東証の「独立役員セミナー」 ― 独立役員が有効的に機能するためには何が必要なのか

東京証券取引所が、9月30日に上場会社の独立役員を対象に、「独立役員セミナー」を開催するそうです(http://www.tse.or.jp/news/09/100901_a.html)。東証は、独立役員の意義や役割、経営者側からの期待、独立役員の実体験などを解説することで、独立役員の役割の認識と実効性を高めることを目的にしているようです。東証がこの様なセミナーを開催するのはとても意義あることだと思いますが、「独立役員の役割の認識とその実効性を高める」という目的を考えると、独立役員だけを対象としたセミナーの有効性は限定的ではないかと私は思います。

日本経済新聞によると、9割の上場企業が独立役員を確保しているが、一般株主の保護という役割を十分に理解できていない役員や企業もあるそうです。独立役員という考え方は、日本では比較的新しい考えですし、短期の間に導入が義務付けられました。そのため、独立役員とは何なのか、また独立役員はどの様な価値を会社や株主にもたらすことができるのかを十分に理解せずに法令順守を目的に導入した会社も多いのではないかと思います。ですから、独立役員の役割の認識とその実効性を高めるためのセミナーなどを開催する必要性は非常に高いのではないかと思います。

東証の7月21日付の資料によりますと、1社あたりの平均独立役員数は1.94人です。東証の2009年度コーポレートガバナンス白書によると、1社あたりの平均取締役員数は8.64人、平均監査役員数は3.81 人です。最も最近のデータが手元にないので正確なことは言えませんが、平均として独立役員が役員会を占める割合は2割以下だと推測できます。

2 割に満たない程度の少数の独立役員の役員会での発言力や、その役割の有効性は、何らかのサポートがなければ、多くの場合限定的ではないのでしょうか。勿論、例え一人でも多大な貢献をできる方は数多くいると思いますが、誰もがその様な勇気や資質を持っているわけではありません。ですから、その職務を遂行するには、組織的サポートの枠組みが必要不可欠だと思います。

効果的な組織的サポートは、社内から自然発生的に産まれてくるものではありません。経営陣が、また役員会が意識的に枠組みを作り、必要なリソースを配分して成り立つものです。ですが、上記の様に、独立役員の役割の認識不足は、独立役員として指名された方々の一部にあるだけでなく、指名する企業にも多くあります。

独立役員を指名する役員会そのものに、独立役員の役割認識が欠如しているなら、どんなに独立役員を教育しても、独立役員が企業価値に有効的に貢献するために必要な枠組みは成り立ちません。独立役員の教育も必要ですが、それ以前に、社内役員も含め役員の方々に、独立役員の価値を認識してもらうことの方が重要ではないのでしょうか。

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