~上場企業が新たに開示した報告書から見たコーポレートガバナンス・コード原則4-14取締役・監査役の研修への取組みの現状~
公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)
2015年9月1日
【調査結果】
調査対象とした66社は、コーポレートガバナンス報告書もしくはガイドラインを早い段階で開示しているという点で、CGコード対象企業の中でもこれに積極的に取り組んでいる企業だという点は評価すべきものがある。しかし、全体としてコンプライ・オア・エクスプレインの取り組みは今後一層の努力が望まれる結果となった。
日本語独特の曖昧な表現を用い、研修内容、対象役員、タイミングなどの研修方針を掲載していない企業が多かった。また、こうした曖昧な表現を英訳した場合、日本語以上に内容が不明瞭となり、海外投資家から内容が不十分と受け取られる可能性がある。
研修に対する取り組みは、自社の方針としてCGコード以前からすでに役員研修を実施していた企業とCGコード適用により新たに検討している企業あるいは特に検討した形跡が見当たらない企業との間で開示情報の質に明らかな差が出た。
CGコードに研修項目が含まれていることの趣旨を真に理解するにいたっていないと判断せざるを得ない記載内容も見られた。例えば、社外取締役しか役員研修を受けない、社外取締役に対して会社の詳細を説明する「オリエンテーション」の実施のみにて「取締役・監査役に対するトレーニングの方針」としている会社もあった。
役員研修についての具体的な対応は積極的に行っているのにそれが開示内容で情報として読み手に伝わらない企業も存在する可能性が推測されるが、情報を開示しても投資家に伝わらなければ意味がなく、その場合は表現や開示の方法に改善が必要であろう。
投資家が最も知りたい項目の一つである、前年度の具体的実施状況、実績を開示した企業は1社のみだった。
調査した企業の中にはCGコードで求められる内容以上に積極的に情報を開示している企業もあり、今後企業間のコーポレートガバナンス報告書もしくはガイドラインの開示状況、開示内容に関する優劣の差がより拡大することが予想される。
【獲得点数上位企業 (30点満点)】
25点
大東建託
23点
ジェイテクト
22点
資生堂
21点
川崎重工業、エーザイ
20点
トヨタ紡織
19点
オムロン、本多通信工業
66社中、英語版のコーポレートガバナンス報告書(又は「コーポレートガバナンス・ガイドライン」)を開示したのは20社のみだった。
【調査概要】
対象企業
6月1日から8月7日までにコーポレートガバナンス報告書を提出している上場企業66社
調査時期
2015年8月
調査方法
各企業のコーポレートガバナンス報告書もしくはガイドラインから原則4-14に関する開示内容を内容の重要度に応じてウェイト付けした11評価項目について分析し、30点を満点として採点。
【ご参考】 コーポレートガバナンス・コード
【ご参考】 コーポレートガバナンス・コード
【原則4-14.取締役・監査役のトレーニング】
新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行うべきであり、取締役会は、こうした対応が適切にとられているか否かを確認すべきである。
補充原則
4-14-1 社外取締役・社外監査役を含む取締役・監査役は、就任の際には、会社の事業・財務・組織等に関する必要な知識を取得し、取締役・監査役に求められる役割と責務(法的責任を含む)を十分に理解する機会を得るべきであり、就任後においても、必要に応じ、これらを継続的に更新する機会を得るべきである。
4-14-2 上場会社は、取締役・監査役に対するトレーニングの方針について開示を行うべきである。
・レポートにおける企業評価は、対象企業によって開示されたコーポレートガバナンス報告書その他の開示資料に基づき実施したもので、対象企業の役員研修について実態調査を行ったものではありません。
・レポートにおける企業評価は、客観性・公平性を担保するためBDTIが独自に策定した採点基準に従って行ったものですが、開示資料に書かれた表現のニュアンスや文章全体から受ける印象などの主観的な判断を全て排除したものではありません。
・レポートは投資判断又は投資方針について助言を行うものではありません。本レポートの利用によりご利用者がいかなる損害を受けた場合であっても、BDTIは一切の損害から免責され、何らの責任も負いません。ご利用にあたってはご注意ください。