自動車業界は気候変動等持続可能性への影響を分析するのに最適な業界である。グーグルの無人自動車やテスラの電気自動車等、運転方法及び自動車そのものに今後大きな変化が予想される。したがってこれらは自動車会社及びそのバリュエーションや株価に影響を与える可能性が高い。
両社は過去5年間にS&P500を大きくアウトパフォームした。またアップルもこのような自動車会社の一つとなりつつある。出版業界がかつてそうだったように、自動車業界も技術、イノベーション(技術革新)、持続可能性について先進的なハイテク業界にいつか飲み込まれてしまうのではないかとさえ思わせる展開になっている。
業界の進化はその持続可能性を予想する上で大変重要である。投資家は石炭や電力等斜陽化が見込まれる業界に対して批判的である。将来的な企業価値を最大化させたいと考えるためだ。
運輸業界は温室効果ガス排出の主因といえる業界の一つである。同業界の95%のエネルギー消費はエンジンによる燃油消費に由来する。
状況は鉄道やトラック、オートバイ、航空機、船舶等で異なるが、まず自動車について見てみよう。
運輸業界は世界の温室効果ガス排出の約20%を占めている(その他は建築物、発電、農業、土地利用、及び残りの産業活動が含まれる)。そして最も変化が遅い業界と言えるかもしれない。
既存の保有・利用されている自動車・トラックは他の燃料や再生可能エネルギーの使用に大きく切り替わることはないだろう。今後数十年の燃油需要が存在するということだ。しかし自動車会社は消費行動や将来の政策の変化に対応しているのだろうか。
変化を促すのに効果的なのはCAFÉ(Corporate Average Fuel Economy:企業別平均燃費)を含む燃費基準の設定である。これは将来の自動車設計のあり方を変え、燃油消費に直接影響を与える。
米国ではトラックやSUV(Sport Utility Vehicle: スポーツ用多様車)が引き続きフォードやGM等の主要な収益源となっている。実際には大型自動車を求める消費者と長期的な燃費効率を求める消費者の主導権争いに巻き込まれている。
BMWの電気SUV生産拡大のニュースが最近では注目に値する。長らく持続可能性において業界のリーダーと認識されてきた同社だが、これで大きく同業他社を引き離した格好だ。2014年時点でBMWは環境・社会・ガバナンス面で優れた企業を特定するダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスに16年連続でサステナビリティ・リーダーとして取り上げられた。BMWの将来が危ぶまれた20数年前、同社は米国を戦略的に重要な市場と位置付けた。同社の株価は金融危機のあった2008年から247%上昇し、S&P500や他の欧州及びグローバルのベンチマークに対しても大きくアウトパフォームしている。
重要なのはBMWが消費者の需要への対応で成功していることだ。最高の製品を可能な限り安価で提供し、製品において持続可能性を考慮するということである。テスラは受賞歴のある電気自動車を生産することで消費者の需要に応えている。2017年までの電気自動車・バッテリー生産戦略が奏功すれば、市場での好評価を維持できるだろう。
ウォーレン・バフェットは別のバッテリー会社、中国のテスラの競合BYDに投資し、同社の成功に賭けている。
他に見るべき会社は長らく持続可能性に重きを置いているフォードと、日産のリーフ同様ボルトの開発を続けているGMである。しかしこれらは先述の新興勢力を抑え、比類ない技術革新をもたらすだろうか。 どの企業が中国、インド、その他新興市場で製品を提供するだろうか。 どの自動車部品メーカーがより長く乗り続けられる車を求める消費者の拡大を背景に発展を続けられるだろうか。カーシェアリングはこの業界にどのような影響を与えるだろうか。 配車サービスのアプリを提供するUberによるカーネギーメロン大学の無人自動車の専門家の採用は注目すべきトレンドの一つである。
GMが時流の変化への対応が遅れている間に、トヨタはプリウスの成功で業界トップに立ち、今後の自動車業界で一層重要になる品質と持続可能性を重視している。GMはかつて世界最大の企業の一つだったが、トヨタの台頭で企業価値を失いつつある。自動車業界のパフォーマンスは持続可能性と過去20年間の成功と密接に関連し、将来的にもこの傾向は続くだろう。 少なくとも持続可能性は投資家の業種・銘柄選別に反映されるべきである。持続可能性が肝となる全ての業界でフォワード・ルッキングの視点を持つことは継続的に成功する投資家にとってますます重要になるだろう。
原文:http://socialinvesting.about.com/od/Sustainable-Investing-Strategy/fl/The-Future-of-Cars.htm