東証が「資本コストや株価を意識した経営」(いわゆるP/B引き上げ)を要請してから1年経過しました。プライム市場およびスタンダード市場上場会社は対応策を開示するよう要請されています。3月末時点で開示したプライム市場上場会社は半数超の885社です。3月決算会社が本格化するともっと多くの会社が開示することになります。最近の開示では、東証が開示資料の好事例を公表した成果もあって、資本コストに言及したら、ROEを分解して目標値を示す会社も出てきました。
2年前にも東証はプライム市場などの上場基準に適合できない経過措置適用会社に対して、対策の開示を要請しました。経過措置適用会社の課題は流通時価総額が上場基準(プライム市場の場合は100億円)に適合しないため、株価を上昇させることでした。その対策のための開示資料の多くが、売上高増加および自己株式買い戻しによるEPS増加に加えて、P/Eの拡大というものでした。EPS増加にしても前提条件に依存するので不確定要素が多いのですが、P/Eにおいては経営者がコントロールできるものではないので、とても信頼性が低いものでした。それゆえか、多くの経過措置適用会社は上場基準を維持できずにプライム市場からスタンダード市場に移行していきました。