全般的にはSG(社会・企業統治)への取り組み強化が望まれる (野村)

「イタリアの独立調査会社である ECPI 社の算出しているESG(環境、社会、企業統治)スコアを、同社が用いている8 つのセクター別にみると、日本、北米、欧州3 地域平均ではUTILITIES のスコアが最も高かった。これは公共性の高い企業が相対的に多く属し、環境や社会に対する配慮も進んでいる企業が多いためと推察される。一方、最も低いセクターはFINANCIAL であった。近年発生した金融不祥事などが反映されていると思われる。

地域別では欧州企業のESG スコアが総じて高く、北米企業は低い

日本、北米、欧州 3 地域のESG スコアの平均値を見ると、欧州企業の平均が他の地域に比べ高く、北米企業が低かった。これはセクター別に見てもほぼ同じである。また、スコアのばらつきを示す標準偏差を見ると、ESG スコア、E(環境)スコアは欧州企業で高いセクターが多かったが、SG(社会・企業統治)に関しては北米企業で高いセクターが多かった。

日本企業ではSG への取り組みにさらに力を注ぐことが望まれる

日本を見ると、PHARMA & CHEMICAL のESG スコアは3 地域の中で最も高い。ESG スコアの内訳であるE、SG スコアとも最も高く、環境への配慮やガバナンス体制を整備する企業の相対的に多い同セクターのESG に対する評価は国際的にも高いことが分かる。全般的に見ると、(1)ESG スコアは3地域の平均に比べやや低く、(2)内訳をみるとE スコアは3 地域平均に比べ高いものの、SG スコアは低い、さらに、(3)標準偏差を見ると3 地域の中で最
も低いセクターが多い、などの特徴が見られた。これら結果から考えると、日本企業はSG に対する取り組みをさらに高めることが望まれる。投資家などからの日本企業への指摘なども併せて考えると、コーポレート・ガバナンス機能の見直し、強化により、より高い水準に達する必要があると考える。

銘柄選別ではアナリストレーティングとESG スコアの併用も必要

日本企業を対象に、野村のアナリストレーティングと ESG スコアと関係を見ると、いわゆるESG の要因はあまり考慮されていないように見える。しかし、昨今の企業不祥事に見られたように、ESG に関する情報が株主価値に大きな影響を与えることもまた確かである。よって、両者の情報を併用していくことが銘柄選別の上では必要と考える。」

リサーチアナリスト
制度調査
西山 賢吾 シニアストラテジスト- NSC
kengo.nishiyama@nomura.com

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