「日本取締役協会は、東証1部上場企業のコーポレート・ガバナンスを計る指標として、社外取締役・独立取締役*1の導入実態の調査を行いました。
この調査は、日本の上場企業のコーポレート・ガバナンス体制整備への努力と過程を、特に社外取締役(独立取締役)の観点から定点観測を行い、国内外投資家や企業経営に関わる人たちの資料とすることを目的に2004年から行っています。調査対象として、東京証券取引所が公表している、コーポレート・ガバナンス報告書のデータから、東証1部上場企業について集計しました。
今年の調査では、日本の上場企業の社外取締役・独立取締役数は増加傾向にはあるものの、コーポレート・ガバナンスの定着には十分とは言えない、前年と比べて微増にとどまるという結果となりました。
当協会・独立取締役委員会・冨山和彦*2委員長は、「昨年来、オリンパス事件、大王製紙事件と、今は本当に21世紀かと思わせるようなコーポレート・ガバナンスに関わるスキャンダルが続発した。そうした中、我が国の上場企業における外部取締役の設置状況、取り分け独立取締役のそれは、国際的にみて極めて低い水準(37.5%)に留まっていることが、この調査で改めて明らかとなった。しかもその増加ペースは、年、数パーセントずつという、非常に遅い歩みと言わざるを得ない状況だ。これは上場企業における独立取締役の設置が、実質的に義務化されつつある世界の流れと比較して、かなり異様な光景である。
日本企業の多くが、成長性と収益性の両面において、欧米企業や新興国企業の後塵を拝するようになって久しい。日本企業の技術力、現場力に対する世界的な評価が、今日においてもけっして低くないことと併せ考えると、むしろ企業の上部構造、すなわちガバナンス構造の側に大きな問題があることは明白である。
かかる状況において、コーポレート・ガバナンス改革は、まさに待ったなしであり、日本の経済界は、真正面からこの課題に取り組むべき時が来ている。改革のコアとなるべき独立取締役制度の義務化について、現在進行中の会社法改正に関わる答申案は、慎重な姿勢となる見込みだが、証券取引所規則などのソフト・ロー(自主規制)アプローチも含めて、実質的な義務化が進められることを強く期待したい。」とコメントしています。」
調査結果をダウンロード (ファイル名にクリック)
*1: 社外取締役よりも、独立性の高い非執行取締役。詳しくは、調査本文参照
*2:株式会社 経営共創基盤 代表取締役CEO
「※参考資料
日本企業がめざすべきコーポレート・ガバナンスについての意見書(2012年)
会社法制改正中間試案に対する意見書(2012年)
取締役会規則における独立取締役の選任基準モデル(2011年)
独立取締役(社外取締役)制度に関する中間提言(2009年)
独立取締役コード(2005年)
委員会設置会社リスト(上場企業)2012年7月現在 」