は主として上場会社を対象とすることになるのに対し、A案は、数千の非上
場企業にも及ぶことから、A案よりもB案を支持するものです。(明確化のために付言しま
すと、当協会は、非上場企業のガバナンスが重要ではないと言っているのではありません。
むしろ、この段階においては、上場企業は優先順位を与えられるべきです。)
当協会は、取締役会の独立の基礎を固め、それぞれの社外取締役に過度な負担がかからな
いようにし、取締役会の議論が、取締役全員の意見の理にかなった実質的にバランスを保
つものであるようにするために、少一の真に独立した社外取締役が必要である
と思料します。他の多くの先進国においては、上場会社にとっては、3名の独立した社外取
締役を置くことは最低限の規制上の要件であり、また、大企業の場合、現実には4名以上
を置いている場合が多く見受けられます。
加えて、当協会は、社外、社内を問わず、取締役会のメンバー全員が、法令、東京証券取
引所(TSE)の上場規則、及び、企業統治における最新のベストプラクティス上の忠実義
務及び法的責任を確実に理解するためのトレーニングを受けることを強く推奨します。企
業統治は、静的ではなく、進展するプロセスです。さらに、当協会は、TSEが、上場会社
のコーポレート・ガバナンス報告においてトレーニングに関する方針の内容及び規模並び
にその実績についての詳細な開示を義務付けるように、その規則を改正するよう提案しま
す。世界のほとんどの主要な金融センター及び、多くの新興市場は、取締役のトレーニン
グに関し、ソフトローの指針を策定しています。日本は、未だ策定していない点において
例外です。
第3の役員会制度案について
(1)監査・監督委員会の設置
当協会は、取締役会が経営陣を監督する役割を改善することの重要性については、異議な
く同意します。しかしながら、当協会は、「監査・監督委員会」に関する現在の試案は、こ
の目的には相当不十分であり、ほとんどの日本の上場会社の企業統治の慣行を有意義に改
善することはないと考えます。
当協会は、既存の二つの制度の弱点に対処することはより生産的なアプローチであると考
えます。考えられる出発点は、監査役設置会社が、取締役会の下に、正式な委員会を設置
するための法的根拠を設けることでしょう。そのような会社の多くには既に取締役会の委
員会がありますが、そうした委員会は、適切な法的根拠を欠いており、その行為に関して
委員会の責任を追及することができません。
上記の改正が実施された場合、法制度により、財務報告、内部統制・リスク管理、内部監
査及び外部監査を正式かつ定期的に監督する(すなわち、委員会設置会社の監査委員会の
既存の役割を超えた権限を有する)監査委員会を少なくとも設置することを全上場会社に
義務付けるべきです。構成に関しては、監査委員会は、委員長は独立の社外取締役が務め、
また、委員全員が(3人以上の)独立の社外取締役により構成されることにし、その他の取
締役は、必要に応じ、委員会の会合に招かれることができるようにします。一方、そのよ
うな監査委員会の財務・リスクの監督は、監査役の法的監督機能を補完することになるこ
とが想定されます。後日、会社は、監査役が、監査委員会の業務と事実上重複していると
判断する場合、監査役を廃止する選択肢を有することもできるようにします。
支配の変更に伴う第三者割当て(私募)について
当協会は、公開会社が、引受人に大規模な私募を行い、その結果当該引受人が新しい支配
株主になる場合、株主総会の普通決議を要するというA案を概ね支持します。当協会とし
て追加したい条件は、取引に利害関係を有する関係当事者及び親会社は、投票が禁じられ
るというものです。また、当協会は、上場会社の支配の変更は、50%よりもかなり低いレベ
ルで生じることが多いことから、支配の変更についての法律上の基準を「議決権の過半数」
から議決権の三分の一に引き下げるべきであるという東京証券取引所の意見に同感です。
(しかしながら、株式の三分の一が適切な水準であるかどうかは、貴省が更に研究すべき
ことです。上場会社の支配の変更は、20%以下等もっと低いレベルでも生じ得ます。)
また、そのような支配の変更の状況において、「緊急の場合」(例えば、資金調達が緊急に
必要な場合)に取締役会が株主総会を開催しないことが可能となるように会社が定款を改
正できるようにすることには賛成しません。A案は、3%の議決権を有する株主が、そのよ
うな取締役会の決定に反対し、株主の議決を行うことを要求することができる旨定めてい
ますが、当協会は、原則として、株主は、支配の変更の結果が生じる主要な取引について
は常に議決権が与えられるべきものと考えます。そのような重要な取引が問題となってい
