メトリカル:ROEおよびROA上昇がバリュエーション上昇のキーだが、バリュエーションが低い会社にとってそれは容易ではなかった

過去1年間にどのような企業の株価評価が上昇したかを検証したいと考え、比較可能なMetrical universeのうち、2022年12月末から2023年12月末の間にトービンのQが上昇した1,755社の特徴を分析しました。下表は、6つのグループごとのトービンQの変化の中央値を示しています。

1,755社全体では、トービンのQは過去1年間に中央値で0.01増加した。トービンQを0.10以上増加させたグループは、過去3年間のROEとROAの平均値を中央値ベースで改善させました。ROEとROAが上昇せず、トービンQの上昇幅が0.1より小さかったグループと比較すると、トービンQが0.10以上上昇したグループは、コーポレート・ガバナンスの総合スコア、Metrical CGスコアが高く、外国人持株比率も若干上昇しました。トービン Q の上昇幅が大きいグループほど、コーポレート・ガバナンスの改善が進んでいることがわかります。また、外国人持株比率も若干上昇していることから、海外投資家は ROE や ROA の改善が進んでいる企業に投資する傾向があることが確認できます。

結局のところ、トービンのQや株価のバリュエーションを上げるためには、ROEやROAの改善が何よりも重要だということです。2023年は東証の要請でP/Bの引き上げに注目が集まりました。結果としては、上場会社全体の株価バリュエーションはそれほど上昇しませんでしたが、株価バリュエーションが上昇した会社は、ROEやROAが改善した会社でした。このことから、2024年の総会や海外投資家からのエンゲージメントの焦点は、収益力(ROA)と株主還元の強化によるROEの向上にあることは間違いないと思われます。

上表右側のプロフィールを見ると、トービンQが上昇したグループの多くは、もともとトービンQが高く、ROEやROAももともと高い会社であったことがわかります。つまり、株価バリュエーションが高く、ROEやROAが高い会社が収益力を高めた結果、株価バリュエーションが高くなっていることがわかります。また、トービンのQが高い会社ほどROEとROAが上昇し、株価バリュエーションが高くなっていることもわかります。もともとトービンQが低い会社は、ROEやROAを高めることができず、株価バリュエーションを高めることができなかったともいえます。トービンQが低い会社には、時価総額の小さい会社が多い。これらの会社のROEとROAは過去1年間横ばいでした。しかし、トービンQの変化が横ばいまたは0.1しか増加していないグループと比較するとこれらの会社のROEとROAは高いので、これらの企業の一部はMBOによって非上場化されると予想されます。

まとめると、2023年にかけて株価バリュエーションを上げた会社にはどのようなものがあるかを考えてみました。

トービンQは過去1年間で中央値ベースで+0.01と、わずかな上昇にとどまりました。トービンQが0.10以上上昇したグループは、過去3年間の平均ROEとROAが上昇しましたが、トービンQが横ばいまたは低下したグループは、ROEとROAが上昇しませんでした。トービンQが0.10以上上昇したグループでは、コーポレート・ガバナンスが相対的に改善し、外国人持株比率がやや上昇傾向を示しました。

結局のところ、ROE や ROA を改善することが、トービン Q や株価のバリュエーションを高める上で何よりも重要であるということです。今回の分析結果からも、ROEとROAの改善が株価バリュエーションの向上に有効であることが改めて確認されました。このことは、2024年のAGMや海外投資家エンゲージメントの焦点は、収益力(ROA)と株主還元の強化によるROEの向上にあることを示唆しています。

また、トービンQが上昇したグループの多くは、もともとトービンQが高く、ROEやROAももともと高い会社であったことがわかります。つまり、株価バリュエーションが高く、ROEやROAが高い会社は、より収益が伸びた結果、株価バリュエーションが上昇したことがわかります。このことは、東証の要請だけですぐにROEやROAを上げることは容易ではないことを裏付けています。

過去1年間でトービンQが低下した企業には、時価総額の小さい企業が多く含まれています。このような会社の一部はMBOによって非上場化されることが予想されます。
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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
akimatsumoto@metrical.co.jp
http://www.metrical.co.jp/jp-home/

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