日本企業が海外企業を買収するM&A案件が増加しています。キャッシュリッチな企業が資金の運用先を求め、また先細りする国内需要を海外需要で補う狙いがあるようです。世界的には、同一業界内の企業が関わる大型M&Aが目立ち、大きな業界再編が見込まれています。海外投資ファンドによる日本企業の買収意欲も衰えていません。ある日突然、自社がTOBの対象企業となる、それはどの企業も意識・準備しておくべき事態と言えるでしょう。
他方で、買収防衛策を廃止する企業が増えています。理由は、様々のようですが、金商法によっても、大量買付行為に際して適切な判断をするのに必要な情報・時間が確保できる、という見方もあります。しかし、「敵対的買収者が現れた場合にどうすべきか」では、遅くに失し、株主その他のステークホールダーに対しての責任は十分に果たせなく恐れがあります。当然、社内取締役を含む会社マネジメントは備えを十分に行っておく必要があります。しかし、より重要なのは、独立社外取締役の役割です。
コーポレートガバナンス・コードの制定により取締役会の行為基準は変化し、ステューワードシップ・コードの制定により株主としての機関投資家も、過去とはことなる行動様式を示す可能性があります。敵対的買収者と言っても、その性格及び作戦は異なり、対象会社の取るべき行為も、それに応じて差異が出てきます。
本セミナーでは、独立社外取締役が、様々な敵対的買収者に柔軟に対応できるよう、軸となる考え方を提示します。
最初に、TOB手続に詳しい弁護士の石綿学氏が、金商法が定める意見陳述や補充質問について概説します。これらの手続は限られた時間の中で、瞬く間に進行します。事前に何をするべきか、どのような選択肢があるのか、把握しておけば、いざという時に役立ちます。
次に、企業から独立した立場の委員としてTOBについての意見を企業に提供した経験を持つ、弁護士の松山遙氏から、独立性を持った社外取締役がどのような視点を持って株主利益を守るべきか、株価の他にどのような事項(ファンド属性等)を考慮に入れて検討すべきか、についてお話を伺います。
さらに、多くのM&Aを手がけて来たNY州弁護士の渡邊健樹氏から、より一層具体的な対応をお聞きします。すなわち、普段からどのような組織を作って、権限をどう定め、何をしておくべきか。いざその時が到来したら、特に最初の24時間で誰が何にすべきか、利害対立にどう配慮するか、などです。
最後のパネル・ディスカッションでは、上記お三方の他、BDTI代表理事ニコラス・ベネシュも加えて、司会の市川佐知子とともに、より議論を深めます。
【開催日時】 2016年7月11日(月曜日)13:30-16:30(開場13:00)
【開催場所】 一橋大学一橋講堂 中会議室4
(東京都千代田区一ツ橋2丁目1番2 学術総合センター内)
http://www.ics.hit-u.ac.jp/jp/direction/index.html
【参加費】 5,000 円 (税込)(一般、非会員)/ 3,000 円 (税込)(賛助会員)
【定員】 40名
◆ お申し込みは以下のボタンをクリックしてください。
【講師・パネリスト紹介】
講師: 石綿 学 氏
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
国内外のM&A、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応、会社支配争奪戦その他のコーポレート案件、プライベート・エクイティ、危機管理その他会社法や金融規制に関する案件を取り扱う。2004年経済産業省「企業価値研究会」委員、2005年金融審議会金融分科会第一部会公開買付制度等ワーキンググループ専門委員、2007年京都大学法科大学院講師(M&A法制担当)(~現在)、2008年ゼビオ㈱ 社外取締役(~現在)、2008年経済産業省「ESOP検討会」委員、2010年経済産業省「新たなM&Aスキーム等に関するワーキンググループ」委員、2010年金融庁「コーポレートガバナンス連絡会議」メンバー、2011年金融庁「開示制度ワーキンググループ 法制専門研究会」委員、2013年㈱ユナイテッドアローズ 社外取締役(~現在)等歴任。東京大学法学部・シカゴ大学法科大学院(LLM)卒業。ニューヨーク州弁護士
