2020年住友化学株主総会での事前質問状送付の顛末

2020.10.5 板垣 隆夫による投稿です

会社側の自粛要請に応えて、株主総会は欠席しましたが、事前質問状を提出しました。当日、会場で回答があったようですが、その内容が分らないので、小生を含む出席できなかった株主に開示することを会社に求めてきました。某役員からは、「あくまで個人の立場で大先輩である貴方には特別に内容を教えても良いが、誰にも言わないことを約束して下さい」旨の「親切な」しかし全く筋違いの申し入れがありましたが、断りました。小生が質問しているのは、多くの株主が関心のあるコーポレート・ガバナンスの基本問題について、「会社」としてどう考えるかを株主に堂々と明らかにして、説明責任を果たして欲しいからです。ということで、改めて社長宛に下記の2点を要望するメールを送りました。

○株主総会の模様の録画をHPに公開して頂きたい。
○時間短縮の都合で省略した部分も含めた回答内容をHPに文書の形で公開頂きたい。

3ヶ月が経過しましたが、執行側からは何の回答もありません。以下はその経緯です。

1.経緯
私は住友化学㈱のOB株主として、昨年まで8年連続で株主総会に出席して主としてガバナンス問題についてかなり手厳しい質問を行ってきました。本年は、新型コロナウィルス感染拡大防止のために、可能な限り来場を見合わせて欲しいとの会社の要請に応え、会場への出席は控えることにしました。しかし、株主総会が、意思決定の場であるだけではなく、株主・投資家との建設的な対話、コミュニケーションの場として重要であることから、従来通り事前質問状を送付致しました。今回も株主の多くが関心を持つコーポレート・ガバナンスの在り方と企業業績に関わる問題を取り上げているので、会場出席の有無にかかわらず、真摯かつ丁寧な回答をすること、及び会社の要請に応えて出席を控えた多くの株主が、質疑応答を含む総会の詳細情報を共有できるように、特別な取り計らいを要望しました。質問は、1.本総会開催に当たっての会社としての基本的考え方、2.ESG・SDGs経営への取組みと農薬問題、3.有利子負債の大幅増の主な要因分析と今後の見通し の3項目です(質問の全文は3.に記載)。
聞くところでは、株主の参加者は70人で総会時間は40分で、質問者は1人(1問)であったそうです。小生の質問に関しては、「事前にご質問状を頂いておりました項目のほとんどについて、総会会場にて回答させて頂きました。」とのことでした。そこまでは、それなりに誠意ある対応で、喜んでいました。
問題はそれからで、総会の翌日法務、総務、内部統制担当で長年法務部長を務めているO常務執行役員からメールがありました。「Web開示等を行う予定はありませんが、板垣さんには、せっかくですので、お差支えなければ、お電話にて、小職から、ご説明させて頂きます。」。ただし、「これは、小職が、あくまで個人的に、会社の大先輩である板垣さんにご連絡するもので、会社としての報告・連絡等では全くありません。また、勝手ながら、ご連絡する事実およびその内容について、録音等や、他者との共有はお差し控え頂くことにお約束頂けることを前提とさせて頂きます。」という条件付きです。
小生は、直ちに「小生が質問しているのは、多くの株主が関心のあるコーポレート・ガバナンスの基本問題について、会社としてどう考えるかを株主に堂々と明らかにして、説明責任を果たして欲しいからです。別に内輪話を聞きたいわけではないという当然のことがご理解頂けていないのは誠に残念です。従って、そういう条件付きではお電話頂く必要は全くありません。」と返信し、「今回のお申し入れは、今日の住化のコーポレート・ガバナンスの殘念なレベルを露呈したものとして受止めました。」と付け加えました。これでは、殆ど特殊株主と同様の扱いであるとの印象を強く持たざるを得ませんでした。
翌日(6月26日)に、社長宛(CCは監査役や関連役員)に、上記やりとりを明らかにした上で、改めて下記の2点を要望しました。
○株主総会の模様の録画をHPに公開して頂きたい。
○時間短縮の都合で省略した部分もあるでしょうから、それらを含めた回答内容をHPに文書の形で公開頂きたい。
その後、住化HPに今回初めて株主総会の報告事項のみの動画(20分)が掲示された以外は、執行側からは何の反応もなく、完全無視の方針のようです。