る状況において、上場会社又は公開会社が株主総会を開催する時間がないということには
考え難いものがあります。
「『会社法制見直しに関する中間試案』に関するACGAの提言」(日本語)
http://bdti.or.jp/data_library#gallery-bae44effbafa7d30aabe26f08a7e69543f71b5f3f5bdfb1911ae04f601573236
ACGA Submission to the "Interim Proposal Concerning Revision of Commpanies Act" (English)
http://bdti.or.jp/english/data_library#gallery-6b2d211a36ceb98623e6601c03d3eb20547efb9d59460e6d7a6293fb765fc886
7.実践コーポレートガバナンス研究会(ICGJ) 会社法制の見直しに関する中間試案へのコメント(2012年1月30日)
(主要部分を抜粋)
1.二人以上複数の社外取締役の選任を義務付けるべきである。また対象会社としては監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるもの)とすべきである。
2.社外取締役及び社外監査役に関する規律(独立制の要件)の(1)社外取締役等の関係者の取扱いについては中間試案A 案及びその対象期間の限定については就任する前の10 年間とする案を支持する。さらに、独立性の要件には、東京証券取引所の独立役員の独立性の要件である、「当該会社を主要な取引先とする者若しくはその業務執行者又は当該会社の主要な取引先若しくはその業務執行者」、「当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家又は法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者をいう。)」の2 点を追加すべきである。これらの者に関する対象期間の限定については就任する前5 年間とするのが妥当であろう。
3.監査・監督委員会設置会社制度は不要である
4.監査役の機能に関する「会計監査人の選解任に関する議案等及び報酬等の決定」については中間試案のA 案、すなわち、「監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)及び監査委員会は、会計監査人の選解任に関する議案等及び報酬等の決定権を有するものとする」を支持する。
8.東京証券取引所 「会社法制の見直しに関する中間試案」に対する意見(2012年1月30日)
(主要部分を抜粋)
1 社外取締役の選任の義務付け
「B 案を支持します。」
・ 東証上場会社の97 パーセント以上は社外取締役の不要な監査役会設置会社であり、そうした会社に社外取締役の選任を義務付ければ、全ての上場会社において取締役会における議決権及び経営の妥当性に及ぶ監督権限を通じた実効性の高い監督がなされるようになることが期待されます。
・ 義務付けの対象を有価証券報告書提出会社とすることで、すべての上場会社及び現に多数の株主及び投資家が存在する非上場会社のみに影響を限定することが可能になり、必要な範囲を過不足なくカバーすることができます。
2 監査・監督委員会設置会社制度
「制度の導入を支持します。」
・ 監査・監督委員会は、監査委員会の機能に加えて報酬委員会及び指名委員会の機能の一部を担い、しかも複数の社外取締役によって構成されるので、社外取締役の選任が義務付けられていない現行の監査役会設置会社と比べ、より実効性の高い監督がなされることが期待されます。
・ 監査・監督委員会設置会社には2 名の社外取締役が必要なので、社外取締役の不要な監査役会設置会社から移行する会社が増えれば、社外取締役の増加が期待できます。特に、すべての会社に社外取締役の選任が義務付けられれば、監査役会設置会社には1 名の社外取締役及び2 名の社外監査役の合計3 名の社外者が必要となりますが、監査・監督委員会設置会社では(社外)監査役なしで2 名の社外取締役の合計2 名の社外者がいれば足りますので、相当数の会社が監査・監督委員会設置会社を採用することが期待されます。
3(1) 社外取締役等の要件
「A 案を支持し、かつ、重要な取引先関係者でない者であることを追加することを支持します。」
・ 社外役員には、企業の風土や慣習にとらわれずに外部から取締役会に新たな視点を提供するとともに、株主共同の利益を代弁することが求められると考えます。親会社を含む支配株主の関係者や代表取締役を頂点とする役員・従業員の親族関係者は外形的な公平性に欠け、株主共同の利益を代弁しているとの信頼が得られないため、社外取締役又は社外監査役としては適切でないと考えます。
・ 重要な取引先関係者も同様であり、これを除外しないことはグローバルスタンダードにも反するので、除外する必要があります。
意見書へのリンク:http://www.tse.or.jp/news/09/120130_a.html
9.在日米国商工会議所(ACCJ)「会社法制の見直しに関する中間試案」への意見(2012年1月31日)
(意見書から抜粋)
近年の日本の企業不祥事を鑑みると、株主の利益をさらに保護し、日本企業への国内外投資家の信頼を回復するために、コーポレート・ガバナンスの改革に大胆に取り組むべき適切な時期であるという判断に深く同意する。
試案は社外取締役1名の選任など、積極的な政策を含んでいる。しかしながら、全体的には、試案はコーポレート・ガバナンスの改善と投資家の信頼を回復する目的では、以下の理由から効果がない。
・試案が義務付ける独立した社外取締役は1名(もしくは0名)でしかなく、企業の取締役会の意思決定に実質的な影響を与え、かつ昨今の不祥事に繋がる不正行為を防止するには、法的かつ心理的な観点から不十分である。
・試案は、株式会社の他の株主と実質上利害関係が異なる、当該会社の重要な取引先、もしくは当該会社の親会社の子会社の関係者が社外取締役や社外監査役として就任することを認めている。
・試案は、内部の取締役の自己利益と株主の利害が対立する際に、独立した社外取締役のみに構成される「特別委員会」、もしくは「特別取締役会」で重要な意思決定を行えるよう法制度を設置できていない。
さらに、ACCJは、試案がコーポレート・ガバナンスへの昨今の国民の懸念を払拭するために意義のある変化であるという錯覚を生むことによって、将来のさらなる積極的な変化を妨げていると考える。
ACCJは日本の全ての上場企業1に関わる日本の法令に以下の(a)~(e)の具体的改正を加えることを提言する。
(a) 独立した社外取締役が取締役会の少なくとも二分の一を占めることを義務付けるよう、会社法を改正すること。
(b) グローバル・ベスト・プラクティスに即して、独立した社外取締役と社外監査役が(1)当該株式会社の重要な取引先の従業員やその他関係者でなく、(2)当該会社の親会社の子会社の従業員やその他関係者でないよう義務付けるべく会社法を改正すること。
(c)各株式会社が以下(i)~(iii)を実施するように、会社法および、または日本の金融庁の規則に詳細な規定を加えること。
(i)独立した社外取締役の定義に一致している取締役または取締役候補者がいる場合、それに一致する者を特定する。
(ii)独立していると特定された各取締役または取締役候補者について、独立性を判断する際に会社の取締役会が検討した取引または関係を開示する。
(iii)業務執行取締役に対する選任前の研修および全ての取締役に対する継続的教育に関して、取締役の研修にかかる会社の方針を開示する。
(d)取締役会が会社法第373条と同様に、特定事項に関する意思決定を独立社外取締役のみで構成される「特別取締役会」に法に則って委ねることができるように、会社法を改正すること。
(e)自己利益および利益相反性のおそれが潜在的に高い類型として特定された取締役会決議事項について、少なくとも3名の独立社外取締役のみで構成される「特別取締役会』が利用されない場合、しかるべき善管注意義務および忠実義務の充足に関する立証責任を取締役会に転換するように、会社法を改正すること。
提言のダウンロード:
10.日本監査役協会 会社法の見直しに関する中間試案に対する意見(2012年1月31日)
日本監査役協会の会員である監査役および監査委員からのアンケート調査の解析を参考にして意見をとりまとめたものです。下記より、そのアンケート調査の集計結果もダウンロードできます。
(意見書から一部抜粋)
社外取締役の選任の義務付け
企業統治において執行からの独立性を有する社外取締役の存在は有用である。社外取締役の義務付けを行う場合には、金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなければならない株式会社を対象とすることが妥当である。
ただし、各企業の対応に支障をきたさぬための経過措置が必要である。また、取締役会決議の法的安定性を確保するための措置も講じられるべきである。
監査・監督委員会設置会社制度
意見 企業統治の新たな選択肢を創設することに反対するものではなく、また監査・監督委員会設置会社において、取締役として監査・監督委員に議決権を付与することにより、従来諸外国の投資家を中心に監査役について指摘されてきた「取締役会における議決権」の問題が解消されることは評価できる。ただし、企業統治の機能発揮の観点からは、監査・監督委員会設置会社制度の制度設計にあたっては、試案記載のものに加え以下の二点が必要と考える。
①「監査・監督委員会が、監査・監督委員の中から少なくとも一名の常勤の監査・監督委員を選定する」ことを義務付けること。
② 各監査・監督委員が、独立して業務財産調査権等を行使することができるようにすること。
なお、試案補足説明にある「新たな機関設計として『監査・監督委員会設置会社』を認めるのではなく、監査役が取締役会において議決権を行使することができる旨を定款で定めることができるようにすること」も検討すべきである。
社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い
(ⅰ)社外取締役及び社外監査役(以下あわせて「社外役員」という。)の要件に親会社の関係者でないものを追加すること、及び経営者の近親者でないものであることを追加するA案に賛成である。ただし、親会社の関係者が社外と認められないことに伴う実務への影響が大きいことから、適用に当たっては経過措置が必要である。なお、当該株式会社及びその子会社を除く「親会社の子会社」の関係者については独立性の観点から社外の対象から外すことも検討に値すると考える。
(ⅱ)試案注記にある「重要な取引先の関係者」についても、社外役員の対象外とすることに異論は無い。ただし、対象を明確にするとともに適切な範囲とする必要がある。また、親会社の関係者と同様に経過措置が必要である。
(ⅲ)試案のA案によると、親会社の社外監査役が子会社の監査役を兼務する場合には子会社監査役としては「社外」監査役と認められなくなるが、この場合でもなお子会社の「社外」監査役として扱われることとすべきである。
会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定
監査役(監査役会設置会社においては、監査役会。以下「監査役(会)」という。)及び監査委員会は、会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等についての決定権を有するものとするA案に賛成である。
監査の実効性を確保するための仕組み
試案に基本的に賛成である。ただし、補足説明に掲げられている「監査役の職務を補助すべき使用人に対する監査役の指示の実効性確保に関する事項」等、それらの具体的な内容が必ずしも明らかでないことから、今後、本案の内容を明確にする必要がある。
なお、試案及び補足説明における提案に加えて、監査を支える体制に関する規定の充実・具体化にあたっては、「監査役と内部統制(監査)部門との連携に関する体制」についても、内部統制システムに関する事項に追加すべきである。
会社法制の見直しに関わる主な論点に関するインターネット・アンケート(集計結果)(2012年2月1日)のダウンロード:http://bdti.or.jp/data_library#gallery-58b8a4791deacec5a975bd0293cae9043095f8ec89e4ba6c141b20eb4ffac03e
11.日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク「会社法制の見直しに関する中間試案」に対する意見(2012年1月31日)
(意見書から主要部分を抜粋)
社外取締役の選任の義務付け(中間試案の第1 部の第1・1)
CG ネットは、基本的方向性としてはB 案に賛成するが、社外取締役の員数は取締役の過
半数とすべきであると考える。また、社外取締役の選任を一定範囲の株式会社に強制するの
であれば、その義務付けの人数に拘わらず、併せて、各社外取締役に監督機能の発揮に必要な情報収集権等の個別的権限を法定して権限面での裏付けを与えるとともに、取締役会の監督機関としての位置付けを明確にするべく業務執行と監督の分離を徹底するよう取締役会の権限(専決事項)を見直し、代表取締役への権限移譲の範囲の拡大を行うべきである。加えて、監督機能の実効性を担保するために、社外取締役の選任についての代表取締役らの影響力を低減させるような制度設計も必要である。
社外取締役・社外監査役の要件に関する規律(中間試案の第1 部の第1・3(1)・(2))
中間試案の第1 部の第1・3(1)について、CG ネットはA 案に賛成する。現行法の社外取締
