日経新聞:英当局「取締役の4割以上を女性に」上場企業に要求へ

『英国の金融当局である金融行為監督機構(FCA)は28日、上場企業の経営にさらなる多様性確保を促す新たな指針案を公表した。取締役の40%以上を女性としたり、少なくとも1人は白人以外としたりすることを求める。企業統治におけるダイバーシティー(人材の多様性)充実を上場ルールとして強力に推進する。

10月中旬まで産業界や市場関係者の意見を募り、年内に制定する。ロンドン証券取引所の主要市場へ上場するすべての企業に、2022年1月以降に始まる会計年度から適用をめざす。

新指針案はジェンダーや人種などの面で多様な取締役会づくりを求める。まずメンバーの最低40%を女性(自認する人も含む)としなければならない。会長、最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、上級独立取締役のうち少なくとも1人は女性とする要件も課す。

取締役のうち1人以上は「非白人のエスニック・マイノリティー(人種的少数派)」にすることも求めるとした。

いずれも強制はしないが、従わないなら未達の理由を対外的に説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の運用とする。ロンドン証取のプレミアムとスタンダード市場の全上場企業を対象にする。取締役会と経営層の多様ぶりが外部から分かるよう、関連する人数構成の情報を年次報告書で開示することも求める。

「取締役・監査役を「トレーニング」するという表現は、奇妙であり、かねてから違和感があります」 (??)

2021.07.13 Diamond Online『「ガバナンス・コード」改訂で問い直すべき企業経営の原点』のインタービュで橋本勝則氏が【取締役を「トレーニングする」ことへの違和感】と述べている。
どうして「違和感」があるのか、理解できません。

橋本勝則氏:「一例をあげると、CGコードの第4章「取締役等の責務」の「原則4-14」にある、取締役・監査役を「トレーニング」するという表現は、奇妙であり、かねてから違和感があります。好意的に読めば、業界や企業独自の状況にうとい社外取締役に、十分な情報提供と説明をせよ、ということなのでしょうが、それをトレーニングとすると、緊張感が薄れ、独立性に影響するおそれもあります。監督してもらう側の企業が取締役をトレーニングするという表現は、本来あるべき実態にそぐわないものです。」  (https://diamond.jp/articles/-/276480?page=2)

トレーニングとは必要なコーポレートガバナンス、会社法、金商法、ファイナンスなどの知識を補給することが含まれてあり、トレーニングをセミナー等と理解する会社も多いが、社外取締役のトレーニングとして事業所視察を実施している事例もあり、自社の事業内容を理解することも重要です。通常、これだけではCGCは「オリエンテーション」と言われています。社外取締役に対して、就任時に事業、財務、組織等の基本的な情報を提供し、その後、経営判断に必要な情報を随時提供することは当たり前のことであり、独立性に影響するおそれはないはずです。しかし、それだけではCGCが勧めている「トレーニング」を満たしたことにはなりません。CGCに書いてあるのは、「新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるとともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。」

日本生産性本部: 「日本企業は他国と比べて人材に投資しない!」警鐘を鳴らす

日本生産性本部発表の「日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性~人材育成に関する日米企業ヒアリング調査およびアンケート調査報告:生産性レポートVol.17」をご紹介します。

内閣府による経済財政報告2018年度版では、人材育成の重要性を指摘するとともに、社員教育や社会人の「学び直し」などによる人的資本投資が1%増加すると、労働生産性が0.6%上昇すると試算しています。しかし、日本の人材育成はかつてほど行われなくなってきており、日本の人材投資は2000年代に入って減少傾向にあります。

また、人材育成投資額を対GDP比でみると、日本は主要国の中でも極めて低い水準にとどまっています。

メトリカル:ESGのS (Social)について

最近、企業を取り巻く社会やステークホルダーの側にESG(あるいはSDGDs)についての認知が広がっています。企業の側でもアナリストミーティング、CSRレポート、統合報告書などで各社のESGの取り組みを紹介する機会が増えています。社会および各関係者の間で理解が深まることはとても良いことです。決算説明のアナリスト・ミーティングでも業績報告・見通しに続いてESGの取り組みについてプレゼンテーションをする上場企業が増えています。その中で、やや疑問に感じることがあります。その一つに、少なからぬ会社がG (Governance) において、BCP (Business Continuity Plan) をその取り組みとして大きく取り上げていることです。次にS (Social) の取り組みとして、社会貢献活動を大きく取り上げていることです。今回は後者のSについて考えてみたいと思います。

