航空機数は今後20年でアジアを中心に倍増するとみられている。
この事実は持続可能性とどのように関係があるだろうか。例えば国連グローバル・コンパクト向けに行なったボーイングのケーススタディを取り上げてみよう。過去5年でS&P500が108%上昇した一方で、ボーイングは134%上昇した。背景には業務効率化による財務面の改善がある。
10年前には航空機購入の決め手はスピードだった。しかし現在は燃費効率であり、燃料から発生する温室効果ガスと費用の最小化である。航空業界の燃料コストは2013年に2,140億ドルと推定され、10年前の500億ドル以下から大幅に増大した。
燃料コストが引き金となり、ボーイングは将来の収益性確保のために低燃費航空機製造に成長機会を見出した。2013年初の4,373機の受注の中で、799機は787型、914機が737MAX型でそれぞれ低燃費の機体である。3,443機の受注を延期した2010年以来受注残を27%増やし、同社の低燃費設計は増収に大きく貢献した。例えば787型は市場導入から最速の受注増を記録した。
同社は低燃費機体需要に見事に応え、業界内でも安定的なポジションを築いていることが最近の欧州での航空ショーでも確認できた。ボーイングとエアバスはそのショーだけで1,000億ドル以上の受注を獲得した。
20%程度の燃費向上が見込まれている787型、737MAX型等低燃費機の拡大に加え、現存する87%の航空機が2032年までに廃車になると予想されている。ボーイング製品が航空業界の顧客飛行距離当たりでの温室効果ガス削減に貢献することになる。
ボーイングは燃料コストが最大で費用総額の40%を占めると試算し、低燃費航空機は航空会社、乗客、環境にとって有益である。ボーイングは持続可能性と事業戦略を統合している。低燃費航空機の導入は、新技術開発、部品調達、リスクマネジメントといった過程を含めトップダウンで進められた。
予想されるシナリオ
持続可能性に根差した成長
企業は分割しないかもしれないが、現在及び将来の持続可能性起源の売上成長率を計算することが肝要である。
まず2013年に納品した306機のうち、約20%の64機が低燃費モデルである。ボーイングは今後20年で35,280機の需要を見込んでおり、そのうち41%が低燃費モデルとなる見込みだ。すなわち将来的には低燃費モデルが全製品に占める割合を倍増させなければならない。
例えば2012年にボーイングは737MAX型の受注を649機から1,000機に増やす目標を持っていた。結局現在ボーイングは1,400機を受注しており、低燃費モデルの受注スピードが比較的早いことを示している。消費者が割安なフライト、規制当局がより厳しい環境規制、航空会社がより低燃費を求めることを背景に、ボーイングは同モデルで着実にシェアを伸ばしている。
低燃費モデルの増収に加え、2012年後半時点で約50%が新興国からの受注である。アジアからの注文が受注高の36%を占める。温室効果ガスの削減に加えて低コストフライトの需要増がボーイングのアジアからの需要をさらに押し上げるだろう。
2005年末には低燃費航空機の受注残(2,020億ドル)に占める割合は28.7%(580億ドル)で、787型機の成功によるものだった。7年後の2013年6月には4,000億ドルの受注残の過半数を占めるに至った。受注残全体の伸びの4倍のスピードで低燃費航空機の受注が増えたということである。航空機が納入まで時間を要し、注文の取り消しを考慮しても、消費者の低コストフライトの需要を背景に、ボーイングの成長は続くだろう。なぜなら航空各社は低燃費航空機により将来の増収増益・温室効果ガス削減を達成しようとするためである。
運行段階で航空機のライフサイクルの大半の温室効果ガスが発生することを考えると、低燃費航空機は燃料コスト削減とともに航空各社にとって大変重要である。ボーイングのエンジニアは環境指標として以下を考慮している。
エネルギー消費削減
温室効果ガス削減
水使用削減
有害物質発生削減
騒音防止
再生可能素材の使用促進
ボーイングが今後も燃料コストの上昇・燃料不足の中で競争優位を確保できる見通しで、投資妙味があると考えられる。より航空機由来の温室効果ガス削減についての研究は必要だろうが、ボーイングは経済成長とともにいかに持続可能性を達成するかを考える上で良いケーススタディである。
(この記事は Value Driver Model projectにおけるケーススタディを参考にしている。)