Entry by Franz Waldenberger, ドイツ、ミュンヘン大学教授 (* 3月7日の経団連会館での講演をもとに鈴木与施子の協力を得て、まとめた資料です。マリーです。図、数字などが入っているプレゼン資料全文は以下のリンクから登録ユーザーはダウンロードできます。)
日本のグローバル人事制度のありかたについて、今の状況をまず述べたい。終身雇用を前提として内部昇進をさせるという内部労働市場の構造は日本企業の効率的なグローバル化を阻んでいると考えている。グローバル人材というのはグローバルタレントプールから作るというのは当然であるはず。従って採用・開発される人材を国籍と関係なく預かる必要がある。
【課題意識 グローバル化に遅れている日本企業】
日本の世界での輸出シェアは4%、対外直接投資残高のシェアも4%と20 年で半減している。これは、日本企業が世界の成長を半分しか受け取れなかったと言える。さらに日本の純対外資産は世界一だが、その一部しか企業資本に投下されておらず、また研究開発費の対GDP比率、グローバル特許出願件数、日本の教育レベル、技術力は先進国でもトップクラス、自己資本比率や流動性の指標からみても優位な立場であるのに、それが最大限に活かされていない。
日本の人口が減り、労働力と国内市需要はますます縮小します。それに対応するためにグローバル化しか道はない。* 3月7日の経団連会館での講演をもとに鈴木与施子の協力を得て、まとめた資料です。
【原因を探る】
多くの日本人が「グローバル化の遅れは日本の文化と関係する」と思い込んでいるのではないだろうか?
まず「言葉の問題」だが、これは必要性があれば学べる、そして「日本文化の特性」と言ってもどんな国にも独自の文化があり、言葉とともにその壁を乗り越えビジネスをしている。
冒頭のように、日本のグローバル化を阻む主な原因は内部労働市場にあるので
はないだろうか?
高度経済成長期に定着した、日本独自の構造が長い間浸透し、それが内向きのホームバイアスをもたらしている。それを変えなければ、ますますグローバル化は遅れをとる。多くの日本企業は、トップまでのキャリアパスは 終身雇用、つまり内部昇進を前提としている。だがドイツにおいては、トップマネジメントの半数ほどはキャリア中、一回以上転職をする。日本では中途採用者の賃金は、新卒採用での従業員より同じレベルの仕事でも30%低いと推定される。外からの雇用の不当な評価、また同時に優秀な従業員を外にださない排他的な人事制度は未発達な外部労働市場と表裏一体の関係にある。
海外勤務ということが必ずしもプラス評価されない。そんな環境では、優秀なグローバルタレントにとって日本企業の魅力は低い。国内を中心とし、海外でのキャリアが評価されなければ、当然、国内中心の内向な姿勢となり、海外駐在となっても現地スタッフの信認も得にくく、結果的に知識移転も非効率となり、シナジーが発揮できない。
【では、どうすべきか】
どんな問題に対しても三つの基本的なアプローチがある。
(1)あきらめる。
(2)受け身の姿勢で、フランチャイズや委託生産、海外子会社という形でビジネスだけを国際化し、組織のグローバル化は避ける。
(3)乗り越えるという姿勢で、内部労働市場をオープンにし、国内・海外問わず平等な人事評価、昇進機会を提供する。すなわち組織のグローバル化を図る。
(3)の姿勢においては、同時にホームバイアスの克服、グローバル組織統合、グローバルマインドセットの育成を達成することが目標となる。その実現においては、英語の共通語化、取締役会に外国人をいれるなどの経営陣の強いコミットメントが必要である。さらに採用プロセスを根本的に変え、目指す人材は頭のいい人だけではなく、英語ができる、海外で留学した、グローバルキャリアに強い関心を持っているということを採用条件にしなければならない。
会社と従業員は終身雇用を前提とせず、従来の運命共同体ではなく、WIN-WIN の
関係を築くことが必要である。会社は必要な人材を適切に見極め評価、従業員
は自らのキャリアのオーナになることが求められる。
【ポテンシャルを世界へ】
いままで培い、継続してきた制度を変えることは容易ではないだろう。これは、単に企業制度を変えることではなく、文化革命に近いことである。ここまで人事部門のグローバル化が必要ということを述べてきたが、人事部はグローバル化が一番遅れている部門という印象だ。すでに動き出し、着々と世界に可能性を広げている日本企業もある。グローバル化に向かい内部労働市場を変えることは女性や高齢者の雇用機会の改善にもつながる。ぜひ日本が持つ可能性を世界へ広げて頂きたいと思う。
本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、「顧客・受益者」(最終受益者を含む。以下同じ。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。
本コードは、機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」として当該スチュワードシップ責任を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めるものである。本コードに沿って、機関投資家が適切にスチュワードシップ責任を果たすことは、経済全体の成長にもつながるものである。
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http://bit.ly/1hq3ZMY
(Franz Waldenbergerから依頼を受けて投稿)