以下は6月26日の社長宛要望メールの全文です。
「いつもお世話になります。コロナ禍という異常事態下の株主総会でしたが、無事終わられたとのこと、お慶び申し上げます。事前に小生がお送りした質問状のほとんどの項目について、総会会場にて回答して頂いたとの由、有難く存じます。
会場に出席していない以上、その回答内容を知りたいのは当然のことです。しかし、昨日O常務「個人」として、下記のような提案メールを頂戴しましたが、お断り申し上げました。繰り返しになりますが、小生が質問しているのは、多くの株主が関心のあるコーポレート・ガバナンスの基本問題について、「会社」としてどう考えるかを株主に堂々と明らかにして、説明責任を果たして欲しいからです。別に、OBだからといって特別扱いで、個人的な内輪話や「録音等や、他者と共有」してはまずく、後に残らない電話でしか話せないような秘密情報を聞きたいわけではありません。
小生がお願いしたいのは、下記のことです。
○株主総会の模様の録画をHPに公開して頂きたい。
○時間短縮の都合で省略した部分もあるでしょうから、それらを含めた回答内容をHPに文書の形で公開頂きたい。
ご承知の通り、三井物産やトヨタ自動車などの会社は、上記のような出席自粛の代替措置を講じています。
株主尊重の立場からは当然の対応で、当社が出来ない理由はないはずです。
折角事前質問に回答して頂いたのに拘らず、小生を含む大多数の株主に伝える措置を講じないのは、株主に対する責任放棄と言わざるを得ません。宜しくお配慮をお願いします。」

2.友人・知人へのアンケート
1ケ月後の8月初に、コーポレート・ガバナンスに関心のある親しい友人、知人に本件に関してアンケートを実施しました。その問いと回答は以下です。
回答者計 38人(住化関係 20人、監査・ガバナンス関係 15人、その他 3人)

論点1 今回の会社の対応の違法性
<答え 1.違法性あり 4人、2.違法性はない 19人、3.どちらとも言えない 12人 >

論点2 今回の会社の対応のコーポレート・ガバナンス上の問題性
<答え 1.問題あり 31人、2.問題はない 1人、3.どちらとも言えない 6人>

論点3 小生が会社に求めている2つの提案の妥当性
<答え 1.妥当である 35人、2.妥当でない 1人、3.どちらとも言えない 2人>)

論点4 O常務の「貴方だけには電話で教えるが、口外しないように」という提案の是非
<答え 1.問題あり 33人、2.問題はない 1人、3.どちらとも言えない 2人>

違法性の問題については、違法性なしがほぼ半数で、どちらともいえないが4割と意見が分かれました。それ以外は会社の対応は問題あり、小生の求める二つの提案は妥当である、O常務の行動は問題ありが圧倒的多数でした。
これらが、コーポレート・ガバナンス原則からも社会常識からも当たり前の見方であることを、住化執行部には理解して欲しいと思います。そして、監査役と社外取締役には、経営トップを監視、監督し、社会規範と社会的常識に則った判断に導くのが今日の監査役と社外取締役の責務であることを自覚し、今回のアンケート結果も後押しにして、一歩前へ踏み出すことを願っています。

3. 2020年住友化学(株)株主総会事前質問状(6月24日)
2020.6.17板垣 隆夫
OB株主の板垣隆夫です。
毎年株主総会に出席して、事前質問状に基づき質問を行って参りました。本年は、新型コロナウィルス感染拡大防止のために、可能な限り来場を見合わせて欲しいとの会社の要請を踏まえ、また自らがハイリスクの高齢者である点を勘案して、会場への出席は控えることにしました。しかし、株主総会が、意思決定の場であるだけではなく、株主・投資家との建設的な対話、コミュニケーションの場として重要であることから、従来通り事前質問状を送付致します。今回も株主の多くが関心を持つコーポレート・ガバナンスの在り方と企業業績に関わる問題を取り上げておりますので、会場出席の有無にかかわらず、真摯かつ丁寧な回答をして頂くように要望いたします。その際に、会社の要請に応えて出席を控えた多くの株主が、質疑応答を含む総会の詳細情報を共有できるように、特別な取り計らいをお願いしたい。

