オリンパス、大王、東電などを受けて、民主主義的な会社法改正プロセスのために、提案いたします

オリンパスの20年粉飾決算、大王の会長の犯罪的行為とそれを許した組織、九電の政治に対する詐欺的故意、東電取締役会のリスク管理監視義務のお粗末さは全部、7ヶ月間の間に起きました。その間、3・11の後、法制審は3ヶ月半の臨時休みをとりました。

休暇から戻ると、歯のある改革をするであろうと思うと、何も変わらなかったです。ほぼ一年半前に経済産業省が提案した、効果がとても期待できない第三の「機関設計」(つまり、会社の選択に過ぎない)「監査監督委員会設置会社」をそ大体のまま導入するつもりらしいです。産業界も投資家も誰も欲しい、「これがいい」と言っていない「選択肢」にすぎません。逆にいうと、市場を混乱させてもいいから、独立社外取締役の義務付けを避けるために、煙幕作戦として提案された法案としか思われません。

内容的に何が当初17ヶ月前の提案と違いますか?「監督」という言葉が加わりました。しかし、この言葉は法的な意味を持たない、格好をつけるための粉飾です。法制審議会のメンバーに「どんな権限を表すのか?どんな意味を持つのか?」と聞いたところ、「知らない」と言われました。多分、経済産業省に聞いても、より充実した返事をもらえないでしょう。(法制審の資料によると、委員会は委員会設置会社の監査委員会と全く同じ権限と持つように想定されています。ということは、「監督」は法的な意味を持ちません。)

確かに法制審部会資料14の(A)案(数行のみ!)は「社外取締役一人を義務つける」ことも可能性として一応ありますが、「独立」の言葉がないし、一人という数ではどうになりません。その一人は何かに反対した場合に、どれほどのインパクトを与えると思いますか?逆に、どうせ決議されたら負けると予想できるから、言いたいことを全部言っていつでも反対すべきことに対して声を上げると思いますか?実は、ことはもっと歪んでいる。日経新聞11日に4ページに報道されたように、法制審は「産業界の異論が残る」ので「見送る方向」である。まあ、もともと一ヶ月前にこの(A)案を読んだ時に、私も「捨てるための案だな」と思って、少しバカにされた気分でした。だったら、もともと入れなくてもいい、という気持でした。

丁度十年前のニュースとほぼ同じになりそうです:

 

「社外取締役義務付け見送り/来年の商法改正で法制審 2001/12/19

 

「法制審議会(法相の諮問機関)の会社法部会(前田庸部会長)は19日午後の会合で、大会社への社外取締役の選任義務付けを、来年の商法改正で見送る方針を決めた。4月に発表した中間試案では義務付けを打ち出していたが、産業界の反対が強く「嫌がるものを無理強いしても仕方ない」と判断した。」

 

つまり、2001年の十年後、嵐の中でも、取締役会の現場に参加したことがない学者大勢いる法制審は、全く同じことを繰り返しそうです。民主党は"Working Team"を急いで作ったが、こんなに遅い時点ではどれほどの影響をもてるでしょうか。会社法改正というより、適当に少し音を立てた後、「後回し」に使いやすい手である「TSEの上場基準に任せるべき」等で終わってしまう、という気がしてしょうがありません。でも残念ながら、独立社外取締役が期待されているように機能できるための一番重要なこと、つまり「法律上、有効性ある委員会制度」は、会社法の改正でしか導入出来ません。 法律の分野です。TSEが導入出来ません。(以下、参照下さい。)
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上記の状況で全く希望の光がない行動かもしれませんが、コーポレート・ガバナンス向上のための会社法改革については、私の個人的な意見は以下のサマリーと「提案書本文」でまとめられています。 (尚、これは「社外取締役の義務付け」ではりません。違う意見の方は、批判する前に提案本文を読んで下さると有り難いです。)

 

