「任せるけれど見ている」関係と仕組みはできているか?「どんな株主だって、信頼できない経営者に自分の資金を託したりはしない。したがって、ガバナンスの基本にあるのは相互の信頼である。信頼が崩れた関係は大抵揉め事を起こす。買収者と被買収者の関係も同様である。被買収企業の現経営陣に経営を委託するのであれば、信頼を醸成していることが第一。そのためにはトップ同士が嫌というほど濃いコミュニケーションを確立している必要がある。信頼できないのであれば任せることなどできない。
とはいえ、信頼しているのだから細々した契約などは不要、と考えるのは間違っている。信頼は信頼、契約は契約。いつまでに何をやってほしいのか、それに応じた処遇をどのようにするのか、責任と権限はどのようなものなのか、等々。もし、買収した側が「とにかく売上を上げてほしい」と思っているならば、そのような内容で契約を結ぶ必要がある。業績が悪かったら取締役会を開いて解任すればいいから契約では触れない、などと言っても、非常勤で派遣されるにすぎない日本企業側の取締役が、実際にそれを行うのは不可能に近い。逆に、簡単に辞められても困るので、こうした事々を十分に想定して取り決めておく必要がある」
CFOポジションを的確に押さえているか?
「人材を送り込む時にもいくつか要諦がある。大事なのだが意外に行われていないのが、CFOポジションを押さえること。日本では経理に毛が生えた程度にしか思われていないこのポジションだが、多くの海外企業では経営管理の心臓部であり、ほとんどすべての情報はここに集まってくる。ここを押さえなければ何も始まらない。CFOだからといって、日本流に考えて、経理一筋何十年という人材を送ってはいけない。そういう人材は補佐がいい(その役目は重要である)。」
M&Aが経営者の野心を満たす道具になっていないか?
「中計を達成して、迷経営者から名経営者に脱皮を果たしたい。未達の責任を取るなんてまっぴらだ。花道を飾るために、とにかくトップラインを上げよう。既存事業には頼れないので、ではM&Aだ―――そして死屍累々の失敗案件の山が築かれる。こんな状況になっていたら、どんなにプラットフォームを整えても無駄である。」
全文:
http://diamond.jp/articles/-/71896
BDTIでは、この記事を執筆された首都大学東京社会科学研究科(大学院)教授の松田千恵子氏を講師としてお招きしセミナー『そもそも何のためのコーポレートガバナンス・コード? グローバル化の渦中で実効性のあるボードと経営とは?』を開催致します。当日は、ジェイ・ボンド東短証券代表取締役社長の斎藤聖美氏にも講師としてお話しいただくほか、続くパネル・ディスカッションでは一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授で現在アプリックスIPホールディングス社外監査役も務める野間幹晴氏にも加わっていただき、現実的に発生する困難な課題についてそれぞれの立場からご発言いただきます。
【開催日時】 2015年7月2日(木)13:30 – 16:30 (開場 13:00)
【開催場所】 一橋大学一橋講堂 中会議室1
(東京都千代田区一ツ橋2丁目1番2 学術総合センター内)
http://www.ics.hit-u.ac.jp/jp/direction/index.html
【参加費】 一般・非会員 5000円(税込)
賛助会員 3000円(税込)
【定員】 40名
講師: 斎藤 聖美 氏
ジェイ・ボンド東短証券代表取締役社長、株式会社東芝社外取締役、株式会社かんぽ生命社外取締役、鹿島建設株式会社社外取締役、昭和電工社外監査役
講師: 松田 千恵子 氏
首都大学東京社会科学研究科(大学院)教授、日立化成株式会社社外取締役
株式会社海外交通・都市開発事業支援機構社外取締役、サトーホールディングス株式会社の社外監査役
パネリスト: 野間 幹晴 氏
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 准教授
1997年一橋大学商学部卒業、2002年一橋大学大学院