「当社のグローバル戦略は長期的視野に立ったもの。不退転の決意で継続する」「3年後には株主価値を出す。それが株主に対する経営責任だ」LIXILグループの藤森義明社長は6月3日に開いた緊急記者会見で、そう語った。
会見では、中国子会社・ジョウユウ(本社・独ハンブルク)の不正会計にからみ、自社の損失が総額660億円に上ると発表。従来見込んでいた額がさらに1.6倍に膨らむという内容で、報道陣からは経営責任を問う質問も少なくなかった。だが、藤森社長は時折、笑顔すら見せつつ、いつもと変わらぬ強気の姿勢を貫いた。
成長戦略に疑問符
発覚したのは実に深刻な不正だった。4月1日に連結子会社化した水栓金具の中国メーカー、ジョウユウ(本社・独ハンブルク)が、巨額の簿外債務を抱えていると判明。金額は確定していないものの、LIXILが計上する損失額を上回るというから、700億円以上の債務を隠していたと推定される。また、売上高や利益の改ざんもあるという。優良企業とされていた同社の実態は債務超過で、5月22日にハンブルク裁判所に破産手続きを申し立てている。
今回の一件で、2013~2015年度の決算に総額660億円の損失を計上するが、純資産が約6400億円あるLIXILにとって、今回の損失そのものは屋台骨を揺るがすものではない。ただ、2019年度に海外売上高1兆円を目指し、外資の同業を立て続けに傘下に収めてきた藤森義明社長の成長戦略に、疑問符がつき始めたことは間違いない。
ジョウユウは、2014年1月に水栓金具の世界大手・独グローエを買収した際、その子会社として手に入れた。過去5年間で売り上げを2倍に伸ばし、営業利益率も2ケタ台。中国全土に4000店の販売網を持ち、中国市場への橋頭堡となるはずだった。また、福建省に持つ大規模な生産拠点でLIXIL傘下のほかのブランド製品も生産し、コスト競争力を高める原動力にするという青写真もあった。
「ジョウユウからの支払いがない」──。不正発覚のきっかけは4月13日、中国のある銀行からLIXILに届けられた一通の督促状だった。
買収当初、グローエとジョウユウは出資比率が5割以下の持ち分適用会社だったが、4月1日に株式を追加取得し、両社を子会社化したばかり。寝耳に水ともいえる通知を受けて特別監査を実施すると、売上高や負債、手元現金などの額に、財務報告とは大きな乖離があると判明。監査から1カ月足らずで破産手続きに追い込まれた。。。」
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http://toyokeizai.net/articles/-/71470