1.本総会開催に当たっての会社としての基本的考え方
本年の総会は新型コロナウィルスの影響で異例づくめの対応となっていることは、何よりも人命・健康尊重の立場から已むを得ないと理解しています。しかし、こうした異常事態の下、株主総会開催のやり方について様々な選択肢がある中での当社の選択について、株主に対して説得力のある説明を行う責任があります。平常でない緊急事態への対応においてこそ、各社の株主総会や株主に対する基本姿勢、さらに言えば「価値観」や「思想」が如実に表れると言えるでしょう。ついては、下記の諸点についての当社の考え方を丁寧に説明願いたい。

①新型コロナ禍対応において、国内外で外出禁止·自粛に伴う在宅ワーク化により決算・監査対応に遅れが生じていることから、多くの企業で株主総会の開催時期の見直しが検討された。山口利昭弁護士など専門家が推奨した完全延期や金融庁等参加の「連絡協議会」で打ち出された継続会方式は採らずに、実質的に株主の出席が極端に制限された形で当初予定通りの6月開催を選択した理由・根拠は何でしょうか。

②一部に「監査の空洞化」を懸念する声がある中で、監査法人による会計監査は海外関係会社も含めて十分に遂行されたのか、監査役は会計監査の相当性も含めて十分に監査を遂行できたのか、懸念される問題はないのか、コロナ問題に関わる「重要な後発事象」の記載の是非も含めて、監査役に説明をお願いします。

③経産省が推奨し、少なからぬ企業で採用されているハイブリッド型バーチャル株主総会を採用しない理由は何か。出席型は技術的ハードルが高いとしても、せめて参加型を採用して、多くの株主に視聴してもらう措置を取ることは、株主重視の立場からは当然の対応と考えるが如何でしょうか。

④総会に出席できなかったすべての株主のために、後日ホームページに文書質問への回答を含む質疑応答の模様の録画や詳しい回答文書を掲載すべきと考えるが如何でしょうか。

⑤本年の来場記念品取止めは当然だが、「本年から」と来年以降も取止めにした理由は何か。過去(2016年)にも一旦取止めた際に来場者が大幅に減少したため、1年で復活させた経緯も踏まえると、一貫性のない悪く言えばどさくさ紛れの対応と受け取られて、株主の理解は得難いと考えるが如何でしょうか。

2.ESG・SDGs経営への取組みと農薬問題
昨年も質問したESG・SDGs経営への取組みと農薬問題について伺います。社会環境・事業環境が悪化し、先が見通せないときこそ、ESG経営の本気度が問われます。当社が本年のエコバディス社のサステナビリティ調査において「ゴールド」評価を獲得したこと、また「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」に参加したことは高く評価したいと思います。そこで懸念されるのが、昨年も指摘した当社が製造販売する農薬、とりわけネオニコチノイド系農薬がミツバチの大量死や失踪の原因となっていると言われる問題です。対応次第では、グリーン・ウォッシュのレッテルを貼られ、折角築いた評判を台無しにしかねません。最近も各自治体において、グリホサートとネオネコの使用禁止を求める動きが続いており、遠山千春東大名誉教授が毎日新聞WEB版の連載で4回に亘り問題点を詳細に指摘しておられます。農業者、消費者も含めた関係者による透明なプロセスによって、最新の科学的知見に基づく検討が行われるようメーカーは主体的に努力すべきと考えます。この1年の取組みの進展状況の説明をお願いします。

3.有利子負債の大幅増の主な要因分析と今後の見通し
2019~2021年の中期計画の基本方針の柱の一つは、強靭な財務体質の実現であり、2021年の有利子負債の目標は1兆800億円でした。事業報告によると、2020年3月末の有利子負債は前期に比べ4,651億円増加し1兆3,047億円となっています。この大幅な増加はほぼ想定内のことなのでしょうか。その主要な要因別変動額とその発生理由の説明をお願いします。併せて、将来の成長のための健全な借り入れの一時的増加と看做してよいのか、今後の財務体質の改善の見通しと対応策についてお伺いします。

以上

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