日々企業のESGに関する報告に接するにあたって、S (Social) に関して捉え所がないと感じている上場企業が少なくないように思われます。上述でご案内しましたように、Sの取り組みの事例紹介に、当該企業の社会貢献活動や労働環境の整備(ワークライフバランスや育児休暇制度など)に関する取り組みを事例として紹介するケースをよく目にします。もちろんそのような個別の取り組みもS (Social)に含まれるとは思いますが、企業の持続的成長にとってはもっと広い視野で社会環境の改善にもっと目を向けるべきではないかと感じています。企業は人と人が様々な立場で関係する社会の中で企業活動を行っています。そのような社会の中で、企業活動の円滑な運営と持続的成長を進めるためには広い視野で人権を尊重するという立場に立って経営を行っていると伝えるのが良いのではないかと思います。

ESGの取り組みに先行する企業では、「人権」について基本的考え方を表明する会社が出てきました。このような人権についての基本的考え方に沿って、個別の取り組みに言及するのが多くの人々に理解されやすいと思います。このような方法を取る会社にはグローバルに事業展開する大きな会社に多く見られます。それらの会社では多様な価値観やバックグラウンドの人々が働き、顧客・取引先など当該会社の事業を取り巻く関係者も多様性を持っていることから、事業を遂行するためには多様性や人々の権利の理解と尊重が欠かせず、それが事業リスクを低減すると理解していることによると推測できます。しかし、多くの日本の会社は「人権」についての考え方を表明するには至らず、上述のような個別取り組みをレポートに記載するにとどまっています。

メトリカル:6月株式相場は前月に続き方向感のない展開に終始、薄商いの中若干の上昇で取引を終えた。CG Top20株価はTopix、JPX400の両インデックスに対して大幅アウトパフォーム。

月の後半に一時下落したものの、月を通じて売買高が少なく、手掛かり材料難から方向感に欠ける相場展開が続いた。6月1ヶ月間でのTopixとJPX400の両株価指数は1.17%、0.82%とそれぞれ上昇した。CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は3.50%と3ヶ月連続アウトパフォーマンス。なお、毎年6月末でCGレーティング・スコア上位のCGTop20構成銘柄が見直しされるため、7月1日より新しい構成銘柄で株価パフォーマンスが測定される。

公益社団法人会社役員育成機構平野英治氏(「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」元経営委員長)を理事として迎える

2021年7月1日付で平野英治氏が公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)の理事に就任いたしました。

平野氏は、2021年3月まで、世界最大の国民年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の初代経営委員長を務めました。GPIFは、約178兆円を運用する世界最大の国民年金基金です。GPIF経営委員長時代に、投資先企業とGPIFの双方において、ESGの重要な柱の一つであるコーポレート・ガバナンスの重要性を強調しました。平野氏は、変化の加速、世界的な感染症大流行、企業の持続可能性に対する世界的な認識の高まりの中で、GPIFの経営委員会を率いて巨大なポートフォリオの運用を監督しました。

平野氏の経歴は、経済学、国際金融市場、投資、公共政策、コーポレート・ガバナンスなど多岐に亘っており、ハーバード大学で経済学の修士号を取得しています。GPIF、日本銀行理事、その他民間企業などにおける平野氏の豊富な経験は、BDTIにおいて存分に生かされます。現在は、メットライフ生命保険株式会社の取締役副会長、株式会社NTTデータおよび株式会社リケンの社外取締役を務めています。また、経済同友会の幹事、日本ユネスコ国内委員会の委員も務めています。

BDTIの代表理事であるニコラス・ベネシュは、平野氏のBDTI理事就任について、「実践的で高水準の役員研修プログラムを提供することで、取締役会の有効性を向上させるという我々の使命に平野氏が加わって下さったことは大変光栄なことで、非常にうれしく思っています。」と語り、同じく代表理事の大杉謙一(中央大学法科大学院教授)は、「平野氏の幅広い知識と経験は、今後直面する課題に対応できる社内外取締役を育成するBDTIのプログラム企画に大いに役に立ちます。」と語りました。

平野氏は、「サステナブル投資の成功は、取締役会とコーポレート・ガバナンスの質に大きく依存しており、これらを実質的に改善するための最良の方法は、新しい知識、『ベストプラクティス』の共有、そして深堀りする議論であります。役員研修にはこれらの要素すべてが含まれています。従って、役員研修やガバナンス研修は、社会にとって必要不可欠なものなのです。ESGやインパクト投資の手法を導入しているものの、持続可能性にどのようにもっと貢献すればよいのかわからないという運用会社には、この現実を精力的に伝えていく必要があるでしょう。私は、より多くの国内機関投資家がBDTIの活動を支援してくれることを期待しています」と語っています。