齋藤卓爾准教授 – 日本の社外取締役導入の決定要因や効果についての論文

京都産業大学経済学部齋藤卓爾准教授は日本の社外取締役の決定要因や効果について、素晴らしい論文を多数執筆なさっております。

三本は英語で書かれたものですが、日本語で書かれているものも一本ございます。近々、他の著名な教授方と共同で本をご出版なさるご予定で、この日本語の論文は、その本の中の一章となるそうです。これらの論文の中にはとても興味深い実証分析結果が多数ありますが、その中でも特に印象に残る結論は:

①「取締役会構成の決定要因に関する分析の結果は、経営者に対する監視・助言のために必要な情報を得るのが難しい企業、経営に伴うプライベートベネフィットの小さい企業ほど社外取締役の導入確率が高い、社外取締役の人数が多いというものであった。この結果は、日本では、取締役会構成を事実上経営者が決定しているため、株主ではなく、経営者にとって好ましい取締役会構成が実現されていることを示していると考えられる。」

②「では社外取締役を導入した企業の業績は改善したのであろうか。実証分析の結果は社外取締役を導入した企業の利益率は、同様な特徴を持ちながらも導入しなかった企業よりも有意に改善していることを示していた。この結果は、日本企業による社外取締役の導入は必ずしも株主にとって望ましい形で進んでいる訳ではないが、導入した企業では社外取締役が過少な状態から最適な状態に近づいたため、企業業績が改善したことを示している。」

といったものです。

 

また、齋藤先生は経済産業研究所にも上記の論文の結果を基にしたコラムを寄せております。:

http://www.rieti.go.jp/jp/projects/cgp/16.html

 

英語の論文:

http://bdti.mastertree.jp/f/zm8fgnpe
http://bdti.mastertree.jp/f/p7vquidf

http://bdti.mastertree.jp/f/3odkr2pm

齋藤卓爾先生の研究はAbe-Jungの2004年の研究結果を思い出させます。その実証分析の結果は、社外取締役の導入は経営陣(社長)の交代と比例関係がありますが、その効果は「純粋に社外者」の場合のみに現れる、ということでした。いわゆる「グレー」で「独立性が足りない」社外取締役 (以前に大株主に務めた人、持ち合い関係の会社に務めた人、銀行から派遣された人、など)の場合には、効果が見られませんでした。

Abe-Jung2004年の論文:
http://bdti.mastertree.jp/f/cn9t3s2o

 

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