NHKドラマ「監査法人」(オリジナル放映は2008年8月頃)をたまたまみました。この番組は会計士の立場から企業の意図的な不正、粉飾をあばく、という筋立てで、ミステリー風あり、社会問題提起風あり、の面白い物語ではあります。しかし、監査法人による監査を、緊急超の検査や税務調査のように外から敵対的な関係で、しかもごく短期間(半日から一日程度)で、膨大な書類の確認をとり、在庫、仕掛品の適正さ、販売会社への現物の売り上げ確認をするというもので、現実とはかけ離れていて、実務的にはファンタジーな内容であります。
現実には、監査法人と監査役はもっと密接に話し合っており、このような形で最後までぎりぎりとやりとりするのは例外でしょう。多くの上場会社では、監査役と会計士は四半期ごとに決算確認をしていますが、それとは別に非公式に何度も会合し、いわば二人三脚で処理やプロセスの弱点などを話し合ってきています。
執行部隊(CEOと経理担当部長)が結託すればほとんどの不祥事ができるなどとしばしば冗談のようにいわれますが、仮にこのような事件があったとしても、会計士と監査役の存在がそれを監督して不祥事がおこらないようにしているわけで、話はドラマほどは簡単ではありません。
BDTI 理事 森田祐理(前アドバンテスト常勤監査役)