野村證券西山氏の報告書「ESGから見た日本企業」

野村証券のシニアストラテジスト、西山賢吾氏が「ESGから見た日本企業」と題して報告書を発表しましたので概要をご紹介いたします。

「企業統治評価の高い企業は投資家にも優しい

投資家の不信払拭にはさらなるガバナンスへの取り組みも必要

2012 年8 月9 日

ESG スコアからみた日本企業の企業統治とその課題
投資家の関心が高まっている ESG(環境、社会、企業統治)について、イタリアの独立調査会社であるECPI社が算出しているESG評価のスコアと、同スコアをベースに付与されたレーティングを用いて、日本、欧州、北米企業の比較を行った。その結果からは、前回(2011 年11 月)と同様に、日本の企業統治(コーポレート・ガバナンス)は欧米に比べ著しく劣後しているわけではなく、環境への取り組みに対する評価も低くないと判断できる。しかし、日本の企業統治に対する投資家の不信感がなお残存している現状を考えれば、ESGの観点からは、日本企業は企業統治体制の見直しと整備をさらに進め投資家の懸念を払拭し、信頼を高める必要があるだろう。

SG スコアの高い企業の特徴(1)投資家の「声」が経営に届きやすい
ECPI 社のESG スコアはE(環境)スコアとSG(社会・企業統治)スコアの2セクションから成るが、そのうちSG スコアに着目し、12 年7 月20 日現在同スコアが付与されている日本企業415 社について、同スコアの高い方から3つのグループに分け、特徴を調べた。その結果、SG スコアの上位の企業群は、他の企業群に比べ機関投資家の株式保有比率が相対的に高かった。また、社外取締役の選任割合も高く、1 社当たりの社外取締役数も多かった。こうした特徴を見ると、SG スコア上位の企業群は、経営や資本政策に対する投資家の「声」が経営陣に届きやすいと考えられる。

特徴(2)特別損失の多額計上で利益が大きく減るリスクが相対的に低い
さらに、各分位ごとに特別損失計上額の対経常利益比を09 年度から11 年度まで調べると、3 年ともSG スコアの高い企業の方がその値が低いという結果となった。企業の通常の活動以外の特別な要因で発生した損失により、企業評価を行う上で利用するROE やEPS の数字が大きくぶれる懸念がある。
しかし、特別損失の対経常利益比の低い企業は、そのような懸念が相対的に低いと考えられるため、業績に対する信頼性の面からもSG スコアの高い企業は投資家からの評価を得やすいと見る。

SG スコア、アナリストレーティングの高い企業に注目
上記のように、投資家の「声」が届きやすく、かつ、特別損失が突然計上されバリュエーションの修正を余儀なくされるリスクも相対的に低いという特徴を持つ SG スコアの高い企業は、「投資家に優しい」企業として評価できるであろう。株式投資の観点からは、SG スコアが高く、かつ業績やバリュエーション面からも魅力のある野村のアナリストレーティングBuy の企業に注目したい。」

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