大和総研常務執行役員 牧野正俊氏が、米国の著名投資家、運用機関のトップ、米国を代表する大手企業のCEO等で構成されたグループが7月に発表したコーポレート・ガバナンスのあり方についての提言書の内容を同社コラムにて紹介しています。
「株主の権利の平等という観点から、議決権種類株式の導入には否定的である。提言書は「議決権種類株式を導入している場合、企業は一定の時限措置等を採ることを検討すべきである」としている。2004年にグーグルが上場した際、創業者の議決権確保のために議決権種類株式が用いられたことがきっかけとなり、その後、IT関連企業が相次いで議決権種類株式を導入した。このような方法は、経営陣による長期的な視点に立った経営を可能にする一方、年金基金や機関投資家からの批判は少なくない。」
「業績ガイダンスについて、提言書は「業績報告にあたっては、自社の戦略上の長期目標の達成状況についての見通しを提示することなども検討すべきである。四半期ベースの業績ガイダンスの発表に固執すべきではない。短期的な業績目標を達成しようとすると、長期的な企業価値を破壊することにもつながりかねない」としている。まさに、昨今のショートターミズム(短期志向)に対する懸念を改めて表明したものである。」
「提言書は、独立取締役の役割の重要性についても強調している。取締役会議長とCEOを同一人が兼任する場合は、独立取締役が取締役会でリーダーシップを発揮するような仕組みにすることを提言するなど、独立取締役に対して、権力が集中するCEOに対するカウンターバランスとしての役目を期待している。」
「経営者報酬について、提言書は「報酬の相当部分を株式とし(場合によっては50%以上)、経営者の受け取る報酬を企業の長期的業績と連動させることを検討すべきである。報酬体系や業績評価方法は、株主に適切に開示すべきである」としている。法外な経営者報酬は、しばしばメディアなどで取り上げられ世間からの非難の対象になっているため、報酬体系の透明性と業績との連動性の重要性を改めて表明したものと言えよう。」
「運用機関に対する提言として、提言書は「運用者は、長期的な価値創造の視点から、十分な時間をかけて議決権行使を検討すべきである。運用者は、議決権行使のプロセスやガイドラインを公開するとともに、運用サイドの考え方を企業に伝え、企業の戦略や方針を理解するため、双方向の積極的なコミュニケーションを図るべきである」と述べている。議決権行使助言会社に依存しすぎることを戒め、運用者が自身のガイドラインに沿って、十分な時間とリソースを投じて、議決権行使を検討することを提言している。」
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