ICGN、独立委員会の設置、役員研修等への注力を要望

ICGN(国際コーポレートガバナンス・ネットワーク)は、11月27日に開催された金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第16回)に提出した意見書の中で、独立取締役、独立委員会の設置、役員研修、役員のスキル・マトリックスの活用、資本配分、情報開示、その他BDTIが2009年の創立以来その対応を訴求し続けている課題について、その重要性を説いています。

ケリー・ワリング同事務局長は、下記の様に述べています。

「 ICGN は、日本で独立取締役のための質の高い研修を導入することを推奨します。これにより特に経営陣の監視・監督と情報開示という取締役に求められる役割についての理解を深めることができます。これによりビジネス上の課題や一連のビジョン、ミッション、戦略に対する客観的な意思決定過程を確保する一助となるでしょう。また、資本の効率的活用、株式の持ち合い、CEOの選解任といった課題について独立取締役として時に経営陣と対等に対峙できるように「フィナンシャル・リテラシー」(財務・会計の基礎知識)の必要性も強調しています。」(BDTI抄訳)

第16回『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』

金融庁は、11月27日、第16回『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』を開催しました。主な検討課題として次の項目が挙げられました。

□ 両コードの改訂等への対応状況を踏まえた課題

✔ 資本コストを意識した経営

✔ 取締役会の機能発揮

✔ 政策保有株式

✔ スチュワードシップ活動の諸課題(企業年金を含む)等

□ その他の課題

✔ 監査に対する信頼性の確保

✔ 開示情報の充実(プリンシプルベースのガイダンスを含む)

✔ その他

ボードポータル活用状況から見えてくる日米企業の差

1990年代のワールドコム、エンロンにおける不正事件は、アメリカの企業に大きなマインドシフトをもたらした。 コーポレートガバナンスにおける米政府の新たな規制に加え企業株主からの要望という外部からのプレッシャーに応じる形で米企業は様々なコーポレートガバナンス強化のための取り組みを行ってきた。

その中でも大きな項目のひとつとして会議資料の管理がある。

取締役会、その他理事会や管理職が行う会議資料の取り扱いについて、どの企業も従来の紙やメールでの配布といった体制を改め、セキュリティ管理を 強化した。

企業の上層部が出席する会議は当然、企業の重要な機密事項が含まれており、そのような資料が何らかの理由で社外へ流出し情報漏洩となった際には、株主や顧客に多大な迷惑をかけることとなり、企業にとっても莫大な損失となるからだ。

その頃よりボードポータルと呼ばれる会議資料共有のためのソフトウェアがいくつかのプロバイダより開発され瞬く間に多くの企業で使われることとなった。ちょうどアップル社より初代iPadが発売されたタイミングでもあり、多くのエグゼクティブがボードポータルをタブレットで利用し始め、更に広く普及することとなった。

ボードポータルという言葉は、日本ではまだあまり馴染みがなくペーパーレス会議システムと呼んだ方がイメージし易いかもしれない。しかし、ボードポータルとペーパーレス会議システムとの大きな違いは、最先端のセキュリティ技術で守られたクラウド環境で会議資料を安全に共有し、参加メンバーによって資料のアクセス権を細かく設定でき、訂正や更新も簡単かつタイムリーに行えるだけではなく、議決、評決、そして電子署名のプロセスを自動化できる点である。

2019.01.23 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『議決権行使動向~SS及びCGコード改訂後の特徴と ISSの議決権行使方針および今後の動向~』

2017年に「スチュワードシップ・コード(改訂版)」が公表され、2018年には改訂コーポレートガバナンス・コードに【原則2-6企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】が新設され、コーポレート・ガバナンスの向上への寄与を機関投資家にも求める流れが鮮明になっています。機関投資家の議決権行使による意思表示が、コードの改訂によってどのように具体的に変化したのか、また今後どのように変化していくのか?企業担当者ならずとも関心は高まる一方です。

