昨年来米国でアクティビスト・ファンドがコーポレート・ガバナンスの主役として影響力を増してきた背景を探り、『日本版スチュワードシップ・コード』の制定により機関投資家による投資先企業との建設的な「目的を持った対話(エンゲージメント)」が期待される日本における、今後の投資家と日本企業との対話と、企業のコーポレート・ガバナンスのあり方について考えるセミナーを7月10日(木)に開催します。
コーポレート・ガバナンス強化のための施策として金融庁が検討していた『日本版スチュワードシップ・コード』が本年2月26日に正式に決まり、機関投資家は、受託者責任を果たすための方針・利益相反管理の方針等の公表や投資先企業のモニタリングなどが求められます。投資先企業との建設的な「目的を持った対話(エンゲージメント)」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努め、投資先企業の持続的成長に資することが期待されています。
一方米国では、昨年来アクティビスト・ヘッジファンドがコーポレート・ガバナンスの主役として影響力を増すという大きなうねりが続いています。アップル社に対する株主還元強化、P&G社やサンドリッジ・エナジー社のCEO辞任、マイクロソフト社の取締役受入れ表明など、企業に対するアクティビスト・ファンドの要求が増加し、これらの要求が実際に企業側に受入れられる事例も増加しています。こうした背景には、①アクティビスト・ファンドによるプレッシャーが企業価値向上に資すると思われるケースが増えたことに加え、②メインストリームの大手機関投資家によるエンゲージメントの強化により企業価値向上に資すると思われるアクティビストの要求に大手機関投資家が歩調を合わせる動きが出てきていることがあります。日本においてもスチュワードシップ・コードが効力を発揮することでこうした現象が現実のものとなる可能性も出てきました。
今回のセミナーでは、こうした投資家が企業の外部からコーポレート・ガバナンス機能を発揮する中で、企業側がより主体的に自ら取るべき経営体制とはどのようなものであるべきか、海外の事例を検証しながら今後の企業の経営体制、コーポレート・ガバナンス体制の在り方について考察いたします。
最初に、みずほ証券経営調査部上級研究員の田村俊夫氏より、昨年来米国でみられるアクティビスト・ファンドによるコーポレート・ガバナンスの動きと、これに対する米国企業の受け止め方について、具体例を交えながらご説明いただきます。続いて、これまで長年国内外投資家とのコミュニケーションをご担当されていた元資生堂IR部株式グループリーダーの山崎直実氏から、ご経験に基づく投資家コミュニケーションの在り方、今後予想される方向性についてお話しいただきます。
パネル・ディスカッションでは、金融庁企業開示課長の油布志行氏、ダルトン・アドバイザリー代表取締役の清水雄也氏も交えて、企業の持続的成長と価値向上のために望まれるコーポレート・ガバナンスのあり方について、企業と投資家の関係性における今後の課題と対応について議論を展開する予定です。
本セミナーは、投資家によるガバナンスの世界的な動きと、日本企業としての対応について整理していただく機会となります。IRのご担当者に実務上役立つ情報をお届けするのみならず、ガバナンス推進の観点からは取締役会のメンバー・担当者の方々にこそ、ご参加頂きたいセミナーです。
【開催日時】 2014年7月10日(木)15:00-17:30 (開場 14:30)
【開催場所】 ホワイト&ケース法律事務所
(東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館26階)
http://bit.ly/1iBdOqm
【参加費】 5,000 円 (税込)(一般、非会員) / 3,000 円 (税込)(賛助会員)
オンライン登録はこちらから:
【定員】 50名
【講師紹介】
基調講演: 田村 俊夫 氏
