8月上旬、東京大学法科大学院のサマースクールに参加した。今年のテーマはコーポレートガバナンス。様々な法域から訪日した7名の教授陣による国際比較法講座となり、さらには経済学からの視点も合わさって、大変興味深い内容であった。比較法で重要な軸となるのが「機能」。プリンシパル・エージェンシーコストのうち、株主・経営陣間にあるそれを軽減するという機能から見ると、独立取締役、敵対的TOB、proxy-fight、株主代表訴訟が同列に論じられるというのが、今更ながらに新鮮であった。
ドイツから来たハラルド・バウム教授は、BDTIのアドバイザーでもある。ドイツは、1861年から2層式のスーパーバイザリーボードという機関設計をとり、経営と監督の分離が確立している。しかし、監督者の多くは、経営陣や大株主と関係を持っており、さらには1976年からは従業員代表取締役も加わることとなって、さらに内部者色が強まった。経営陣や大株主から隔絶した「独立取締役」というアイデアは、創業家の影響力の前に、未だ浸透が進まないようである。詳しくは、バウム教授のレポート”The Rise of the Independent Director: A Historical and Comparative Perspective”を参考にされたい。
創業家の影響力については、日本の上場企業でも経営陣との対立を巡ってしばしば話題を呼ぶ。イギリスのメイ首相はコーポレートガバナンス規制の改革を表明し、ドイツ式の従業員代表取締役に感心を寄せている。今後、ドイツのコーポレートガバナンスが注目される機会が増えそうである。