[2014/04/30] 「安倍晋三政権が「企業のコンプライアンスや株主の利益を守るため」として成長戦略にも盛り込んだ「社外取締役の設置」だが、それは役人の新たな天下り先として、シロアリ官僚たちの巣窟となりつつある。
安倍政権下で進む官僚の天下りラッシュの実態を、消費増税に苦しむ国民は誰も知らされていない。
政府は成長戦略の一環で会社法を改正し、上場企業に「社外取締役」制度の導入義務化に動いている。いうことを聞かなければペナルティもある。トヨタ、キヤノン、新日鐵住金など名だたる企業がやむを得ずポストをつくると、待ってましたとばかりに高級官僚たちがその役員の椅子に座り、“華麗な転身”をはかっているのだ。
本誌は東証一部上場企業(1813社)すべての有価証券報告書をもとに、社外取締役、社外監査役や常勤役員の中に中央官庁、日銀、裁判所出身者が何人いるかを徹底調査した。するとなんと667人も天下りしているという事実が判明した。
省庁別に見ると、原発事故の責任にフタをして再稼働に走る経済産業省のOB35人を筆頭に、消費増税の仕掛け人である財務省・国税のOBが32人、大阪地検特捜部の証拠改竄事件など不祥事続きの法務省・検察OBの23人がトップスリーだ。
次に米中韓との関係悪化という外交大失敗を招いた外務省OB20人、デフレを長期化させた金融政策失敗の元凶である日銀OBが16人と続く。国民の生命、財産を脅かし、信頼を裏切った度合いが大きい役所ほど天下りが跋扈しているというのはブラックジョークにもほどがある。このほか、393人の「社外監査役」には、財務省・国税庁OB(183人)、法務・検察OB(64人)などがズラリ並んでいた。
兼職も目立つ。北畑隆生・元経産事務次官は学校法人三田学園理事長という“本業”とは別に、神戸製鋼所と丸紅の社外取締役として2社から推定約2300万円の報酬を受けている。国税庁次長、国土交通審議官などを歴任した舩橋晴雄氏のように5社の社外取締役や社外監査役を掛け持ちする“売れっ子”もいる(報酬合計・推定約3343万円)。
社外取締役の仕事は年間10数回ほど開かれる取締役会に出席して経営に意見を述べることだ。非常勤で複数の企業を兼務して高額報酬をもらえるのだから庶民感覚からは考えられない恵まれた仕事だ。
福田政権当時、国家公務員制度改革推進本部事務局審議官として霞が関の激しい反発を受けながら天下り規制など公務員改革に取り組んだ元経産官僚の古賀茂明氏が語る。
「社外取締役制度の義務化は企業のコンプライアンス向上のためにも必要な政策だが、天下り先の拡大に利用するのは本末転倒も甚だしい。安倍首相は第1次内閣当時には公務員改革に力を入れた。しかし、今回は消極的で、官僚の利権に切り込もうとしない。官僚はそれがわかっているから、安倍政権に協力する。政官が一体となって天下りのための社外取締役制度推進をはかっているわけです」 」
http://news.mynavi.jp/news/2014/04/30/411/
※週刊ポスト2014年5月9・16日号