前月に引き続き、株主総会の話題をします。上場会社にとっては例年この時期には6月末で株主総会も一区切りがついているのですが、今年は状況が異なります。新型コロナウイルス感染症拡大が株主総会にも影響を及ぼしています。決算に伴う監査作業等の遅れにより、本年の3月決算会社の招集通知の発送等の業務に影響が出ています。下表の東京証券取引所がまとめたデータ(下表1参照)によると、昨年に比べて招集通知の早期発送(3週間以上前)ならびに早期ウェブ開示(3週間以上前)に対応できた会社の割合が前年比で低下しています。
ちなみに、東京証券取引所へ回答した2,119社の集計によると、本年の招集通知の発送は株主総会開催日の平均18.4日前に行われ、ウェブサイトへの開示は平均22.2日前(取引所HP)および22.5日前(会社HP)に行われる予定と回答されています(下表2参照)。
加えて、この影響は株主総会の開催日にも影響を及ぼしていて、本年の開催日の集中度が前年比でやや上昇しています。下記図1の通り、本年は6月26日(金)が集中日で東証の調査(4月6日現在)では32.59%が当日に集中しています。本年も多くの株主総会が6月最終週に開催され、とりわけ83%の会社が6月22日(火)から6月26日(金)に開催が集中されている状況が顕著にわかります。
それでも下のグラフを見ると、かつてはほとんどの会社が同じ特定日に株主総会を開催した状況下からは改善してきたことが見て取れます。
今年は決算確定作業スケジュールの遅れにより、株主総会を6月末までに開催できなかった会社があります。株主総会の延期は基準日の変更を伴います。通常は3月末の基準日を後ろ倒しにするのは、会社の側にとっても心理的に抵抗感があるものと見られています。緊急事態宣言が発令されたのは4月7日で、基準日経過後でした。その後金融庁および会計士協会等から対応方法についての意見書が提示されました。基準日前に緊急事態宣言が発令されていたら、もう少し基準日の後ろ倒し、株主総会7月以降の開催に進む会社が増えたのではないかと予想されます。一方で、一旦は6月中に株主総会を開催した場合でも、監査が完了できなかった会社では継続会の開催で対応するところもあります。ただし、その場合には、監査報告に基づく決算書類が整わないまま、取締役の選任議案を決議することになります。何れにしても、本年の株主総会は異例の開催を余儀無くされています。3月決算会社の株主総会の対応状況について、信託協会がまとめて意見書に掲載されておられます(表3参照)。下表3によると、75社が基準日を変更して株主総会の開催を7月以降に延期し、6月開催の会社のうち、132社が継続会開催で対応するとの回答であることがわかります。また、6月中に通常通りの株主総会を開催できた会社2,142社のうち、503社に招集通知発送や株主総会開催日のスケジュールが後ろ倒しになるなどの影響が出たことがわかります。本年の株主総会では新型コロナ感染症拡大の影響による異例対応を考慮して、株主からの顕著な動きもないと見られていて、大きな波乱なく終了しそうです。緊急事態宣言解除になり株式相場が回復する中、コロナ第2波が警戒される中で、今後は企業利益の回復と投資家の対応が注目されます。
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