金融庁「変貌する日本企業の所有構造をいかに理解するか-内外機関投資家の銘柄選択の分析を中心として-」

「変貌する日本企業の所有構造をいかに理解するか-内外機関投資家の銘柄選択の分析を中心として-」
宮島 英昭 金融庁金融研究センター特別研究員
(早稲田大学商学学術院教授、早稲田大学高等研究所所長)

保田 隆明 小樽商科大学大学院准教授

1997年の銀行危機以降、日本企業の所有構造は、従来の持ち合いを中核とするインサイダー優位の構造から、投資リターンの最大化を求める内外機関投資を中心とするアウトサイダー優位中心の構造に大きく変容した。もっとも、この急速な変化の企業レベルでの実態、増加するアウトサイダーの投資行動の特性とそのリターンへのインパクトはいまだ十分に明らかにされていない。本稿の課題は、これまで構築してきた独自の企業の所有構造のデータを利用して、以上の点を解明する点にある。本稿の分析を通じて、第1に、海外投資家の銘柄選択行動は、規模が大きく、流動性、海外売上比率の高い企業を選好するホームバイアスと呼ばれる傾向がいぜん強いこと、しかし、日本株専門の運用部門の整備、情報収集及び分析能力を背景にリスク要因の考慮が後退するなどの変化が見られること、また、海外投資家は整備された企業統治に対して一定の選好を示すことが明らかとなった。第2に、内外機関投資家の銘柄選択を比較すると、前者が中小型株までカバーしており投資ユニバースがやや広いという違いはあるものの、割安な銘柄を選択し、規模、流動性、財務健全性、経営者報酬の業績連動性の高い企業を選好する点で海外機関投資と投資行動は収斂しつつある。国内機関投資家は、資本関係・取引関係等の理由から独立性が乏しく、投資収益の最大化を行動原理としていないという従来の見方はもはや妥当しない。しかし他方で、金融機関(銀行・保険会社)は機関投資家とは逆の投資行動をとっており、いぜん安定株主の特質を維持している。最後に、国内外の機関投資家の持分の変化と翌期の株価パフォーマンスの関係には、ともに有意な正の相関が確認でき、その経済的規模はほぼ同程度であった。保有の変化が需要ショックとなってリターンに影響を与えるか、機関投資家がsmartな投資行動をとったのかは今後の検討課題であるが、リターンへの影響という点でも内外投資家の影響はほぼ収斂している。

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