法制審議会会社法制部会の中間試案は、5%程度の進展とは言え、日本における コーポレート・ガバナンスの中核的な問題にメスを入れていません。
その問題とは、「経営者の利害関係性が絡む決議につき、どのような実効性・信頼性ある仕組みで経営者を本決議の一番肝心な議論と決定参加から外せるのか」、と言う問題です。本来、30年前の米国で独立社外取締役の導入の原点はこれであり、又、大勢な欧米意外の国も含めて世界中に沢山のな国まで導入が広がったのは、この問題に対応するためでした。
現在、発展した株式市場を持つほとんどの国では、企業価値最大化や市場の信頼維持の観点から、潜在的利害関係性・利益相反性は危険視すべき問題であると認識されています。 逆に、この問題対する担保は殆どないことは、日本の公開企業や資本市場の一番大きい問題です。
従って、国際的な視点及び日本企業の風土・特性の視点から図れば、「一人の社外取締役や(選択肢に過ぎない)監査監督委員会設置会社」うんうんでは、中間試案は話しにもなるません。「白紙に戻るべき」というのは、私の正直な意見です。正当な議論に戻させるには、肝心の部分についての議員立法が急務です。
法律家は、上記のこごが分っているはずだと思います。しかし、法制審議会のメンバーの大半は役員会に参加した経験がない方だから、ゴルフをやったことがない人がswingを教えているみたいな状態です。現実上の問題を十分把握していません。
最小限として、潜在的利害関係性・利益相反性問題が生じ、深刻な紛争に陥りがちなケースについて、望ましい決定が自然に行われる状況を担保しておくことが必要であり、このためには会社法改正が不可欠です。そのために、潜在的利害関係性が生じるケース(指名、報酬は勿論だが、特に支配権に影響与える決議(内部・支配権争い、防衛策等の発動、MBOの価格設定・交渉、特別調査等)) に対応できる委員会・特別取締役会制度の法的インフラが必要です。(オリンパスは、「支配権に影響与える決議」のケースに該当します。)
産業界は依然として「独立社外取締役の義務付けに強く反対している」が、全ての公開会社に適用する効果的な代替案を提案しません。自己採点して「日本の企業統治に問題がない」といいます。「選択肢はいいが、義務付けは嫌だ」と主張します。
私は、この行き詰った議論を問題視し、新しくて建設的な提案が必要と思い、しかりしたロジックがある法改正として何が出来るかを考えました。そして一年前に提案を公表して最近にそれをアップデートしました:
アップデート Powerpointプレゼン資料 (歴史的背景と基本概念の説明)
一年前の詳しい提案と説明、提案された条文 (むしろこれを読んで頂きたいです)–>
この提案は、次の利点があります。
立法しやすい制度 (既存の373条の枠組を使う)
社外取締役を導入するかどうかは、経営陣の選択である (産業界の要望に沿って)
自然に会社と株主にとって望ましい決定がされる確率が高くなる (incentivesによる調整)
説明責任(アカウンタビリティ)という大事な概念・原則を強化する。「社外者が嫌なら、後で詳細に説明しなければならないかも知れない」
日本の賢明で優秀な経営者なら、「独立社外取締役を巧みに使うことによって、株主の信頼を保ちながら、我々の個人リスクを少なくして我々のやりたいことがやりやすくなる」と悟る
裁判になった際、裁判官が正当な判断を行えるための情報開示を強化する(被告になった取締役は情報を握っている。立証責任が転換される時、自分を防衛するため、開示する)
「独立社外取締役」を定義することによって、他の国と波長を合わせて日本で「独立性」の重要性と役割に対する意識を向上させる
投資家にとって分りやすい。市場の透明性・信頼性を向上させる
実効性ある枠組がすべての公開会社に適用される(マニフェストの原点)
皆様、是非ご検討下さい。
ベネシュ ニコラス