みずほ証券株式会社経営調査部上級研究員
一橋大学大学院商学研究科客員教授
1986年東京大学法学部卒業、日本興業銀行入行。1989年ハーバードロースクール修士課程修了。ニューヨーク州弁護士登録。M&A、敵対的買収防衛を専門とし、国際金融公社(IFC)投融資担当官、みずほ証券アドバイザリー第1グループ部長、投資銀行第7部長、プライマリー戦略室長等を経て現職。中央大学専門職大学院国際会計研究科客員教授、一橋大学商学部客員教授を歴任し、現在、一橋大学大学院商学研究科客員教授(M&A講座担当)を兼職。著書『MBAのためのM&A』(有斐閣)
基調講演: 山崎 直実 氏
SR/ESG/コーポレートガバナンス コンサルタント (元資生堂IR部株式グループリーダー)
1985年資生堂入社。2003年からコーポレート・ガバナンス、情報開示、株主総会・株主対応業務を統括。2006年より国内外機関投資家や議決権行使助言会社、SRI調査機関、アセットオーナーとの対話を重ね、社外役員の独立性の詳細開示、役員報酬個人別開示、招集通知の発送前WEB掲載、非財務情報の開示、統合報告書化など、ガバナンスやESGに関するコミュニケーションの先駆的取り組みを推進。2014年3月資生堂を退職し独立。横浜国立大学経済学部卒、慶応義塾大学大学院修士課程修了(政策メディア)。経産省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」メンバー、企業報告ラボ「コーポレートガバナンスの開示の在り方分科会」メンバー。
パネリスト: 油布 志行 (ゆふ もとゆき)氏
金融庁企業開示課長
1989年大蔵省入省。2004年~2008年、OECD(経済開発協力機構)に派遣され、国際公務員として勤務(プリンシプル・アドミニストレーター)。「OECDコーポレートガバナンス原則」を所管する部局において、アジア新興市場国等を対象に、ガバナンス改善に向けた啓発・支援プロジェクトを担当。2012年、金融庁総合政策室長。内閣官房参事官(日本経済再生総合事務局)を兼任し、いわゆる「三本目の矢」(成長戦略)の策定作業に参画。NISAの導入を担当した他、GPIFの見直し作業を開始。2013年~現在、金融庁企業開示課長。企業開示・会計制度等を担当しつつ、「日本版スチュワードシップコード」の策定にあたり、有識者会議の事務局を務める。東京大学法学部卒業、コロンビア大学MIA(国際関係論修士)。
パネリスト: 清水 雄也 氏
ダルトン・アドバイザリー代表取締役
慶應義塾大学経済学部卒業、ロンドン・ビジネス・スクール修士(ファイナンス専攻)。株式会社ジャーミン・キャピタル 、あすかアセットマネジメント、ムーアストラテジックバリューパートナーズ、ゴールドマン・サックス証券会社東京支店にて、企業価値評価業務及びアナリスト業務全般を経験。ダルトン・インベストメンツグループに2007年10月参画。運用助言会社であるダルトン・アドバイザリーにて2009年5月より現職。ダルトン・インベストメンツLLC の日本株式の投資戦略に関する助言活動、リサーチ活動、および企業との対話等の業務を執行。
司会:ニコラス・ベネシュ
BDTI代表理事
米国スタンフォード大学政治学学士号取得後、米国カリフォルニア大学(UCLA)で法律博士号・経営学修士号を取得。旧J.P.モルガンにて11年間勤務。米国カリフォルニア州及びニューヨーク州における弁護士資格、ロンドンと東京で証券外務員資格取得。現在、在日米国商工会議所(ACCJ)の理事兼成長戦略タスクフォース座長を務める。2010年より、法務省と法制審議会会社法部会に対し会社法改正に対して意見を提供している金融庁主催コーポレート・ガバナンス連絡会議に所属する。これまでに、在日米国商工会議所理事、同対日直接投資タスクフォース座長、内閣府対日直接投資会 議専門部会の外国人特別委員、株式会社アルプスの取締役、スキャンダル後の株式会社LDH(旧名ライブドア)、株式会社セシールの社外取締役を歴任した。