そこで、本セミナーでは、BDTI代表理事のニコラス・ベネシュが改訂コードで注目すべきポイントとBDTIの最新の調査に基づくコード改訂後の議決権行使結果の傾向分析を簡単にご紹介した後、世界有数の議決権行使会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)株式会社エグゼクティブ・ディレクターの石田猛行氏から、ISSの最新の議決権行使に関する方針の解説、今後の議決権行使における変化の方向性についてお話しいただきます。さらに、ホワイト&ケース法律事務所/ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)(以下、「ホワイト&ケース」)の宇佐神順弁護士から、これらの議決権行使の潮流を受けて今年度の株主総会に向けて企業、投資家双方はどのような対応が考えられるのかをお話しいただきます。

続くパネルディスカッションでは、企業年金連合会理事の濱口大輔氏に加わって頂き、様々な視点で意見交換していきたいと思います。
企業のIR担当者のみならず、取締役会メンバーやこれを支える方、コーポレート・ガバナンスにご関心のある方、機関投資家サイドのアナリスト、議決権行使担当者等の皆様にも広く積極的にご参加いただきたいテーマのセミナーです。

本当の「安定株主[1]」比率はどれくらいなのか?

企業年金連合会 コーポレートガバナンス担当部長
公益社団法人 会社役員育成機構 理事
北後(ほくご) 健一郎[2]

「安定株主」、「政策保有株式」、「持ち合い株式」等々、本件に関する呼び名はいくつかあり、特に海外投資家にとっては理解しづらい。彼らは「Cross Shareholdings(持ち合い株式)」という言葉のみを主に聞くのみであり、そこにある日本特有の商慣習の微妙なニュアンスにまで考えが至らないことがほとんどである。筆者は、この数ある呼び名の中でも、コーポレートガバナンスにとっては「安定株主」が最も重要な概念であると考える。従い、実際の「安定株主」はどれくらいの「規模」で、コーポレートガバナンスの改善にどのようなインパクトがあるのか、アセットオーナーの立場としての考えをまとめてみたい。

筆者は、海外出張時に必ずと言っていいほど「日本のコーポレートガバナンスの現状」という題目での講演を依頼されるが、その際に一番やっかいなことは、海外投資家の頭の中には「日本の持ち合い株は10%かそれ以下になった(と報道されている)のだから、それはもう問題ではないだろう」という、点である。無論、著名な研究機関のアナリストによる分析を立派なメディアが報道しているのでその数字自体が間違っているわけではない。しかし、その数字がどのように計算されたのか、その数字だけが全てなのか、という点を説明するのに一番苦労するのである。言うまでもないが、筆者は講演において、海外投資家に日本株式への投資を思いとどまらせるなどという意図は毛頭ない。日本の株式市場の価値極大化はアセットオーナーである我々の悲願でもある。日本のコーポレートガバナンスの進捗をスピードアップし、本物にするためにも、きちんとした現状理解をした上で投資するように講演では聴衆に伝えているのである。

3年間の働きかけが奏功!5社の企業年金がスチュワードシップ・コード受入れを表明

金融庁が11月15日時点で新たにスチュワードシップ・コード受入れを表明した企業年金に三菱商事企業年金基金が加わったことは喜ばしい事です。(「新たに「受入れ表明」をしていただいた機関投資家を色分けしたもの」をご参照ください。)すでに受入れを表明していた企業年金;セコム、パナソニック、NTT、エーザイと併せ、5社の非金融企業の年金基金が受入れを表明したことになります。セコムは最初から表明していましたが、その他の年金基金は、私が首相、企業年金基金の監督官庁である厚労相に要望し、企業年金基金によるスチュワードシップ・コード受入れの促進を目的として厚労省に規則の変更を求める提案書を提出し、結果として厚労省、企業年金連合会、専門家、オブザーバーとして金融庁の担当者が集まる「チュワードシップ検討会」がつくられてから受入れを表明しました。

将来に向けた骨太なストーリーの開示(松田千恵子教授)

11月14日、首都大学東京大学院松田千恵子教授が中期経営計画開示の「リスク」と題して日本経済新聞のコラムに寄稿し、企業と投資家のエンゲージメントが益々重視される中、企業の中の中計の位置づけも自ずと変化することが求められていると指摘しています。