全国の地方公共団体や独立行政法人国民生活センターが行っている消費生活相談窓口には、年間90万件を超える数の消費生活相談が寄せられています。消費者は、購入した物・サービスについて、多くの不満・苦情を抱え、さらには被害を訴えているのです。しかし、企業に対する損害賠償請求の裁判にまで発展する例はそのうちごくわずかです。一人一人の被害額が少額にとどまるため、勝つか負けるか分からない裁判のために高い弁護士費用と手間暇をかけるという消費者はほとんどいませんでした。こうして、精神的にも経済的にも消費者は裁判から遠ざけられてきました。
しかし、2016年10月1日、消費者裁判手続特例法が施行されました。これは、これまで泣き寝入りを余儀なくされてきた消費者の被害を集団的に回復するための裁判手続を新たに創設し、消費者被害の回復を容易にすることを究極の目的とする、消費者庁所管の法律です。これまでは顕在化していなかった消費者紛争が、裁判という形で、企業の正面玄関をノックすることがあり得るわけですが、実際、この制度の施行により、どの程度のインパクトがあるのでしょうか。