監査役設置 vs 委員会設置 - 門多 丈

[両社とも社外が取締役会メンバーの過半を占める体制となったが、オリンパス社は監査役設置会社とし、東電は委員会設置会社とした。この体制でのガバナンスがどのようにワークするかを注目したい。委員会設置会社の監査委員会の実効性については、突っ込んだ議論が必要だ.                  

【記事全文】
   
取締役会に社外取締役を積極的に入れる動きが活発化してきている。不祥事が起こったオリンパス社は11人中8人を社外で、実質債務超過の東電では次期取締役候補11人のうち7人が社外となっている。日立製作所も外国企業経営者も含め社外が取締役会メンバーの過半を占めることとなる。このような動きの中で興味深い決定がある。ガバナンス体制についてオリンパス社は監査役設置会社とし、東電は委員会設置会社としたことである。この間当研究会では大谷清氏のブログ「ソニーの新しい取締役体制とサムスンのガバナンス」どで、委員会設置会社のガバナンスについての議論が盛り上がっている。この点でも両社の決定は興味深い。

オリンパス社では今後の企業・事業戦略を取締役会で早急に議論し決定するのが当面の緊急課題であり、それがこの選択の背景にはあるのではないかと思う。東電の場合は実質国有化の中で人事組織のコントロールを強化するために指名・報酬委員会を、電力料金値上げのためのコスト計算などの厳密な監視のために監査委員会を活用する考えを反映しているのではないか。いずれにせよこの体制でのガバナンスがワークするかを注目したい。

委員会設置会社の監査委員会の権限と機能については、もっと突っ込んだ議論が必要と考える。取締役はビジネス・ジャッジメントに参画するが、取締役である監査委員は自らの執行も含めて監督、監査する(会社法第四百四条に定められた職務)ことになる。これが妥当か議論になろう。また日本の委員会設置会社では監査委員会の多くが補助機関として監査委員会事務局を置いていると言われる。

この疑問を実際に監査委員会事務局長を経験した友人にぶつけたところ、彼の返事は明快で「日本の会社法では監査委員会も(監査役会と同様な)監査報告の提出を求められているから」とのこと。会社法をチェックしたところ、確かに第四百四条の監査委員会の職務の中に「監査報告の作成」が規定されている。会社法で求める監査報告を行うには、取締役や執行役員の執行の監査、内部統制の確認と内部監査が必要となる。内部監査までの責任となると業務的にも重大な負担となり、これが原因で監査員会事務局を置かざるを得ない(監査員会事務局長に常勤監査役の役割を果たさせる)ことと納得できた。

米国ではこのような問題についてあまり聞かないが、「監査」の意味を社外に重点を置いた狭義にとらえているからではないかと思う。実際筆者が社外取締役になっている香港証券取引所の上場会社では、監査委員会の主たる業務は会計監査人との年度、四半期の会計報告の協議となっている。

先日我々の実践コーポレートガバナンス研究会は、会社法改正についてのパブリック・コメントを出した。この中で重要な課題として指名委員会の設置を提言した。その際に三委員会ではなく監査・監督委員会のみを設ける案にも問題があるとも指摘した。上述の監査委員会の権限と機能に内在する問題を考えると、監査・監督委員会設置の案は賛成できない。

(文責:門多 丈)」

オリジナルのブログは下記を参照してください。

http://icgj.org/icgj_blog/

 

BDTIについて BDTIでは、取締役や監査役など役員として、また業務執行役、部長など役員を支える立場の方としての基本的な能力を身に着けるための役員研修「国際ガバナンス塾」を定期的に開催しています。(オーダーメイド役員研修も、承っております。)また、「会社法」「金商法」「コーポレートガバナンス」の基礎をオンラインで学べる低価格のeラーニングコースを提供しています。詳細はこちらから。講座の概要は以下の通りです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください