在日米国商工会議所(ACCJ)のTSE「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて」へのパブリック・コメント

在日米国商工会議所(ACCJ)から、TSEパブリックコメント案件「証券市場の信頼回復のためのコーポレート・ガバナンスに関する上場制度の見直しについて」に対する意見書をいただきました。

報道資料より

「意見を取りまとめたACCJ対日直接投資委員会のケネス・レブラン委員長は、「コーポレート・ガバナンスの改革に大胆に取り組む必要があると考える東京証券取引所に深く賛同します。今回発表された見直し案も高く評価しますが、さらにより多くの改革が必要だと考えます。株主の信頼を回復するためには、健全なコーポレート・ガバナンスに必要不可欠な要素である、一人体制ではなく複数名の独立役員の確保、独立役員が効率的に機能するための環境整備の実現、そして取締役の研修にかかる会社の方針の開示を含むことを提言します」と述べました。」

意見書の本文からの抜粋

I. 「趣旨」と本見直し案全体について

ACCJは、独立役員について更なる情報開示を求め、独立役員が機能するための環境整備を図るという本見直し案に賛同いたします。しかしながら、最近の不祥事につながった不正行為を防止し、コーポレート・ガバナンスの改善と投資家の信頼の回復を確保するためには、組織的行動、またストラクチャーの両観点から取締役会の決定手段に実質的に影響を与えうるよう、さらなる見直しが必要であると考えます。その理由は以下のとおりです。

● 本見直し案は現在の上場制度である「独立役員1名」を変更していません。従って、一人の独立役員(決議権を持たない監査役も含む)の存在のみが「証券市場の信頼回復」を確保するに十分であるという非現実的な前提に基づいていると考えざるをえません。しかし、実際には、一人の独立役員のみでは十分な情報提供を受けないまま過小評価されやすく、取締役会の実質を変えるほどの影響をもたらす可能性は低いと考えます。
● 本見直し案は内部・執行取締役の自己利益と株主の利害が対立する際に、独立した社外取締役のみに構成される「特別委員会」で重要な意思決定を行えるような手順等を促進していません。
● 「独立役員が機能するための環境整備」を実現するために、本見直し案は強制性がない提案しか織り込まれていません。例えば、本見直し案は上場会社が独立役員に情報を伝達する体制の整備をすることや、東京証券取引所が刊行するハンドブックを独立役員に提供すること等を促しているだけであり、実際の強制力を発揮する手段は織り込まれていません。ACCJは、市場参加者に、コーポレート・ガバナンスを向上させるよう改革が行われたと受け止められるようにするためには、多数の内部取締役についての役員職務に関する知識水準の情報開示を求めることが必要であると考えます。

II. 「独立役員が機能するための環境整備」

ACCJは、「独立役員が機能するための環境整備」を実現するために、本見直し案が、上場会社が独立役員に情報を伝達する体制の整備をすることや東京証券取引所が刊行するハンドブックを独立役員に提供をすることなどを促していることに賛同いたします。しかしながら、本見直し案では、実際の強制力を発揮する手段が盛り込まれておりません。

また、本見直し案は、内部役員に係る知識水準、研修と環境整備に対応をしておりませんので、次のように解釈されかねません。(1)現在、独立役員以外の役員すべては十分に研修を受けていること。(2)情報伝達体制の整備および「役員としての職務・役割の理解向上」を促すことは超少数派である独立役員の場合に限っては必要であるが、圧倒的に過半数を占める内部役員の場合には、必要ではないこと。しかし、本見直し案が指摘する一連の毀損行為事件の不正行為自体は内部役員によるものであった経緯から、大多数を占める内部取締役に係る知識水準と環境整備が非常に重要であることは明らかであるはずです。

従って、上記の課題に対応するために、ACCJは東京証券取引所がすべての上場企業に対して、業務執行取締役に対する選任前の研修および全ての取締役に対する継続的な教育に関して、取締役の研修にかかる会社の方針を開示するよう提言します。

現在の上場制度において、日本企業への国内外投資家の信頼を回復するために、コーポレート・ガバナンスの改革を行うのであれば、この重要な課題への取り組みは不可欠です。

意見書
http://bdti.mastertree.jp/f/7v48gi90

ACCJの報道資料
http://bdti.mastertree.jp/f/p5lfukwn

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