「ここでは、取締役会評価(※1)について、どのようなものとなりそうか考えてみたい。求められているのは「分析・評価」と「結果の概要を開示」することだ。海外の事例を見ると、分析・評価は、取締役や業務執行部門への質問票調査や聞き取り調査を行うようである。質問票は、たとえば取締役会の頻度・日時などが適切か、議題の資料・審議時間などは適切か、経営戦略の方向付けを適切にできたかなど多くの事項について“very good”を5点、“very poor”を1点とするなどの方法で数値化するものだ。わが国でも、取締役会評価用の質問票ひな形がいずれ出回るのではないだろうか。
開示事項については、国によって力点の置き方が異なり、次の二つの方法があるようだ(※2)。一つは、評価手法を中心に開示するパターンだ。「誰が」「何を」「どのように評価し」「評価成果物は何か」を開示する。たとえば、「取締役全員が」「取締役会全体の効率性を」「質問票への回答によって評価し」「評価概要レポートを作成した」と開示するものである。評価内容面にまでは踏み込まない。これは、評価システムが適切に設計されていれば、取締役会の自律性が発揮されるだろうと考えられるからだ。カナダの企業は、こうした開示をするようである。カナダ方式では、毎年の開示事項があまり変わらないので、企業側の負担感は小さいだろうが、読んでいてあまり面白いものではない。
もう一つのパターンは、評価内容と改善への取り組みを開示するものである。たとえば、評価の結果、取締役会議題が過多であり審議が不十分になる恐れがあるというのであれば、議題を重要な意思決定事項に絞り込むようにするという内容の開示を行うことになろう。英国はじめ欧州の国々では、このような開示が多いようである。
取締役会評価の質問票にどのような項目を列挙するか各社で異なるところもあるだろうが、コアとなる部分もあるはずだ。聞き取り調査の実施でも、共通しているところはあろう。また、開示の方法や様式はある程度統一されていた方が、利用者にとって便利だ。そこで、こうした分野では、何らかのコンサルティングサービスの利用が検討できる。各社で内製化するよりも安価に利用できるのであれば、わが国においても取締役会評価のサポートをビジネス化できるかもしれない。」
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http://www.dir.co.jp/library/column/20150602_009768.html