役の要件は経営者からの独立性の点で十分ではないので、兄弟会社の関係者でないことも社外取締役・社外監査役の要件に追加すべきである。また、「重要な取引先の関係者でない」ことについては、「重要な」および「取引先」それぞれの概念、基準の明確性、そして範囲の現実性・妥当性が問題となり得るところ、これらが明確化され、その内容が現実的かつ妥当であるならば、「重要な取引先の関係者でないものであること」も、社外取締役等の要件に追加すべきである。
第1 部の第1・3(2)についても、中間試案の提案内容(対象期間10 年の限定)に賛成であ
る。もっとも、その内容が立法化され、また社外取締役等の要件の見直しが行われた場合で
あっても、かつて当該株式会社で取締役等の業務執行者を経験した者を、10 年経過後とはいえ、あえて社外取締役・社外監査役として選任しようとする場合には、会社側は、当該候補
者の直近10 年間の略歴及びその間は当該候補者が当該株式会社と全く利害関係がなかったこと、並びに、あえて再選任することを相当と考える理由を、株主総会で説明すべき義務を負うことを法定すべきである。
監査・監督委員会設置会社制度(第1 部の第1・2)
CG ネットは、中間試案が、新たなガバナンスモデルとして、監査・監督委員会設置会社
制度を導入することについて積極的に評価するものではない。大規模公開株式会社のガバナンス体制の在り方としては、より鮮明にモニタリング・モデルを志向する方向性が示される
べきであり、今こそまさにその好機であると考える。
意見書へのリンク:http://www.cg-net.jp/news/20120131.html
12. ナオミ フィンク (ジェフリーズ証券会社東京支店 チーフジャパンストラテジスト) (2012年1月31日)
試案第一部・第一・1(社外取締役の選任の義務付け)に関するコメント:
他の案と比べて【A案】が望ましいと考えますが、「1 人以上の社外取締役の選任」を義務
付けるとしても、事業法人の間では「2人未満の社外取締役」との理解が広がる恐れがあり
ます。「二人未満」との理解が一般的になりますと、社外取締役を選任するコーポレート・
ガバナンス効果が大幅に鈍化する確率が高まると思います。中期的目標として、せめて3人
かつ、取締役会の30%を占める比率で、市場参加者の幅広い意見を考慮し「独立性」に関
する原則を公表した上で、「社外」のみならず「独立社外」取締役の選任を義務付けること
が望ましいと思います。
13. 日本CFA協会「会社法制の見直しに関する中間試案」に関する意見 (2012年1月31日)
この意見書の中で、CFA協会は中間試案の主要項目である独立取締役の導入について提言をしています。そして、独立性取締役の機能が十分働く体制を確実に整備するために、取締役に対する適切な教育研修の導入を以下のように提案されています。
「新任取締役を対象にした、事業内容や戦略に留まらず、当該企業が関係する法規制の枠組みを教育するような就任時研修の導入が、最低限必要です。取締役研修が更に充実し、研修に公的資格が与えられるようなレベルにまで達すれば、全ての利害関係者にとって望ましいことです。企業が取締役適任者を見つけるのは簡単ではありませんが、その国で広く認知された取締役資格プログラムが確立していれば、資格取得者の中から適任者を探すことが容易となるはずです。もし当該プログラムが取締役に受け入れられ、投資家や規制当局から推奨されれば、時がたつにつれ、取締役教育が増加し、取締役の果たすべき機能に対する取締役の理解が深まるでしょう。結果として、多くの国で一般的なOBクラブ以外からも取締役を選任することができるようになり、また投資家や規制当局の意向を背景に、資格を持った取締役を選任するインセンティブが働くでしょう。取締役資格の導入は、取締役の倫理的行動を強化し、究極的には投資家の利益になると期待されます。」
CFA協会は、企業統治の観点からも一人以上の独立取締役の導入は最初の一歩であり、重要なのは「理想的には一切の利益相反関係を持たないという意味での独立した取締役の導入である」と考え、独立取締役の要件についても提案している。また、社外取締役の選任に関する案でもB案「有価証券報告書を提出しなければならない株式会社において、一人以上の社外取締役選任を義務付け」が良いとし、企業の規模により投資家に対する法的保護の基準が異なれば、公平の原則に反するから、と述べています。
意見書の本文はデータライブラリーの「日本の法制度-会社法改正」のフォルダにあります。このリンクからもご覧になれます。http://bit.ly/HbG03R
14. 経営法友会 -「会社法制見直しに関する中間試案」に関する意見-1-2012
http://bdti.mastertree.jp/f/v6nu3wh5