CGC 原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮

【原則2-6.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

改訂されたコーポレートガバナンス・コードであるが、企業が対応に頭を悩ませるものの最たるものが、これではないだろうか。この原則に関し、「企業年金のアセットオーナーとしての実務対応」(ビジネス法務18巻8号34頁2018年6月21日発行)として、その背景や対応策を寄稿したので、ここにその概要を紹介する。

改訂の背景には、なかなか進まない、企業年金によるスチュワードシップ・コード受入れがある。コードの受入れは難しくとも、せめてスチュワードシップ活動はして欲しいという考えから、CGC改訂がなされたようだ。企業年金の重要性には、今更疑問を差し挟む余地がない。企業年金は従業員の老後の生活資金を賄うためにあり、年金債務は企業の財務諸表を痛ませるし、ときには日本経済全体の問題ともなる。このような問題を小さくするためには、運用成績を上げる必要があるが、投資に魔法はないから、よい銘柄選びと対話による成長の促し以外には良策はない。

事業者や理事の負う法的な受託者責任には限界があり、スチュワードシップ責任に期待が集まっている。責任の果たし方として、潤沢なリソースを持つカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)のような大規模基金ではなくとも、アセットマネージャーから議決権行使結果の報告を受ける等のモニタリング活動はできるだろうという期待である。

厚生労働省は、資産運用管理体制の強化に動き、資産規模100億円以上のDBに資産運用委員会の設置を求めている。
確定給付企業年金制度の主な改正(平成30年4月1日施行)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000182480.html
資産運用委員会の役割の一つに、運用受託機関等の評価がある。運用受託機関等が加入者等の利益を最優先にしたスチュワードシップ活動をとっているか、チェックするのは、評価のうちと考えられる。すると、CGC受入上場企業にとっては、運用受託機関をモニタリングするに足る適切な人事・予算をそろえること、そうしない場合の説明を考えることが、喫緊の課題となろう。

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