講師:松山 遙 氏
日比谷パーク法律事務所 パートナー弁護士
1995年 東京地方裁判所判事補任官
2000年 弁護士登録 、第二東京弁護士会入会 、日比谷パーク法律事務所入所
2002年 同所パートナー(現在に至る)
2011年 株式会社セゾン情報システムズ 特別委員会 委員(現在に至る)
2012年 株式会社バイテック監査役、フマキラー株式会社 独立委員会 委員(現在に至る)
2013年 株式会社T&Dホールディングス取締役(現在に至る)、小林製薬株式会社 独立委員会 委員(現在に至る)
2014年 三井物産株式会社監査役(現在に至る)、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ取締役(現在に至る)
2015年 株式会社バイテック取締役(現在に至る)
講師:渡邉 健樹 氏
日本産業推進機構パートナー、チーフ・リーガル・オフィサー、創立メンバー
ユーエスマートの法務面での支援を担当。スキャデン・アープス法律事務所ではパートナーとして、グローバル企業・金融機関の数々の企業買収、ファイナンス、コーポレート・ガバナンスその他に関しアドバイスを行った。東急リアル・エステート・インベストメント・マネジメントのコンプライアンス・リスクマネジメント・コミッティーのメンバーを務めた。コロンビア大学ロースクール客員研究員として、企業買収のガバナンス及び訴訟についての論文を執筆(2012年-2014年)した。 早稲田大学法学部、ボストンカレッジ・ロースクール(J.D.)卒業。ニューヨーク州弁護士
パネリスト: ニコラス・ベネシュ
BDTI代表理事
米国スタンフォード大学政治学学士号取得後、米国カリフォルニア大学(UCLA)で法律博士号・経営学修士号を取得。旧J.P.モルガンにて11年 間勤務。米国カリフォルニア州及びニューヨーク州における弁護士資格、ロンドンと東京で証券外務員資格取得。現在、在日米国商工会議所(ACCJ)の理事 兼成長戦略タスクフォース座長を務める。2010年より、法務省と法制審議会会社法部会に対し会社法改正に対して意見を提供している金融庁主催コーポレー トガバナンス連絡会議に所属する。これまでに、在日米国商工会議所理事、同対日直接投資タスクフォース座長、内閣府対日直接投資会 議専門部会の外国人特別委員、株式会社アルプスの取締役、スキャンダル後の株式会社LDH(旧名ライブドア)、株式会社セシールの社外取締役を歴任した。 その他、JTP代表取締役として数多くのM&Aアドバイザリーを務めた経験を有する。2013年より、日本の成長戦略の一環として金融庁主導の コーポレートガバナンス・コードの策定構想を提案し助言を行う。
司会: 市川 佐知子
BDTI理事、田辺総合法律事務所パートナー弁護士
東京大学法学部を卒業後、第一勧業銀行(当時)に入行。弁護士登録後、田辺総合法律事務所において勤務弁護士として稼動し、企業側労働法を専門分野 とする。米国ジョージタウン大学法科大学院で履修後LLMを取得、その後ニューヨーク州弁護士資格を取得する。同事務所に戻り、複数の有価証券報告書虚偽 記載損害賠償事件の被告側代理人を務め、不十分な内部統制が企業に与える甚大な影響と、事件発覚後に必要な取締役会のリーダーシップについて知見を有す る。現在、アンリツ株式会社独立社外取締役を務める。
BDTIについて
役員研修については実施している会社も多いとは言えず、研修内容も会社によって違い、まだまだ役員研修の分野は未発達です。会社役員育成機構(BDTI)の一日役員研修「国際ガバナンス塾」では会社法、金商法、CGコード、財務、ケーススタディなど役員として基本的な知識を身につけるための研修をはじめ、英語版ガバナンス塾のBoot Camp、役員だけでなく現場の方々にも基礎的な会社法やコーポレートガバナンスを理解していただくためのeラーニングなど多様な研修を行っております。