BDTI代表理事の大杉謙一(中央大学法科学院教授)が、日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパーで、コーポレート・ガバナンスの概念の整理とモニタリング・モデルについての研究をまとめましたのでご紹介します。
コーポレート・ガバナンスと日本経済
~ モニタリング・モデル、金融危機、日本的経営 ~ 大杉 謙一
【要旨】
本稿は、コーポレート・ガバナンスの概念を整理するとともに、特にモニタリング・モデル(取締役会を監督機関と位置付け、社外取締役に監督機能を担わせる実務)が日本企業の業績不振を改善し不祥事を防止することができるのかを検討するものである。また、2008年秋以降に特に深刻化した世界金融危機を取り上げて、これが提起した金融機関のガバナンスという問題についても、最近の議論・国際ルールの発展を踏まえて検討する。
米英独では、いずれも企業の不祥事を発端としてモニタリング・モデルが導入され、制定法ではなく提言のかたちで行動規範がまとめられた点、形式要件だけでなく同モデルを採用すべき理由(目的)が文書化・共有されたという点が共通している。わが国では企業の業績不振が主要な問題であるが、モニタリング・モデルは万能ではないものの、この問題についての1つの解決策を提示できる可能性がある。
金融機関は民間の営利団体であるが、破綻すれば預金者・納税者に負担を生じさせ、金融システムの機能不全を引き起こす可能性があるという特殊性がある。金融機関は株主だけのものというべきではなく、その役職員はより広いステークホルダーの利益を促進することが求められる。近時の国際ルールは、伝統的な金融規制に加えて、監督当局によるガバナンスの監督についても、ソフトローによる注目すべき発展を示している。
レポートの全文は下記リンクからダウンロードできます。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/13-J-06.pdf