「富士山麓に本拠を構えるファナック。突如、株主との対話を重視する方針を打ち出し、SR(シェアホルダー・リレーションズ)部を新設した。4月28日の決算では配当性向を従来の3割から倍増させると発表。”豹変”の背景には、いったい何があったのか。東洋経済編集局記者が稲葉善治社長を直撃した。
–変化の背景に何が?
もともと、秘密主義ではない。だいぶ誤解されているが、単に時間を割くのが惜しかっただけで、配当性向の拡大や社外取締役の増員などは考えていた。ただ、栃木県・壬生の新工場や研究所拡張の計画に時間を取られて、手が回らなかった。社員も少ないために、優先順位の高いものから片付けてきた。現在進行形のものも、たくさんある。
–4年ぶりに本社で開いた4月28日の決算説明会では、「お客さんに会っていたい」と本音も漏らした。実は今も、しょうがないから切り上げて来た。(取引先の)社長が来ていたから……。
「1日は24時間しかない」
お客様との信頼関係を構築するのがいちばん大事であって、フェース・トゥ・フェースで会う必要があると思っている。1日は24時間しかないので、今まではそちらに集中していた。
–国が策定する、「コーポレートガバナンス(企業統治)・コード」が、一連の変化のきっかけか。
社外取締役の増員はそれが大きいが、株主還元は別の話だ。内部留保が(1兆円と)蓄積できており、最悪のことが起きても十分対応できる。これ以上積み増す必要性は薄いので、キャッシュフローがプラスマイナスゼロになるような還元策を考えた。
–潤沢なキャッシュに目をつけ、経営権支配をもくろむ会社が出てくるおそれは?
支配権を取ることが、株主にとってプラスになるのであれば、おやりになればいい。だが、それは考えにくい。半分取るのに3兆円も(現在の時価総額は約6兆円)つぎ込んでどうするのかと思う ・・・」
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http://toyokeizai.net/articles/-/70816