サマリー: 具体的な会社法改正提案 (潜在的な利益相反性・利害関係性問題に関して)概要 – 本稿では、具体的な法改正として、「潜在的な利益相反性の恐れがある決議に関して、独立社外取締役のみによって構成される会議体(特別取締役会)による決議を可能にしながら、そのような会議体による決議が行われない場合には、善管注意義務に関する立証責任を当該決議に賛成した取締役側に転換させる」ことを提案する。このようにすることによって、会社の利益に反する決議が行われることを事前に抑止する効果が得られるとともに、裁判になった場合、裁判官が正当な判断を行うための情報開示も期待できるのである。

 

理由 - 日本は例外だが、発展した株式市場を持つほとんどの国では、企業価値最大化や市場の信頼維持の観点から、潜在的利害関係性・利益相反性は危険視すべき問題であると認識されている。日本以外の多くの国では、独立社外取締役の導入によってこの問題に対処してきた。日本でも、潜在的利害関係性・利益相反性問題が生じ、深刻な紛争に陥りがちなケースについて、望ましい決定が自然に行われる状況を担保しておくことが必要である。

 

このような会社法改正が日本経済・社会に不可欠であると思っております。

 

なるべくシンプルに言うと、会社法に既にある「特別取締役会」のstructureを基盤に使って、利益相反性のある課題を整理・決定できるよう独立社外取締役が実効的に活用せれ得るインフラ(委員会に相当する機関)の導入を提案しております。逆にいうと、内部者が参加してはまずい課題を法的有効性ある「委員会の相当する機関」に委任できる体制を提案しております。

 

現在は、そのような仕組み・機関は会社法にはありません。又、TSEは上場規則変更などではそのような仕組みを作れないです。取締役会の決議を「正式に委任できる」ことを可能に出来るのは、会社法の世界です。

 

会社法にこのような「利害関係性を問われかねない決定を委任できるインフラ」が無ければ、独立社外取締役を義務付けても、その効果がインフラがちゃんとあった場合と比べて35%以下しかないと思います。

 

どこの国でも、利害関係がある内部者の前に座りながらその内部者にインパクトをもたらすsensitiveなことを社外取締役いに「決めて、役員全員を説得せよ」と定めても、無理があります。ましてや、少数である場合、もっと無理です。

 

私の経験では、例えオリンパスで例の三人社外取締役が健全性を防衛するようとても勇気があったとしても、Woodford氏は本取締役会で菊川さんと森さん等の前に、その人達による隠蔽を冷静に調査させて事実確認して裁けて過半数を説得することは全く無理でした。どんなに強い三人でも、隔離された機関(特別取締役会、委員会など)として委ねられていない限り、場10月14日に起きたようなようない犬喧嘩が起きたと思います。=Chaos; 役員会の調査、検討プロセスすら始まらなかったのです。いずれにしても、4人だけでは過半数じゃないので、最初から負けて、無視され村八分もされる可能性がとても高いです。又、合議制ですから、情報が上がらなければ、監査役が動かないかぎり、社外取締役は意味ある調査は出来るわけがありません。

 

このような事態になると予想する三人社外取締役は、もともと勇気が出せなくなって、行動しない悪循環的な思考に陥ります。(と言うことで、独立社外取締役に或る種の調査権(独人性)を与えることは、検討に値すると思っております。)

 

私の提案は、独立社外取締役の義務付けではありません。各社は「特別取締役会」を使うかどいうか、あくまでも役員会の裁量で決めることなります。ただし、法で指定された利害関係性問題を問われそうな決定種類について特別取締役会を使用しない場合、使わないと賛成した役員には、その「使わない」決議と本決議にについて善管注意義務を問われた場合、立証責任を負わせます。それだけです。(なお、原告は因果関係と損害算定については、立証責任を負います。)

 

この意味で、私の提案はまさに「説明責任」の条文化そのものと思っております。

 

http://bdti.mastertree.jp/f/46c92f3q   (提案書本文)

http://bdti.mastertree.jp/f/6o8dc71v  (プレゼン資料)

http://www.ecgi.org/wp/l0420.pdf     (参照: R.Gilson教授の2004年論文)

 

ベネシュ・ニコラス

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