通信企業幹部、海外腐敗行為防止法(FCPA)違反で懲役4年 - 休眠会社の元幹部3名は今年中に判決言い渡し予定

(参考訳)          執筆者 アンソニー・ロドリゲス 

9月7日、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所判事は、ホンジュラスの官僚に賄賂を贈ったことを理由として、フロリダを拠点とする電気通信企業Latin Node(休眠中)の元CEOに対して、懲役46か月の判決を言い渡した。ほか3名の元幹部に対しても今年度中に判決が言い渡される予定である。これにより、FCPAに関して多くの教訓をもたらし、広範囲にわたる影響を及ぼし、かつ、多大なコストを要した事件にも終止符が打たれることとなる。

ビジネス上の優位性を維持するための外国公務員への賄賂

国有通信企業の従業員に対する支払い

元CEOは、ほかの3名の同僚(当時のCFO、営業部のバイス・プレジデント及びチーフ・コマーシャル・オフィサー)と同様、ホンジュラスの国有通信企業Empresa Hondurena de Telecommunicaciones(以下「ホンデュテル」という。)のジェネラル・マネジャー、弁護士及び取締役会におけるホンジュラス政府代表者に対する賄賂を手配したとして、罪状を認める有罪答弁を行った。贈った賄賂は、およそ18か月間で総額500,000ドル超に及び、Latin Nodeのグアテマラ子会社を通じて、または官僚が管理するホンジュラスの口座を通じて、マネーロンダリングされた。賄賂が贈られる9か月前に、Latin Nodeはホンデュテルとの相互接続契約を単独で勝ち取り、これにより同社は2か国間の長距離通信サービスを提供することが可能となった。賄賂は、当該相互接続契約を維持し、ホンデュテルとのビジネスを継続するために支払われたものであった。司法取引合意書においてLatin Nodeは、ホンジュラスの官僚のみならずイエメンの官僚に対しても賄賂を支払ったことを認めた。

LATIN NODEの買収

デューディリジェンス及び契約上の防御措置の重要性

eLandiaは、Latin Nodeがホンジュラスの官僚へ賄賂を支払っていた最中に、Latin Nodeの所有者との株式買付契約(約2,000万ドル)に署名した。eLandiaは当該契約のクロージングの2か月後(株式買付契約締結の6か月後)にForm 10-Qを提出したが、これには、Latin Nodeの財務届出担当部門の管理が十分でない「可能性がある」と記載されていた。1か月後、eLandiaは、Latin Nodeの統合を進める過程で疑わしい支払いを特定したこと、そしてこれに関する調査を開始したことを公表した。それから3か月経たないうちに、調査は予備調査報告の段階に至り、その後まもなくeLandiaは状況を米国司法省及び米国証券取引委員会に自己申告したのであった。

最後の賄賂の支払いはクロージング前に行われたが、すでに株式買付契約の締結後であった。eLandiaはある程度はデューディリジェンスを行ったものと思われるが、どの程度行ったかは不明である。拠り所となる量刑ガイドラインに定めるよりも軽い刑罰を求めた元CEOの要請に対し、司法省は、同CEOはデューデリジェンスの際、eLandiaに対する賄賂の隠蔽工作(官僚の名前を記載しない偽造の「コンサルティング契約」の締結及びグアテマラのペーパーカンパニーを介したマネーロンダリング)を主導したと反論した。司法省は、元CEOが、従業員に対して当該賄賂に関係する電子メールやその他のファイルを従業員に削除させるなどして、eLandiaのその後の内部調査を妨害したことも指摘した。とはいえ、eLandiaによるクロージング後の開示の時期及び内容からすると、同社はクロージング前に厳密なデューディリジェンスを行っていなかったものと思われる。

本件その他過去の事件は、クロージング前のデューディリジェンスを行わなかった場合、または新興国の政府所有にかかる企業との重要な契約を伴うビジネスについて綿密なデューディリジェンスを行わなかった場合に、いかに重大なリスクが生じるかを示している。本件でも、例えば腐敗行為防止規定の遵守に関する表明保証、内部統制の妥当性及び会計帳簿の正確性、さらには補償義務の履行を確保するための対価の「預り金」など、FCPAに関する問題が後日明るみに出た場合に対処するための条項について、交渉を行っておくことの重要性が浮き彫りになった。

何百万ドルが水の泡に

FCPA問題で買収が紙切れ同然となる

eLandiaは、Latin Nodeの買収に約2,000万ドルを支払ったが、結局このほかにも、調査費用、Latin Node(当時すでにペーパーカンパニーであった。)が支払った200万ドル、従業員の解雇・営業停止に関する費用、その他様々な副次的な支払いも行うこととなった。eLandiaは、Latin Nodeの前オーナーを詐欺に基づき提訴し、売主の補償義務の履行を確保するため第三者に預託されていたeLandia株375,000株の返還を含む案で、最終的に和解した。しかしながら、訴訟はすでに発生した損失を軽減する試みであって、提訴するにも費用がかかる。eLandiaが「僅かな予防策」でも講じていればLatin Nodeの買収取引の実行を回避できたのではないか、または、異なる買収価格の設定ができたのではないか、いずれにせよeLandiaの幹部がその後一度ならず自問自答していたことは間違いない。

実刑判決

FCPAは効力を有する

司法取引合意書において、元CEOは、量刑ガイドラインに定める刑罰の半分以下の最長5年の懲役で折り合った。元CEOは、下肢静止不能症候群であること、パーキンソン病の初期段階の可能性があること、55歳以上で投獄された場合死亡率が増加すること、及びLatin Nodeがホンデュテルとの相互接続契約を維持するためにいかに賄賂を支払わ「ざるを得なかった」かに言及し、5年以下の刑罰を求めた。これに対し司法省は、被告人が50代のケースであっても本件よりはるかに長期間の刑罰を言い渡された事件が多数あること、下肢静止不能症候群を理由とするガイドラインからの減刑が認められていないこと、パーキンソン病の診断がなく、または、刑務局においてパーキンソン病の患者に対応できない旨の立証がないこと、及び元CEOは陰謀の「首謀者」としての役割を担っていたことを引き合いに出した。司法省は、米国量刑委員会が、強制及び強要があるケースにおける量刑ガイドラインからの減刑に関する方針声明のなかで、「個人的な財政難及び通商またはビジネスに対する経済的圧力を理由とする減刑は認められない」と述べていることも指摘した。さらに司法省は、強制に関する議論は、FCPAがビジネスチャンスの獲得またはビジネスの維持を目的とした賄賂を明示的に禁止していることにまさに相反するものであるとした。最後に司法省は、ホンデュテルとの「ダーティービジネス」に関してLatin Nodeの従業員からCEO及びその他の被告人に対し警告がなされており、当該従業員は賄賂の件を知って最終的に退職したことを述べた。司法省は、従業員が退職により個人的に財政的苦難に陥ることを選んだ事実と、元CEOが賄賂を支払い続けることを選んだ事実を対比した。

量刑判決は短文式で、懲役46か月が言い渡された。Latin Nodeの他の3名の元幹部についても今年中に判決が言い渡される予定である。これら被告人の司法取引合意書は、被告人が政府に協力することを前提として作成されたものであるが、最長で5年の懲役を求刑している。

他所では慎重に

このLatin Nodeの悲惨な話は、海外事業を展開している企業の買収にあたって、対象会社が新興国の政府所有企業との付き合いがある場合は特に、いかにFCPAに関するデューデリジェンスが重要であるかを示す良い例である。

 

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