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「【概要】
2014年10月、ケンブリッジ大学と国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)より、「銀行規制改革における安定性と持続可能性の視点 環境リスクはバーゼルⅢで見落とされているのか?」と題した報告書(注1)が発表されて以来、金融システムと持続可能性に関する注目が高まっている。
金融安定理事会(FSB)においても、2015年4月のG20声明(注2)を受けて、気候変動と金融安定に関する検討が行われ、同年10月の議長文書(注3)において、気候変動リスクが金融安定に影響を及ぼし得る新たなリスクとして取り上げられた。さらに同年12月、気候変動に関する情報開示を進めることが重要なリスクの理解に役立つとして、「気候関連財務ディスクロージャー・タスクフォース」がFSBにより設置され、2016年中に検討成果が取りまとめられる予定となっている(注4)。G20のメンバー国である英国・中国・ブラジルなどにおいても、これらの動きに前後して、中央銀行や金融監督機関による気候変動または環境全般に関わるリスクマネジメントや投資活性化に関する取り組みが進展している。
さらに、2015年は、「脱化石燃料投資」が注目を集めた年でもあった。これは、気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出量を一定以下に抑えるためには、将来的に化石燃料の使用を相当程度減らさなければならないことから、化石燃料関連の投資の在り方を見直そうとする動きである。機関投資家を中心に、化石燃料への依存度の高い企業に対するダイベストメント(投資しないこと)の基準を設けたり、あるいは当該企業への働きかけ(エンゲージメント)を強めたりする動きにもつながっている。
一方、わが国においては、金融機関による環境への配慮の必要性についての認識は共有されているものの、異常気象等気候変動の影響が本業に及ぶことを早くから認識している損害保険を例外として、気候変動の金融安定への影響や、脱化石燃料投資に関する議論は高まっているとは言いがたい状況にある。
かかる状況を踏まえ、本調査研究は以下を目的として実施した。
(1)気候変動が金融活動に及ぼし得る影響を金融安定の観点から整理し、理解を深めること
(2)わが国の政府や民間金融機関(銀行)における今後の検討課題を抽出すること
調査は文献調査に加えて、日本政策投資銀行、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、その他の関係者との意見交換も行った。本報告書はそれらを通じて得られた知見を取りまとめたものである。
【目次】
第1章 調査研究の概要
第2章 金融安定と気候変動に関する動向
第3章 脱化石燃料投資とは
第4章 気候変動リスク
第5章 今後の主な検討課題」