「本日、法務省より「会社法改正要綱案」(以下「要綱案」という。)が公表された。経済界を含む関係者・有識者による熱心な議論の成果として、一定の結論を得るに至ったことを歓迎したい。
当取引所は、投資家が安心して投資できる環境を提供するために、独立した社外取締役がどの上場会社にも必須であることを、要綱案の審議において一貫して主張してきた。社外取締役を設置する上場会社は既に過半数を超え、ここ1-2年は特に急増しつつあるが、今回の要綱案により、その流れはもはや確実なものになったと思われる。
要綱案には、「金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある」との附帯決議が付されているが、当取引所としては、要綱案の確定を待って、速やかに上場規則の見直しに向けた手続きを進めるとともに、上場会社に対しては、新たに導入される「監査監督委員会設置会社」への移行の検討を含め、独立した社外取締役の確保に努めるよう、この機会にあらためて強く要請することとした。
一方、要綱案では、社外取締役が存在しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明を、会社法令において、求めることとしているが、内外のグローバルな投資家をはじめとする株主・投資家に対しては、この情報を上場会社との対話や議決権行使のために、積極的に活用していただくことを、幅広く呼び掛けてまいりたい。
この要綱案と附帯決議の組合せは、欧州で活用されている、いわゆる「Comply or Explain」(応諾か釈明か)を、我が国流にアレンジして導入するものである。その導入が、上場会社と投資家との間の対話や議決権行使を通じた相互の理解と信頼関係の構築を促進し、上場会社のコーポレート・ガバナンスを向上させるとともに、我が国証券市場の透明性を高め、我が国経済の閉塞感を打開して、我が国企業の投資魅力を回復する、ひとつの重要なきっかけとなることを期待したい。
最後に、今回の要綱案には、当取引所が推進してきたライツ・イシューの促進のための施策も盛り込まれた。
ライツ・イシューは、希薄化を強制されない、既存株主にやさしい資金調達手段であるばかりでなく、昨今大きな問題となっている公募増資に絡むインサイダー取引を回避する手段としても極めて有望である。
当取引所としては、ライツ・イシューが活用されるよう、証券会社、信託銀行、株式会社証券保管振替機構その他の関係者と連携し、残された実務上の環境整備に注力してまいりたい。
平成二十四年八月一日
株式会社東京証券取引所
代表取締役社長 斉藤 惇」
http://www.tse.or.jp/news/09/120801_a.html